行かなかったライブと私の恋
頭にこびりついていて、ふとしたときに思い出してしまうセリフ。今のわたしと重なった。
楽しみにしていたライブだけど、行かないことにした。
行けなかったんじゃなくて、行かなかった。
やっぱり行こうかなと思ったけど、行かなかった。
歌われる曲の中に、突き刺さって立っていられなくなる曲がある気がしたから。
今はまだ、かなしみに浸っていたいと思えなかったから。
ライブに行くか行かないかは決められるけど、その恋が叶うかどうかは、私が決められることじゃなくて。私が頑張ってもどうにもならないことがあって。
けど、ずっとしがみついていた恋から、
手を離すことを、決めた。
私が決めた。
誰にも渡したくなかった。
けど、今、手を。
久しぶりに目を腫らすほど泣いた。
もうなんにも見えなくなった。
ゆっくり自分のこころと向き合って決めたから、
「やっぱりライブ行っとけばよかったな」
とは思わなかった。だからよかった。
でも。
恋だなんて決めつけなきゃよかったのかな。
始め方を、間違えてたのかな。
何が間違ってたとかそういうことじゃないはずなのにね。間違えていたとしても、やり直すとかそういうことでもなくってさ。
行かなかったライブ。
お別れした恋。
しがみついていた分だけ、胸が締めつけられる。
目立つピンクの靴下で、あったかい天気のいい日。こんな日に、泣いてる場合じゃないのに。
あんなに泣いたのにまだ泣けるなんて、涙ってどうやってつくられるんだろ、と思って検索をした。科学的な説明文が並んでいて、妙に落ち着いた気持ちになった。
溜まっていた洗濯物も、コインランドリーであっという間にふかふかになる。
誰も見ていなかったから、ふかふかのバスタオルに顔をうずめた。あったかい。
誰よりも大切なわたしに、いつか思い出になるから大丈夫なんて無責任なことは言えないけど。
今、わたしが感じてること。
今のわたしが選んだもの。
それだけは肯定していたい。
高速道路、車を走らせて。
春のあたたかな風を大きく吸い込む。
窓からは咲きかけの桜が見える。
満開じゃなくてよかったなんて思う。
いつか、こんな春もあったねと、
やさしく受け止められますように。