栗林良吏(広島)、デビューから10試合連続無失点!

広島カープの2020年ドラフト1位、栗林良吏(トヨタ自動車)が、デビューから10試合連続で無失点に抑え、セ・リーグ新記録をマークした。

栗林は開幕2戦目の3月27日、地元マツダスタジアムでの中日戦でNPB日本人投手8人目となるプロ初登板、初セーブを挙げた。

その後も、栗林は危なげない投球が続き、4月21日の地元マツダスタジアムでのヤクルト戦、同点の9回に登板して、ゼロに抑え、ついにデビューから10試合連続で無失点という記録を伸ばした。しかも、この間、32人の打者と対戦して、出した走者はたった4人、14奪三振、奪三振率は12.60と驚異的な数字を残している。
勿論、栗林にまだセーブ失敗はなく、4月22日現在、ヤクルトの石山泰稚の7セーブに次いで、セ・リーグ2位となる6セーブを挙げている。

画像1

では、NPBの新人投手で過去、デビューからの連続試合無失点をもっとも長く続けたのは誰だろうか?

画像2

まず、栗林のように、プロ初登板デビューから10試合連続で無失点に抑えた投手は1966年のドラフト制度導入後、5人おり、歴代2位タイである。
従って、栗林は次回登板でまずは単独2位を目指すことになる。

河本育之(ロッテ) 1992年
ロッテの1991年ドラフト2位の河本育之が1992年、プロ初登板から10試合連続で無失点に抑え、当時のNPB記録を更新した。
河本は、4月8日のダイエー戦(千葉マリンスタジアム)で2番手として1点ビハインドの7回からプロ初登板すると3回を投げ切って、対戦したダイエーの打者9人を完璧に抑えたばかりか、5者連続を含む7奪三振を記録するという鮮烈なデビューを飾った。
河本はその翌日の4月9日のダイエー戦で1点リードの9回のマウンドに上がると、三者凡退に抑えてプロ初セーブを挙げて、ここから新人ながらクローザーとして起用されるようになった。4月17日の西武戦(千葉マリンスタジアム)では7回途中からマウンドに上がって、延長11回までの4回1/3を無失点で投げ抜くと、その裏、味方がサヨナラ勝ちしてプロ初勝利を挙げた。河本は4月だけで8試合に登板、2勝4セーブ、防御率0.00をマークして、新人としては史上3人目となるリーグ月間MVPを獲得した。

そして、河本は5月13日の西武戦(西武)で、同点の7回途中からマウンドに上がって、先発の吉田篤史が残した走者を還して勝ち越しを許すと、8回に4番・秋山幸二にソロホームランを浴びて初被弾するなど、初めて失点を許し、デビュー登板からの連続試合無失点記録は「10」でストップした。しかし、これは堂々のNPB新人記録。しかも、この間、デビューから22イニング連続で無失点に抑えていた。河本はその年、40試合に登板、2勝4敗19セーブを挙げた。特にオールスター前までに13セーブを挙げた。

飯島一彦(ソフトバンク)2002年
その後、河本の記録に並んだのが、ダイエーが2001年にドラフト6位指名した飯島一彦である。飯島は開幕2戦目の地元での日本ハム戦(福岡ドーム)に登板してから、登板する度に無失点を続け、4月10日の近鉄戦(福岡ドーム)ではプロ初勝利、4月16日の日本ハム戦(東京ドーム)でプロ初セーブを挙げると、プロ10試合目の登板となる4月20日の近鉄戦(大阪ドーム)で2回を無失点に抑え、1992年に河本がつくったNPB新人記録に並んだ。
飯島はプロ11試合目の登板となった4月23日の西武戦(福岡ドーム)でついに失点し、新記録はならなかった。
飯島は現役引退後、ホークスの球団職員を務めているが、後年、球団公式のYoutubeでのインタビューに対して、「(新人タイ記録は)当時はあまり騒がれなかった。新聞に書かれたくらい」と述べている。

森原康平(楽天)2017年
河本、飯島の記録に並んだのが、2017年の楽天の森原康平である。森原は前年ドラフト5位指名で入団すると、開幕一軍昇格を勝ち取り、開幕戦となった3月31日のオリックス戦(京セラドーム)でプロ初登板を果たした。
その後、4日連続登板となった4月18日の西武戦(県営大宮)を1回無失点に抑え、10試合連続無失点の新人タイ記録に並んだ。
更に、翌日4月19日の西武戦(メットライフドーム)で、同点で迎えた延長12回に登板し、5日連続の5連投となったが、1死一塁から3番・浅村栄斗に、サヨナラ二塁打を浴びた。これがプロ入り後、初めての失点となり、新人記録更新とはならなかった。
その後、森原は4月30日、対日本ハム戦(札幌ドーム)で、8回裏に2番手で登板し、1回を無失点に抑え、プロ15試合目の登板でプロ初勝利を手にした。

有吉優樹(ロッテ)2017年
楽天の森原を追いかけたのが同じ年にデビューして、しかも森原と同様に、開幕日にプロ初登板を果たしたロッテの有吉優樹である。
有吉は前年ドラフト5位でロッテから指名を受け、開幕ベンチ入りし、3月31日のソフトバンク戦(ヤフオクドーム)、3番手として登板し、打者一人を一球で抑えた。
そこから、無失点を続け、5月6日、ソフトバンク戦(ZOZOマリンスタジアム)で10試合連続で無失点とし、河本、飯島、森原に並ぶ新人タイ記録をマークした。
5月9日の楽天戦(Koboパーク宮城)で新記録を懸けて、3点リードの8回のマウンドに上がったが、2安打を浴びて1点を失い、またも新人記録更新はならず。
その後、有吉は7月18日、対オリックス戦(ZOZOマリンスタジアム)に、5回表から3番手として登板し、2回を無失点に抑えると、待望のプロ初勝利を挙げた。

菅原秀(楽天)2017年
森原、有吉の後を全く同じ時期に追いかけていたのが楽天の菅原秀である。菅原は2016年ドラフト4位指名で楽天に入団し、ドラフト同期ルーキーの森原(ドラフト5位)、高梨雄平(ドラフト9位)と共に開幕一軍ブルペン入りを果たした。菅原は、開幕戦に登板した森原にプロデビューこそ先を越されたが、開幕3戦目の4月2日のオリックス戦(京セラドーム)でプロ初登板のマウンドに上がると、プロ8試合目の登板となった5月4日のオリックス戦(楽天Koboパーク宮城)でプロ初勝利を挙げた。
5月9日のロッテ戦(楽天Koboパーク宮城)の9回にマウンドに上がって無失点に抑え、デビューから連続試合無失点を「10」に伸ばし、河本、飯島、森原の記録に並んだ(同じ試合で、菅原がマウンドに上がる直前に前述の有吉の記録は途切れた)。
菅原は5月13日、ソフトバンク戦(熊本県営藤崎台)で新人記録更新を懸けて登板、1イニング目は無失点に抑え、イニング跨ぎとなった2イニング目も、2死を取ったものの、そこからソフトバンク打線に3連打を浴びて失点を許し、惜しくも25年ぶりの新記録を逃した。

甲斐野央(ソフトバンク)2019年 13試合連続
その後、新人のデビューから連続試合無失点記録「10」の壁に挑戦したのが、ソフトバンクが2018年ドラフト1位指名した甲斐野央である。甲斐野は、東洋大の同期の投手である上茶谷大河(DeNAドラフト1位)、梅津晃大(中日ドラフト2位)と共に「東洋三羽烏」と呼ばれ、3人揃ってプロ入りしたが、甲斐野がいちばん早く、しかも開幕戦でいきなり出番が廻ってきた。
甲斐野は3月29日の西武戦(ヤフオクドーム)で、4-4の同点で迎えた延長10回から6番手としてマウンドに上がると、2回を投げて打者7人から5奪三振、無失点に抑えた。
すると、11回裏に、アルフレド・デスパイネのサヨナラ二塁打が飛び出し、甲斐野にプロ初勝利が転がり込んだ。
その後、甲斐野は登板する試合全てで無失点の好投を続け、4月24日のオリックス戦(ヤフオクドーム)は3連投となったが、1回を無失点に抑え、同じホークスの先輩である飯島らの持つ、デビューから10試合連続無失点の新人タイ記録をマークした。

翌日4月25日のオリックス戦、0-0で迎えた9回1死一、二塁、4番・メネセスを迎えたところで、甲斐野は4連投のマウンドに上がった。まず、メネセスを空振り三振、続く後藤光尊をサードフライに打ち取り、ピンチを脱すると、11試合連続で無失点となり、27年ぶりに新人記録を塗り替えた。

その後、甲斐野は13試合連続無失点まで記録を伸ばし、その間、1勝10ホールドと抜群の好投を続けてきたが、プロ14試合目の登板となった5月3日、楽天戦(ヤフオクドーム)で2点リードの8回から登板、山下斐紹(現中日)に一発を浴び、ついにプロ入り初めて失点を許した。さらに、2死から茂木栄五郎にも同点弾を打たれた(チームは延長12回サヨナラ勝ち)。

奇しくも、甲斐野の無失点記録をストップさせたのは、かつてソフトバンクが2010年にドラフト1位指名した、山下であった。
山下は2017年オフにソフトバンクから楽天に移籍しており、2018年にドラフト1位指名された甲斐野とは入れ違いであった。

デビューから連続試合無失点記録のジンクスとは?


そして、広島の昨年のドラフト1位、栗林良吏がいま、甲斐野の記録を目指す次の挑戦者となっている。

しかも、栗林の場合、クローザーとして10試合すべてで「登板完了」(登板して試合の最後まで投げ切ること)を記録しているところが、価値があるといえよう。


ただ、一つ気になるのは、デビューから10試合以上連続で無失点に抑えた新人投手で、新人王を獲得したのは誰もいないことである(1992年の河本育之は、パ・リーグ連盟特別表彰となる新人特別賞)。
栗林は甲斐野の記録を追う一方、新人王のジンクスを破ることにも期待が懸かる。

ちなみに、プロデビューからの連続イニング無失点記録を持つのは、1963年の中井悦雄(阪神)の31回である。中井はその間、5試合の登板で3試合連続完封を記録するなど、新人離れした成績を残している。

尚、同じ広島のドラフト3位の大道温貴(八戸学院大学)も、目下、デビューから8試合連続で無失点を続けている。栗林、大道の二人の次の登板機会からも目が離せない。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?