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名残りの花 澤田瞳子著

この物語は、ご一新から五年、江戸が東京になり、失脚し四国讃岐の京極家に、長預けになっていた、南町奉行を努め、妖怪と庶民から嫌われた、鳥居耀蔵甲斐守が、二十三年振りに帰ってきて、桜が咲いた上野のやまへ、足を運んできたところから、始まります。長い幽閉の末に、耀蔵が目にした、変わり果てた江戸の姿、明治を東京を恨み、孤独の果てに置き去られた、耀蔵の人生が、上野の花見で金春座の若き能役者、滝井豊太郎と出会ったことで、動き始める。また足利の時代から、武家の式楽として、将軍家はじめ大名家などに保護されていた、能楽師達も武家と同じく禄を失いました。能楽を生活のため捨てなければならない、時代の流れに、翻弄されながらも、懸命に生きる人々、耀蔵もまた武家の悲哀を、目にしある時は昔の縁を、利用して助けたりする。かって、蛮社の獄を指揮して、蘭学を弾圧し、蛇蝎のように嫌われた鳥居耀蔵が、年を取り家族たちに煙たがれながらも、能役者の豊太郎と、次々と起こる出来事に右往左往する、おわりが面白く収まる。作者はよくぞあの鳥居耀蔵を、主役にして書いてくれました。


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