「ビジネス」を「人生」に置き換えて読んでみた『すべてのビジネスに日本らしさを。』

本日は『すべてのビジネスに、日本らしさを。』という本を読んで、思ったことなどです。

最初、書店で見かけたときは、表紙タイトルや帯からして、なんとなく会社のマネジメント層や、起業したい!という人向けの本なのかな…という印象でした。

しかし、大学時代「日本文化を活かしたビジネス面白そう!」と「日本ならでは×ビジネス」への食いつきが良かった私、迷わず手が伸びました。

冒頭、これからのビジネスで統計の活用、SNSの運用などの新しいことに飛びつく前に、そのビジネスの「らしさ」を探し、唯一無二の価値に転換する思考法を紹介する、と書かれています。

この、他と同じことをするのではなく、自らの内に解決策を求めるという姿勢に、ハッとさせられました。

そして、この本で語られる「ビジネス」は「個人のキャリア」に置き換えられるのではないだろうかと思いました。
セルフブランディングに応用できる、とも言えるかもしれません。
あとがきで著者の各務さんも人生を「プロジェクト」と表現されています。

そこで、本の内容を一個人としての自分により引き寄せて、以下の観点から感想を書いていくことにします。
・キャリア上での個人の存在意義
・自らの内に見出す個人の価値


キャリア上での個人の存在意義

1章冒頭、「便利で安全なだけの日本製品」は売れなくなり、日本産業の世界での優位性が失われつつある、と書かれています。
多くの国で実践できる「替えのきく価値」だけを提供していては、生き残れないのです。
必要なのは、意味(存在理由)のある価値です。

今日本の産業の置かれた状況は、今まさにビジネスの場で働く人たち(もれなく私も)の状況とよく似ていると思いました。
機械やIT技術の発達で、わざわざ人を雇わなくてもできることが増え、外国からも優秀な人材が入ってくる時代に、働く人はなぜそこで「私」が働くことに意味があるのかを示さなければなりません。

この意味のある価値を作り上げるための材料となる、日本らしい考え方には、他者との調和や全体性といったことや、効率だけでない職人技術などが挙げられています。

全体性、非効率などというと、かなりマイナスワードな印象ですが、改めて捉え直すと、見え方も変わってきます。

全体性や調和が取れていなければ、組織は上手く回りません。メンバーそれぞれに主体性があったとしても、全員がリーダーはありえません。本を読んで考えることで、サポート役に回る人などがいて初めて組織が形をなすということに改めて気づきました。
(就職活動のときのグループディスカッションを思い出します…。)

非効率に関しては、少し悩ましいことはありますが、ここで私が思い出したのが「無用の用」です。
コロナが猛威を振るう中、不要不急の外出は控えるのが当然のことになっています。しかし、よくよく考えてみると、不要不急ではない外出とは、仕事と生活必需品の買い物のためくらいではないでしょうか?

「不要不急のことはしない=(究極的に)効率的に生きること」と考えると私たちは今とても効率的な生活をしていることになります。
しかし、少なくとも外に出れない今の生活で、私の心は荒んでいっています。こう考えると「無用=非効率」には用がある。つまり非効率にも価値があると考えられると思いました。

話は少しそれましたが、ビジネスにすぐ役に立つとは限らない日本的な価値観を取り入れることで、結果的に付加価値をつけるというのは、人には「遊び」も必要ということと同じかもしれないと思いました。

ここでの「遊び」とは、趣味、教養という意味合いで使っています。私的には文学や芸術などがそれにあたる気がします。
効率や要否で考えるなら、資格の勉強などの直接使うことだけをやっておけばいいかもしれません。ただ、教養は直接ではなくともその人の幅を広げ、深みをつくり、結果的にその人の資産になります。
(最近古典をビジネスに活かす!みたいな本も多いですし)

基本的なビジネススキルはできて当然の中、人と違うスキルを身につけるのは大変ですが、「遊び」なら難なく人との違いをだし、その人だからこその意味のある価値にできる、と思うとどんな時間も無駄ではないと思えてきます。


自らの内に見出す個人の価値

自らのビジネスから、先入観を取り除いて「素材」を抽出することで、そこに新たな用途や加工方法を与え。別のものへ転じさせるチャンスが生まれる

上述は本文からのものです。
個人の能力、性格、特性なども、先入観を取り除いて活かし場所を考えることで、使う方向性を変え、より飛躍的に成長することもできそうだと感じます。
ついつい、「自分にはこれしかできない」と思っていることも、見方を変えてみることで、「これできる」に変わる気がします。

また、サービスや商品の背景、美意識、精神性にある「物語」が価値をもつ。という記述もあります。
これは、正しく人にも言えることだと思いました。

人と話していて、お話がとても面白く、もっと話していたいと思う人は、人生経験豊富だった、というのはよくある話だと思います。経験値を直接語らなくても、にじみ出るものはありますし、言葉で聞くとさらにその人に感銘を受けたということもあります。

私の勝手なイメージなのですが、例えるならば、NHKの朝ドラと日本のウイスキーでしょうか…。
国産ウイスキーは近年国際的な賞を取るようになっているそうです。
ウイスキーなので当然年月をかけ、手をかけ、熟成させた味が評価され、飲む価値がつきます。
味だけでも十分すごいと思うのですが、国産ウイスキーの物語を知ることで、価値は味だけでないと思える気がします。
そう思ったのは、以前NHKの朝の連続テレビ小説で日本でウイスキーを造ることに尽力した人たちの歴史・物語を見たからです。ドラマの全部が史実ではないにせよ、私は彼らの努力に心を打たれ、私は国産ウイスキーに込められた造り手の思いも価値としてリスペクトの念を抱いています。

このウイスキーを人と考えると、その人の今の能力や性質を形作る筋の通った物語があることは、大きな価値になるのでは、と思えます。

この記事の冒頭に、「自らの内に解決策を求める」ということを書いていました。
確かに、今の自分の強みや特性、人に話せることは今までの積み重ねでできているし、急場しのぎて外に何かを求めても(服装やわかりやすい資格…など…)根本的な助けにはならないんだろうなと思います。
これはビジネスも人間も同じということですね。
日々の積み重ねが自分をつくり、将来の可能性をつくっていると思うと、なんだか今の自分にチクチクくるものがありますが……。

おわりに

読み通してみて、筆者の各務さんが日本らしさの概念を、ここまでビジネスに活かすかたちに噛み砕いて理解されていることの凄みを感じました。
個人的には、ロジカルさや科学的根拠などを売りにしているビジネス書より親しみやすかったです。日本らしさを取り入れる、ということは日本的なところへ回帰する、ということであるからかもしれないですね。

この記事の中ではあまり具体的に日本らしさ×ビジネスには触れませんでしたが、本の中では盛りだくさんです。
大学でプロジェクト運営をしていたときに読みたかった…。

以上、ありがとうございました。


この記事が参加している募集

#読書感想文

188,766件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?