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みんなスウェーデンの映画って観る??

こんにちは、Minamiです。

今回はお絵描きではなく、私の好きなスウェーデン映画の記事。


ロイ・アンダーソン監督による『散歩する惑星』『愛おしき隣人』『さよなら、人類』の3本です。(サザエさんの次回予告みたいになっちゃった)

別に誰かと語り合いたいわけでもなく、観てる人にあまり出会わないのでプレゼンも兼ねて「好き」の思いを書いていこうと思います。
※一部ネタバレと、自分の妄想が爆発した考察があります。苦手な人は読むな。

リビングトリロジーとは


『散歩する惑星』『愛おしき隣人』『さよなら、人類』の三部作で、リビングトリロジーと言われています。
それぞれのお話につながりはないけども、”人間であること”に関する三部作。

そもそも1本の中でもストーリー性があるかと言われると疑わしい。
たくさんのキャラクターが登場する群像劇です。

生きることに悩み、絶望し、夢や希望を持つ人々のお話。


三部作で共通している部分


●マットペイントやミニチュアを駆使したスタジオでの撮影
(ロケ地探すなら作った方がよくない?ってことだった気がする)
明らかに外に思えるカットも、すべてスタジオ撮影だそうです。
このハイテク時代に大アナログ巨編。この時点で好きな人は好きそう。

●固定カメラと長回しワンカットシーンの数々
ほとんど固定カメラだけど稀に動きます。でも引いたり寄ったりするレベル。
よく見てないとわからないくらいの速度で横に動きもするけど、それも数える程度。
計算し尽くされた人物や小道具の配置で、カットごとの絵画を観ている感覚。それぞれのシーンをフレームに入れて飾りたくなる。
室内のシーンでも必ずドアや窓があって不思議と閉塞感はない。

●人物がアップにならない構図
登場人物たちをどこからか観察してる気分になる。

●白塗りで、感情が表情に出てこない登場人物たち

●グレイッシュに統一された色彩
この色がまたイイ……本当に絵画(語彙力)

書いていくこと

ダラダラと書いていくのも読みにくいので、それぞれ項目を作りました。

●こんなお話、キーワード
自分なりに考えるストーリーとキーワード

●印象に残ったシーン

●コメディ的な意味で大好きなシーン
全体的にブラックで風刺が効いてるのですが、笑えるシーンめちゃくちゃあるのよ。

●勝手な考察
考えすぎる悪い癖が全開に出ているので要注意

それではレッツラドン!!!
(ここから死ぬほど長い)



一作目『散歩する惑星』

●こんなお話
不条理な世の中で悩み、行き詰まり、絶望する人々。
それを象徴するかのように、車が大渋滞を起こす街。

「すごい渋滞だ。深夜なのに」
「街中の人が同じ方向を目指してる。いったいどこへ行こうと言うんだ?」



世の中は株価が下落を続け、不景気を極めている。


話は、ある大企業の1000人大解雇から始まる。


会社一筋30年、14年も無遅刻無欠勤のラッセがリストラの1人に。

人事の足にすがりつき、叫ぶラッセ。

「30年働いてきたんだ!」

不条理な世の中を生きるたくさんの人物が出てきますが、メインキャラは店が火事で全焼したおじさん、カール。
長男は心を患って入院しており、次男はくたびれて酒浸り。


「みんな燃えてしまった。全部灰になった。全財産がパアだ」


火災保険は下りないし、息子は入院してる。新しく始めた商売もうまくいかない。
挙げ句の果てに、自殺した友人やドイツ軍に処刑された青年の霊に付きまとわれる始末。

「私はただ、静かに穏やかに暮らしたいだけなのに」

ラストはこの言葉で締めくくられる。
穏やかに暮らすことに必死にならなければいけないなんて。今の世の中みたいではないか。


このおじさんの他にも
人探しをしているだけなのに、通りすがりの集団にリンチされ病院送りになった人

デモを行う人々

電車のドアに指を挟まれた人

などなど、様々な不幸に見舞われる人たちがどんどん出てきます。

●印象に残ったシーン
笑えるシーンの方が多いのですが、笑顔が引きつるようなゾッとするシーンもあります。


今作では、少女アナを崖から突き落とす儀式。

崖の下で行われている、リハーサルと思われるシーンから始まる。

敷き詰められた岩。合図と共に、人の形をした人形が落ちてくる。
一つ場面を挟んだ後、目隠しをされ真っ白な衣装に身を包んだアナが、崖の淵に設置された踏み台へ誘導され歩いていく長いワンカットが始まる。
大勢の大人が見守る中、背中を押され悲鳴をあげて落ちてゆく。
これが先程のリハーサル通りに、生身の人間で行われることを想像すると本当に怖いですよね。

じっくりと時間をかけて描いていく恐ろしいシーン。



それとラストもかなり好きです。
カールの心の声、不条理な世の中に対するセリフが続く。
そして怖いのが、儀式で犠牲になった少女アナや、自殺した友をはじめ、地面からワッと幽霊たちが現れて一斉にこっちに歩いてくるところ。
あのあとカールはどうなってしまうのか、わからないままエンドロールへ…

●コメディ的な意味で大好きなシーン
ノコギリの人体切断?のマジックの役に選ばれて、まじで腹を切られるおっちゃんが大好き。

「痛い」って「アイ」って言うみたいで、嫁の寝返りでベッドが揺れて「アイ!アイアイアーーイ!!アァァイ……ァァァ……」ってなるの不憫なんだけど可愛くて好き。



二作目『愛おしき隣人』


●キーワード

「ラストオーダーだよ、また明日があるから」


町の人々が集うバーの店主がいつも言う言葉。
「また明日がある」って言われると、嫌なことがあっても気持ちの切り替えができる気がするよね。

●こんなお話

人生悪いこともあるし、いいこともある。

ソファで寝ていたおじさんが飛び起きて言う。


「悪い夢を見た。爆撃機が襲来する夢…」

今作でも、人生に思い悩む人々が数多く登場する。
「誰からも理解されない」と嘆くミアが歌い、それにアパートの部屋で練習してるチューバ(スーザフォン)の音が重なり、これに妻がヒステリーを起こし、階下の住人が天井を叩き、といった具合でテンポよく広がっていく冒頭が好き。


全体的に音楽も軽快で、前作の『散歩する惑星』と比べると内容も明るめ。

●印象に残ったシーン
バンドマンのミッケに恋する女の子、アンナ。


「昨夜、夢を見たの。結婚する夢よ」


ここから夢の内容を物語る映像はピュアで輝いていてあったかくて、抱きしめたくなるのです。


アパートの部屋で、ミッケがギターを演奏する奥でご祝儀を開けるアンナ。

窓に目をやると、外の景色が流れていくことに気づく。建物が列車のごとく動いてるのだ。
窓の外に集まるたくさんの人々は言う。


「”おめでとう”と言うために来たのよ」


すごく幸せなシーンなんです。大好きです。
アンナが何度も「あなたの演奏は最高よ、ミッケ」と言うのですが、彼のギターが本当に最高なのよ。

●コメディ的な意味で大好きなシーン
あるおじさんの、テーブルクロス引きの夢の話。


「昨夜、夢を見た。あまりいい夢じゃなかった。俺はある家族の晩餐会にいた」


画面に収まらないくらいの、めちゃくちゃ長いテーブルクロス引き。
絶対無理だろって分かってるんだけど、何回も何回もお皿の位置を調整したりしてるのが面白くて面白くて。

案の定失敗して全部割るんだけど「ほら言わんこっちゃないwwww」ってなる。

その後、夢ならではのトンデモ急展開になっちゃうおじさん、かわいそうだけど好き。

●勝手な考察
ラストの、ふと空を見上げる人々。
料理しながら、アイロンかけながら、娘と遊びながら。
軽快な音楽と共にカットが変わると、飛行機の翼が映る。そこから続々と増えていく小型飛行機。
雲を抜け、街へ向かっていく。


ここで、最初の男が見た夢を思い出してみよう。


「悪い夢を見た。爆撃機が襲来する夢…」



そしてバーの店主がいつも言う言葉。


「ラストオーダーだよ。また明日があるから」


……あの大量の小型飛行機が、もし爆撃機だったら。

料理しながら、アイロンかけながら、娘と遊びながら、いつもの日常の中で、見上げた先に飛んでいる小型飛行機がもし爆撃機だったら。


「明日」は、来ないかもしれない。




三作目『さよなら、人類』

3本目、"人間であること"に関する三部作の最終章。


原題は『En duva satt på en gren och funderade på tillvaron』
なんのこっちゃ。
英題は『A Pigeon Sat on a Branch Reflecting on Existence』
これを日本語にすると「存在を省みる枝の上の鳩」

……なんのこっちゃ!!!!!!


しかしそれらしき鳩、オープニングの博物館のシーンに出てくるのです。
あと学芸会でヴィルマが発表する詩にも。
原題の意味をもう少し理解できたら、もっと考えながら見れるんだろうな。

●そんなことよりキーワード

「元気そうで何より」

電話越しに「元気そうで何より」と話す人々がところどころに登場します。
観た後に、久しく会ってない人に電話したくなるような映画です。


●こんなお話

メインキャラはサムとヨナタン。
人を楽しませる面白グッズを売り歩く、冴えないおじさん2人組。

泣き虫で繊細なヨナタンと、仏頂面だけど友達思いなサム。
その周りの人々の、生きる様を淡々と描く。

何個か前の話に出てきた人が、違う人の話の隅っこにいたりして、そこでその人の話の結末がわかったりする。

前二作にも言えることだけど、今作で特に顕著なのが登場人物たちが非常にマイペースであること。
動きが緩慢で、ゆったりとした時間が流れている。みんながみんな、自分のルールの中で生活している。


しかしその中で描いているのは、人の死、叶わない恋、生活に苦しむ人々。ゆったりした時間の流れと音楽からはかけ離れたギャップがまた心地いい。


●印象に残ったシーン
崇高な音色を奏でる、拡声器付きの巨大なシリンダー(パンフレットではオルガンと掲載)のシーン。


オルガンから流れている音は、何も知らなければ美しい音色だと思うだろう。

実際は中でローストされている奴隷たちのうめき声。赤ちゃんを背負った人、小さい子供まで。


奴隷たちがオルガンに入っていく様子、火をつける瞬間、立ち登る煙、おそらく中でのたうち回っているであろう足音。
オルガンの中までは映し出さないものの、想像すると恐ろしい。


『散歩する惑星』の少女の儀式もそうだけど、目も背けたくなるような恐ろしい瞬間をじっくり時間をかけて映し出していく。

でもなぜか見入ってしまい、美しいとさえ思ってしまうのです…。

●コメディ的な意味で大好きなシーン
バーに馬ごと突入してくる騎馬隊。
突然のタイムスリップもの!!?でも特に説明がないのが面白い。


「ここに女が来てはいけない」と剣を振りかざしたり、ゲームで遊んでるおじさんをムチで叩いたりするのです。

スウェーデン国王が入ってきてからは映画館で笑い堪えるの必死だった。
スウェーデン国王、儚くて美しいんだけど、彼もまた1人の人間なんだなと思いました(作文)

●勝手な考察

映画の最後は、停留所でバスを待つ人々。

「また水曜日だ」「水曜か?」「そうよ」「…水曜日かな?」「水曜だ。さよなら」の会話で終わる。



映画で描かれた人々は、

ワインのコルクを開けようとして心臓発作で倒れる男、それに気づかない妻。

面白グッズが売れなくてヤケになるサム。

恋が叶わないフラメンコ教師。

船酔いが原因でフェリーの船長を辞めた男。

戦いに負けたスウェーデンの兵隊たち。

自暴自棄になって銃を片手に電話する人などなど。


うまくいかないことや恐ろしいことばかりだけど、水曜日は変わらずやってくるのだ。

「昨日が火曜日で、明日が木曜日。今日は水曜日だ」


三部作を観て感じること

嫌なことがあってもいいことがあっても、明日はやってくる。
人生は人それぞれ。自分の人生は自分だけのもの。

悪い癖で考えすぎているので聞き流して欲しいけど書いとく

『散歩する惑星』で「ビルが動いてる!」と騒ぎ立てるシーンがある
→『愛おしき隣人』のアンナとミッケの夢のお家?


『愛おしき隣人』で車が渋滞してるシーンがある
→『散歩する惑星』の渋滞してる街??

→この2作、舞台同じだったらなんだか胸が熱いですね(?)

最後に

めちゃくちゃ人を選ぶ映画だと思うけど、興味があったら観てみてください。
三作目の『さよなら、人類』はアマプラで観れるようです。

おしまい!!!!!

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