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今ひとたびの和泉式部 諸田玲子著

紫式部のいた時代に、冷泉院の皇子という高貴な身分の敦道親王と為尊親王の兄弟と奔放な恋をする。和泉式部の母は冷泉院の皇后の乳母であったのでこの太后昌子内親王に可愛がられる。師とも姉とも慕う太后の重篤が伝えられ見舞いに夫の任地から駆けつけた日から、式部の運命は翻弄されていく、大江家の娘式部は、美貌と共に和歌の才に恵まれ高く評価される。為尊親王は美貌が世の語り草にされる一方、軽々しく女性遍歴をしたと「栄花物語]に記されている。弟の敦道親王との間には皇子が生まれる。敦道親王と式部は加茂祭「葵祭]に二人で牛車に乗って見物に出かけて世間の噂に挑戦し身を守る。宮が二十七歳の若さで死去するまでの四年位の間二人の熱愛は保たれていた。一年間の喪に服したのち養母の赤染衛門や藤原行成などの勧めにより道長の娘中宮彰子の宮廷につかえる。もちろんのこと紫式部もいる。源氏物語の葵の巻に宮と二人で車に相乗りして加茂祭に出掛けた有様が用いて書かれているとのこと、思わず源氏物語の葵の巻をも読んだ。女流歌人として第一人者の和泉式部は[捨遺集]などの歌集に掲載された。そして娘の小式部内待と共に[百人一首]に取られている。歌は[あらざらむこのよのほかのおもいでにいまひとたびあうこともがな][くらきよりくらきみちにぞいりぬべきはるかにてらせやまのはのつき]これは[捨遺集]に入っている。この二首は心に刺さる、情熱的な恋に身を任せるも終わりはいつも恋人の死によってである。恋の儚さが付きまとい言い知れぬ孤独感が漂う、本書は赤染衛門と娘の江侍従が死去した式部を偲ぶところから始まる。式部の物語と思い出の物語のところは段落を下げて書かれていて本書に趣きを与えています。紫式部や清少納言などの対局にいた人和泉式部、歌しか知らなかった。和泉式部の生涯を甦らせた物語。恋人敦道親王との贈答歌のやり取りが書かれている和泉式部日記や紫式部日記も読んで見ようと思います。本書は古典に導いてくれる物語。





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