見出し画像

『ガーンジー島の読書会の秘密』|登場した本を紹介|PeriodDrama


久しぶりの(毎回久しぶりですが…)PeriodDramaレビューは『ガーンジー島の読書会の秘密』(2018年)です。一部内容ネタバレありのため注意。

基本情報
【原 題】The Guernsey Literary and Potato Peel Pie Society
【監 督】マイク・ニューウェル
【制作年】2018年
【制作国】イギリス・フランス
【主 演】リリー・コリンズ
【評 価】Filmarks(★3.8)Yahoo!映画(★3.8)
【視聴方法】AmazonPrimeVideo・Netflix・U-NEXT
(2021年4月25日時点の情報)
ストーリー
1946年、終戦の歓びに沸くロンドンで暮らす作家のジュリエットは、一冊の本を きっかけに、“ガーンジー島の読書会”のメンバーと手紙を交わすようになる。ナチスに脅えていた大戦中は、読書会と創設者であるエリザベスという女性の存 在が彼らを支えていた。本が人と人の心をつないだことに魅了されたジュリエッ トは、読書会について記事を書こうと島を訪ねるが、そこにエリザベスの姿はなかった。メンバーと交流するうちに、ジュリエットは彼らが重大な秘密を隠していることに気付く。やがて彼女は、エリザベスが不在の理由にたどり着くのだが ──。

謎を解くというサスペンス要素がありますが、結構みんなすぐに白状するので(笑)、あっさりとストーリーが進み、力を抜いて楽しめる映画です。

物語の舞台は1946年のイギリス。終戦の翌年です。
タイトルに「読書」とつくだけあって、この映画にはイギリスの古典文学がいくつも登場しますので、今回この記事では映画に登場した作品をご紹介したいと思います。

***

物語のキーになるチャールズ・ラム

まず主人公ジュリエットとドーシーが出会うきっかけとなるチャールズ・ラムの随筆集『Everybody's Lamb』。E.H.シェパード(プーさんの挿絵の人)がイラストを描いた本でしたね。調べたところ、1933年出版の本で、エリア随筆とラムが宛てた手紙から抜粋した作品が載っているようです。エリア随筆は日本語で完訳が出てます。


ジュリエットがドーシーに贈り、ラストにも登場する重要な本がチャールズ・ラムと姉メアリーの共著『シェイクスピア物語』(Tales from Shakespeare)装丁が素敵だな~と思ってよく見たらイラストがアーサー・ラッカムでした。
この『シェイクスピア物語』は、シェイクスピアの戯曲を子どもにも分かるように物語仕立てにした本です。日本語訳もたくさん出ています。シェイクスピア読んでみたけど、あの台本みたいな感じがちょっと…と思ったことある方はぜひ読んでみてください。


お次はパブでのドーシーの言葉。「足るを知りながら、大志を抱け」
印象に残る名言ですね!どこからの引用だ?と思って調べてみたら、どうやらチャールズ・ラムがウィリアム・ワードワースに宛てた手紙の中に出てくる言葉のようです。(原文はMy motto is: Contented with little, yet wishing for more.)

先に書いた『Everybody's Lamb』はラムの手紙も載っているそうなので、おそらくこの手紙も載っていただろうと推察しています。ちなみにチャールズ・ラムの手紙集は日本語訳が出ていたようですが、どうやら現在は絶版みたいです…残念。
https://www.eihosha.co.jp/monograph/4-269-82008-x.html

英語で読んでみたい方は『The letters of Charles Lamb, with a sketch of his life. The poetical works』という書名です。

読書会で朗読された作品


次は見張り付きの読書会の場面。エベンが朗読したのがジェイン・オースティン『ノーサンガー・アビー』です。オースティンファンとしては大変悔しいのですが、「無知が王に…」のセリフがどの場面で出てきたのか分からず…のちほど確認したいと思います。ちくま文庫の中野さん訳は大変読みやすいので、ぜひ読んでみてください。


ジュリエットが初参加した読書会で議論の的になったのがブロンテ姉妹。シャーロット、エミリー、アンの作家3姉妹を比較しているわけです。
アン・ブロンテ『ワイルドフェル屋敷』エミリー・ブロンテ『嵐が丘』より優れていると?というエベンの問いに対し、ジュリエットは「アンのほうがエミリーより現代的」だと言います。それに対してアメリアはシャーロット・ブロンテ『ジェイン・エア』より革新的なんてありえない!と反論。ジュリエットは、アンは男女の力の不均衡を描き人々の意識を変えたと熱く語り議論は終わります。

『嵐が丘』『ジェイン・エア』は言わずと知れた作品ですが、アンの『ワイルドフェル屋敷』の日本語訳は新刊で買えないんですよね…中古価格も高騰してますし、いま読みたい場合ってどうすればいいんでしょう。どなたか教えてください…

アメリアが過去を打ち明けた夜、イーライが朗読したのがキプリングの詩です。どうやらキプリングが父が出版した本『Beast and Man in India』のために書いた詩のようで、残念ながら日本語訳は見つけられませんでした。
http://www.kiplingsociety.co.uk/poems_beasts.htm


そして回想シーン、ヘルマンが読書会に参加したときにドーシーが朗読していたのがチャールズ・ディケンズ『オリバー・ツイスト』です。登場する他の作品とちょっと雰囲気が違いますね。

エンドロールの朗読

最後に、エンドロールの読書会で登場した作品はこちら。

ヴァージニア・ウルフ『灯台へ』
スティーブンソン『宝島』
シャーロット・ブロンテ『ジェイン・エア』
オスカー・ワイルド『真面目が肝心』(The Importance of Being Earnest」
A・A・ミルン『ぼくたちは六歳』



おわりに

いかがでしたでしょうか?詩はあまり日本では馴染みがないかもしれませんが、小説は結構有名どころばかりなのでもし気になったらぜひ読んでみてください。この映画でイギリス古典文学に興味を持ってくれる方が増えたら、しがない1人のファンとして嬉しいです。


全く関係ない余談ですが、豚が脱走するシーン、あれってアドリブですかね?あのシーンがすごく良かったです。

おわり



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?