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大阪以外で初の公認知事が誕生なるか?奈良県の財政について調べてみた

こんにちは、海原雄山です。

今回は、統一地方選で最も注目される自治体の一つ、奈良県の財政を考えて見たいと思います。

奈良県議会選挙では、統一地方選で維新の積極的な候補者擁立で攻勢に出ています。

そして、今回の奈良県知事選ではついに維新の公認候補が立つことになります。

その奈良県政を財政面から眺めてみるのは、意義のあることだと考えられますので、今回は奈良県の財政について調べてみました。



奈良県の財政について

では、本題に入りましょう。

今回は、令和2年度(2020年度)までの直近5年間の決算カード等をもとに分析していきますので、特に断りが無ければ、2020年度の数字であると捉えてください。

各都道府県は財政力指数(後述)によって、グループ分けがされており、奈良県は「C」に分類されます。

Cに属する府県は以下のとおりです。

香川県、富山県、新潟県、北海道、山口県、愛媛県、奈良県、熊本県、
福井県、山梨県(以上10道県)

各種指標の状況

①財政力指数
財政力指数は「0.44」で、Cの平均「0.45」を若干下回っています。


奈良県の財政力指数の推移

財政力指数とは、地方公共団体の財政力を示す指数で、基準財政収入額を基準財政需要額で割り算して得た数値の過去3年間の平均値ですが、ここで基準財政収入額(同需要額)は、だいたいどれくらい自治体運営にあたって財源を確保できそうか(どれくらいかかりそうか)を示す指標だととらえてください。

その数値が高いほど収入にゆとりがあるととらえられますが、1を下回っていれば、地方交付税交付金がその分支給されると大まかに捉えてください。

都道府県のグループ分けは、財政力指数ベースなので、似たような水準に収れんされがちであることから、平均と比べると一見悪くないように見えますが、財政の多くを地方交付税交付金に依存しなければいけない構造であることはご理解いただければと思います。

②経常収支比率
経常収支比率は「92.6%」で、Cの平均「94.8%」より数字としてはやや良いです。


奈良県の経常収支比率の推移

経常収支比率とは、経常的な経費に経常的な収入がどの程度充当されているかを見るものです。比率が高いほど自由な施策が打てなくなり財政構造の硬直化が進んでいることを表すもので、70~80%が適正水準と言われています。

推移を見ると、改善傾向にあるようです。

③将来負担比率
将来負担比率は「137.4%」で、C平均「246.3%」を大幅に下回っています。

奈良県の将来負担比率の推移(単位:%)

将来負担比率とは、地方公共団体の一般会計等の借入金(地方債)や将来支払っていく可能性のある負担等の現時点での残高を指標化し、将来財政を圧迫する可能性の度合いを示す指標で、標準財政規模(地方公共団体の標準的な状態での通常の収入と捉えてください)に対する「特別会計、第三セクターまで含めた地方公共団体の負債総額から積立金などを差し引いたもの」の割合を示したものです。

つまり、借金から貯金を引いたものが収入に対してどれくらいの割合かを示したものと捉えてください。(早期健全化基準:都道府県及び政令市では400%)

後述しますが、前倒しで県債の償還を行っていることも数値の改善に寄与していると考えられます。

④公債費負担比率
一般財源に占める公債費(地方債の元利償還等に要する経費)の比率で、この数字が高ければ財政構造の硬直化が進んでいることを表す。


奈良県の公債費負担比率の推移(単位:%)

奈良県は、「23.2%」で、C平均の「21.7%」をやや上回っております。

これは、近年奈良県が繰上償還を実施しているため公債費負担比率が少々高くなっていることが影響しているかもしれません。

なお、多少の上下動があるようですがおおむね23%前後の推移となっております。

⑤実質収支比率
実質収支の標準財政規模に対する割合。簡単に言うと、収入に対して当年度の収入と支出との実質的な差額が、どれくらいの割合かを示すものです。


奈良県の実質収支比率の推移(単位:%)

奈良県は、「0.40%」で、C平均の「2.7%」を大きく下回っております。

この数値の推移を見る限り、かなりギリギリの収支状況であるように見えますが、実質収支そのものは、ストック的意味合いもあり、また、積立金の取り崩しや積立、あるいは繰上償還等の影響を加味していない数値ですので、後ほど実質的な収支状況を確認していきたいと思います。

歳入の状況

では、歳入の状況を見てみましょう。

一時的な要因を除くために、経常一般財源等で見ていくと下記のとおりです。経常一般財源等は、歳入のうち毎年度経常的に歳入されるもののことです。


奈良県の歳入(経常一般財源等)(単位:千円)

ここ5年で右肩上がりに伸びています。

では経常一般財源等の約40%を占める地方税を見てみましょう。

奈良県の地方税収(経常一般財源等)(単位:千円)

ここ5年で60憶円程の伸びとなっています。

ここから地方税を細かく見ていきますが、「臨時」に付与されたり「特定」の目的にも使える財源等も含むことをご了承ください。(それでも傾向は掴めるかと思います。)

奈良県において、地方税に占める割合が多いのは、道府県民税、事業税、そして地方消費税です。

この3つに絞って確認していきましょう。

①道府県民税

奈良県の道府県民税収(単位:%)

道府県民税がここ5年で570憶円台で安定しているように見えます。

この道府県民税は、個人分の「個人均等割」(所得に関係なく個人で定額で課税)「所得割」(所得に応じて税額が変動)、法人分の「法人均等割」(法人単位で課税)「法人税割」(国への法人税に比例して課税)で主に構成されています。

個人均等割(単位:千円)
所得割(単位:千円)


個人の均等割は伸びは軽微にとどまりますが、ここ5年で所得割は9憶円程の伸びです。実は、均等割り(約3.3%増)は金額こそ少ないものの、所得割(約1.9%増)よりもここ5年の伸び率が高いように考えられます。


法人均等割(単位:千円)
法人税割(単位:千円)

法人分を見ていくと、法人均等割は右肩下がり、法人税割が、2020年度に前年度から約37%程ガクッと下がっています。

これは、コロナ渦で経済活動が停滞した影響もあるかと思いますが、兵庫県の分析でも記載したように、法人税割の税率の都道府県分を3.2%から1%引き下げの2.2%に引き下げられたことが影響しているものと考えられます。

そもそもで、道府県民税における法人分の割合は大きくないです。

特に奈良県は、Cグループの中における人口一人当たりの道府県民税が上位で、42,517円(グループ平均34,289円)なのですが、そのうち法人分が2,004円(グループ平均は3,066円)でしかないのです。

これは、奈良県が大阪や京都のベッドタウンとして発展してきた経緯も要因としてあるのかもしれません。

そのため、法人からの住民税収が多少落ち込んでも、奈良県の地方税収においてその影響は比較的小さいと言えるでしょう。

②事業税

事業税は、法人が事業を行うにあたって利用している道路や港湾、消防、警察などのさまざまな公共サービスや公共施設について、その経費の一部を負担する目的で課税されるものです。


奈良県の事業税収(単位:千円)

事業税は、ざっくり言うと所得に連動して金額が決まるため、景気の変動を受けるものとなります。

先ほどの住民税の法人税割もそうですが、経済活動の停滞から前年度より約12億程減収になったと考えられます。

ただし、個人分(つまり個人事業主の分)と法人分で推移に違いがあります。

事業税個人分(単位:千円)


事業税法人分(単位:千円)

個人分は前年度よりむしろ伸びている一方で法人分は下がっているため、事業税収の減少は主に法人分だったと言えます。

なぜ、このようなことが起こるかというと、フリーランスの増加もありますが、「持続化給付金や雇用調整助成金は課税の対象であり、個人事業者がこれを受け取った場合には事業所得や雑所得に区分される」ことに起因するのではないかとも考えられます。
(参考:https://www.dlri.co.jp/report/macro/188979.html

奈良県は、人口一人当たりの事業税収が下位で、14,787円(グループ平均24,542円)とグループ平均から大きく水をあけられています。

個人分は1,054円とグループ平均1,062円と比べて遜色はないですが、法人分が13,733円(グループ平均は23,481円)しかなくグループ最下位となっており、ここでも法人からの税収の弱さが目立ちます。

③地方消費税

奈良県の地方消費税収


地方消費税ですが、2019年の税率アップの恩恵をフルで受けてか、2020年度に前年度比90憶円近いの大幅な増収となっています。

奈良県は、人口一人当たりの消費税収は下位で、38,518円(グループ平均44,592円)とグループ最下位となっています。

人口の割に奈良県での消費が少ないということなのかもしれません。

これらの要因を総合すると、地方税収の上昇は、主に消費税収の増加によってもたらせれたものと考えられます。

奈良県の地方税収について考えると、法人からの税収の上がりが少ないため(逆に個人分の住民税は比較的多い)、いかにして産業振興を図るか、いかにして奈良県にお金を落としてもらうかがポイントとなるのかもしれません。

特に奈良県は世界的に有名な寺社仏閣も多く、観光資源は十分あるため、それを如何にして生かしていくかがキーとなるのかもしれません。(後述)

歳出の状況

ここからは歳出の状況です。性質別で見ていきます。

一時的な要因を除くべく、経常的な費用に充当される一般財源の金額を示す「経常経費充当一般財源等」の金額で確認していきましょう。


奈良県の義務的経費計(経常経費充当一般財源等)(単位:千円)

まず、義務的経費です。

これは、人件費、扶助費 (生活保護費、児童福祉費老人福祉費など) 、公債費など、その支出が法律上義務づけられたものや国の指示によって事実上強制されるもので、任意に節減できない極めて硬直性の強い経費とされています。

ここ5年で、義務的経費が160億円程下がっています。

奈良県の義務的経費の経常収支比率

また、義務的経費の経常収支比率も順調に低下しており、財政支出の自由度がやや広がってきていると考えられます。

では、義務的経費にどのような変化があったか、費目別に細かく見ていきましょう。

奈良県の扶助費(経常経費充当一般財源等)(単位:千円)

扶助費は、2019年度まで右肩上がりであったものの、2020年度は急減しています(約7憶円減少)。その原因については決算概要を見てもわかりませんでしたが、今後の経過を見ていくことは必要かもしれません。

扶助費の割合(経常収支比率)は、Cグループ平均2.2%に対して奈良県2.1%と平均的な水準ですが、人口一人当たりの扶助費は5,119円とグループ平均5,763円と比較してやや少ない水準です。

ただ、この人口一人あたり扶助費は、上は愛媛県は16,351円もあるかと思えば、新潟県は2,106円にとどまるなど、グループ内でもばらつきが激しい費目です。


奈良県の公債費(経常経費充当一般財源等)(単位:千円)

公債費はここ5年で140憶円程減少し、一貫して減少傾向です。


奈良県の扶助費の経常収支比率

公債費の経常収支比率は、だんだんと減少傾向であり、財政における借金返済による負担は徐々に減っていっていると考えられます。

公債費の割合(経常収支比率)はCの中でもっとも低く、平均25.7%より低い経常収支比率となっています。

奈良県は、「後年度の公債費負担を軽減するため、通常債発行額の抑制に努めるとともに、通常債を発行する際には財源的に有利なものを活用してきた結果、公債費に係る経常収支比率はグループ内で最も低くなっている。」と総括しています。

人口一人当たりの公債費で見ても、49,705円とグループ平均68,283円より大幅に少なく、グループで最も少ない金額となっています。

奈良県の人件費(経常経費充当一般財源等)(単位:千円)

ここ5年で一貫して低下しています。この5年で20憶円程の削減結果となっています。

奈良県の人件費の経常収支比率

経常収支比率もここ5年で1.3ポイント減少していますが、グループ平均36.2%よりはやや高い結果となっています。

奈良県は「人件費に係る経常収支比率がグループ内平均を上回っているのは、職員定数適正化により人口10万人あたり臨時的任用職員を除く職員数がグループ内で3位と少ないものの、平均給与月額がグループ内平均を上回ることや、人件費に対する退職金の割合がグループ内平均を上回ることが要因である。」と総括しています。

ただ、人口一人当たりの人件費は、89,090円とグループ平均96,152円より少なく、グループでも比較的少ない金額となっていることは付言しておきます。

ということで、義務的経費の減少要因は、人件費と公債費の減少によるものと考えられます。(扶助費は、他の2つに比べそもそもの金額が小さいので、減少金額が限定的。)

では、義務的経費以外のその他の経費を見ていきましょう。


奈良県の物件費(経常経費充当一般財源等)(単位:千円)

物件費とは、人件費、維持補修費、扶助費、補助費等以外の地方公共団体が支出する消費的性質の経費の総称で、旅費、交際費、需用費、役務費、備品購入費、報償費、委託料、使用料及び賃借料、原材料費等です。

要は諸経費のようなものでしょうか。

地方公共団体が生活保護法、児童福祉法、老人福祉法などに基づいて支給する費用及び地方公共団体が単独で行う各種扶助の支出額もここに含まれます。

奈良県の物件費は90憶円台で変動していますが、直近では大きく下落しています。

物件費の割合(経常収支比率)はCの中でも最も低い方で、平均3.3%に対して奈良県2.6%となっています。

奈良県の物件費の経常収支比率

奈良県は、「物件費に係る経常収支比率がグループ内平均を下回っているのは、光熱水費・内部事務費の節減や事務事業の見直し等により、需用費や委託料等の経費が他団体と比較して低くなっていることが要因である。
今後も効率的な事務執行を行い、経費節減に努める。」としております。

人口一人当たりの物件費は、6,242円とCグループ平均8,857円より少なく、熊本県に次いでローコストとなっております。

それらを総合すると、奈良県の総括どおり自助努力により物件費は節減できていると考えられます。

他方、補助費等ですが、人口一人当たりの金額は63,133円とグループ平均(63,815円)と同水準ですが、経常収支比率が26.3%とグループ平均(24%)を上回っています。

補助費等とは、各種団体に対する助成金や一部事務組合への負担金等のことです。

奈良県の補助費等(経常経費充当一般財源等)(単位:千円)

金額はここ3年で増加傾向であり、経常収支比率自体もその傾向です。


奈良県の補助費等の経常収支比率

奈良県は、「補助費等に係る経常収支比率がグループ内平均を上回っているのは、県立医科大学や県立病院への交付金・補助金が要因として考えられる。社会保障制度関係経費に係る補助費の増加により、長期的に増加傾向にあるが、県単独の補助金等について、今後も効果検証や行政と民間、国・県・市町村間の役割分担の明確化等により見直しを図る。」としており、県直営の病院等の負担が大きいということが伺われます。

奈良県立医科大学は医学部志望の学生からも人気が高く優秀な人材が集まっているため、奈良の医療界の人材育成に寄与する面もありますが、県立病院については果たして直営とする意味があるのか等、検証することも必要ではないでしょうか。

ここで少し補足しておきたいのですが、繰出金が2018年度を境に大幅に増加しています。

奈良県の繰出金(経常経費充当一般財源等)(単位:千円)

なぜ繰出金が増加したのかということですが、そもそも繰出金とは、会計間相互に支出される経費をいい、ここでは一般会計から介護保険事業会計や後期高齢者医療保険事業会計と言った特別会計や公営企業への言わば仕送りのことを指します。

奈良県は、「その他(維持補修費、繰出金、貸付金)に係る経常収支比率がグループ内平均を上回っているのは、平成30年度から繰出金へ変更した国民健康保険関係事業費が他団体と比べ多いことが主要因である。」と総括しており、2018年度から国民健康保険関係事業費を繰出金に変更したことが要因であり、何か奈良県全体としてコストがアップしたと言うことを必ずしも意味していませんので、ご留意願います。

収支の状況

では、収支の状況を見ていきましょう。

単位:千円

歳入と歳出の差額から、翌年度繰り越すべきお金を差し引いた実質収支は、年度により多少上下はあるもの、プラスで推移しています。

この実質収支には、前年度から持ち越されているものもあるため、ストック性があるため、純粋なフローを見るとなると単年度収支(=今年度と前年度の実質収支の差額)を見たほうが、より収支というイメージに近い数字を見ることができます。


単位:千円

単年度収支は必ずしも良いとは言えません。2017年度と2019年度を除くと赤字となっています。

この単年度収支の金額は、基金への積立金や市債の繰り上げ償還等は差し引かれていますし、基金の取り崩した金額は逆に上乗せされています。

そのため、これらを逆にすれば、さらに実態に近いフローの状況を確認できます。

積立金や繰り上げ償還等は足し上げ、基金の取り崩しは、差し引くと、実質単年度収支という数字になります。


単位:千円

繰上償還の状況は上記のとおりです。

ここ5年で繰上償還を増やしています。債務削減への前向きな姿勢が伺えます。

単位:千円

積立金は2017年度以降は少なくなっていますが、少額ながらこつこつと積み上げています。コロナ渦の2020年度も前年よりやや多い水準の金額を積み立てております。

単位:千円

しかし、ここ3年は積立金の取り崩しも行っています。

これらを加味して、実質単年度収支を算出すると以下の通りになります。


単位:千円

実質単年度収支は一貫して黒字であり、2020年度は大幅に増えております。

単年度収支との差異は、2020年度には約240憶円にも上る繰上償還によってもたらされたものと考えられます。

そのため、単年度収支が赤字と言えども、問題となるような状況とは言えないのではないかというのが、当方の見解です。

基金と地方債残高

単位:千円

次に基金と地方債残高を見ていきましょう。

まず、財政調整基金ですが、年度間の財源の不均衡を調整するための積立金で、自治体は黒字となった年度に決算剰余金を積み立てておき、景気の悪化や災害などで赤字となった年度に取り崩して財源とします。

その財政調整基金は、2017年度を境に右肩下がりです。

奈良県は2022年度の財政調整基金について、「収支の状況を勘案し、10億円を取り崩したことにより減少。」としており、今後の方針については「今後の急激な財政環境の悪化に備え、過去の決算において収支を確保するために取り崩した実績等を踏まえた水準の残高を確保することとしている。」と総括し、現状としては減少傾向にあるものの、今後の基金残高増への姿勢を滲ませています。

単位:千円

減債基金はここ5年で大きく残高を減らしており、5年前の水準の3分の1以下になっております。

奈良県は、増減理由として「減債基金を活用し、臨時財政対策債の繰上償還を行った(R2:150億円)ことにより減少。」とし、今後の方針としては、「将来にわたる県財政の健全な運営に資するために現在の水準の残高を維持することとしている。」としているため、これから基金の増加は見込まれないように見えます。

一方地方債ですが・・・・、

単位:千円

残高は1兆円にも上っています。

ですが、直近で約240憶円も繰上償還を行っており、順調に県債の償還は進んでいるように見えます。

将来負担比率等も考慮すると、奈良県は比較的財政は良好と言えそうです。

では、特定目的基金も見ていきましょう。


単位:千円

財調基金や減債基金が減少しているのに対して、特定目的基金は増加しています。

奈良県の特定目的基金を一部紹介しておくと以下のとおりです。

・奈良県地域・経済活性化基金
・奈良県立医科大学及び医療センター並びに南和地域公立病院等整備基金
・奈良県地域振興基金
・奈良県退職手当平準化基金
・奈良県新型コロナウイルス感染症対応中小企業金融支援基金

奈良県は、「令和元年度から令和2年度にかけては、奈良県道路公社清算金の一部を地域・経済活性化基金に積立てたことや、新型コロナウイルス感染症対応中小企業金融支援基金を創設した 」としており、特定の目的のために中長期の資金を確保する取り組みにより特定目的基金の増加につながったと考えられます。


ちょっと長めのまとめ

奈良県の財政をまとめると以下のとおりと考えられます。

・各種指標は悪くはない。特に将来負担比率は比較的低い水準。
・歳入は、個人住民税による税収は比較的堅調であるものの、法人の住民税は類似団体に比べ少なく、地方消費税で増収
・歳出は、義務的経費については、公債費と人件費の減少により減少傾向
・同じく物件費はCグループの中で最も経常収支比率が低い一方、補助費等はCグループの中でも経常収支比率がやや高く、県立病院等への補助負担が大きい
・単年度収支は赤字の年度も多い一方、実質単年度収支は良好で、繰上償還に積極的である影響が見られる
・地方債残高は毎年減少傾向である
・財政調整基金については今後増加を要す

あくまで決算カードや決算概要等から読み取れる情報からの情報なので、より深く掘り下げるのは中々難しいですが、奈良県について言うと経常一般財源等に占める地方交付税交付金の割合が50%を超えており、多くを国からの「仕送り」によって賄う状況となっています。

これは財政力指数が0.5を切る水準であることにも表れていると思います。

先述したように、奈良県は全体的に大阪や京都等のベッドタウンとして発展してきた経緯がありますから、人口の割に法人住民税だけではなく事業税等の法人からの税収もグループ平均より劣っています。つまり、収益のある企業が少ないということです。

また、消費税収も人口の割には少なく、お金も落ちないということが税収の弱さにつながっているかもしれません。

世界遺産が多くあり、観光資源としては申し分ないものがありますが、例えば、関西に来る修学旅行生は旅行の工程に京都と大阪の間で奈良に立ち寄ることも多いと聞きますが、宿泊は京都か大阪に泊まることがほとんどで、奈良で宿泊することはまずないようです。(私の知り合いで修学旅行先が関西の人で奈良に宿泊したという人をついぞ聞いたことがありません。)

ちなみに奈良県北部は、大阪・京都中心部への公共交通機関によるアクセスが良いですが、それゆえに奈良にこれといった宿泊施設がなければ大阪か京都で泊まることになるという皮肉な結果となっているのかもしれません。

宿泊されないということはそれだけ滞在期間も少ないわけですから、お金も落ちず、もちろん消費も少なく、企業も儲けられないわけで、そういった面が奈良県の税収の伸び悩みの一因なのかもしれません。

近年では奈良の中心部に近いところで外資系のホテルが出来ましたが、そういった流れがさらに広がらないことには、なかなか奈良県が盛り上がらないのではないでしょうか。

したがって、奈良県においては、「財政再建」よりも「『企業(産業)』と『消費地』の育成」に重点を置いた方が、課題の解決に寄与するのではないかと考えられます。


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