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サブカル大蔵経799梶山雄一『大乗仏教の誕生』(講談社学術文庫)

ものすごくありがたい本書。

疑問を持つことに勇気をいただきました。

浄土の説得力を保担する現代の「中論」と言っていいのでは。

大乗仏教という車の両輪ともいえる阿弥陀仏信仰と空の思想が、実は業報輪廻の思想の超克という同じ目的をもって発展してくること、それは、西暦紀元前後の外来民族のインド侵入と西アジア文化の流入とを契機として成立してくることを、本書において語りたい、とわたくしは思う。p.26

昔から気になっていた阿弥陀の起源の可能性を想像する。これも廻向か?

そして、浮かび上がる裏テーマは、東大vs京大。日本の思想の舵取りは。

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実体的思考を全面的に否定する空思考と、阿弥陀仏の実在性を強調する、ある意味で有神論的な浄土教とは矛盾しているように見えるが、じつは同じ根から出たものである。p.3

阿弥陀仏・如来を〈あみだ様〉と人格神のようにあらわすことに疑問を持っている私に、ここを説いてくれる方はいなかった。

他人の功徳を盗むことによって、彼の心は清められてゆく、というのである。/ハーン氏と原氏との例に出る、侍とシヴァ派の行者の超能力は、いわば悪魔の廻向である。p.17.19

 悪魔の廻向!印度学の泰斗・原実が紹介したシヴァ教徒のヴァリアント廻向。

インドにおけるこの2つの思想を比べてみると、それらは同根同種であることがわかる。p.20

 禅と念仏は何故離されたか。阿弥陀になるまでは自力のベクトルを持つ法蔵菩薩。

たとえば煩悩とさとりは、ともに空であるから、本質的には不二である。p.22

 輪廻と涅槃も。空であるがゆえに。

この、いわば誤解がヨーロッパの学者たちを刺激し、やがて本格的な仏伝・福音書比較研究に駆り立てるにいたったのである。p.33

 イエスとブッダの処女懐妊。学問は誤解から始まる。欧州の仏教研究。聖書の背景の仏伝。

大乗仏教はゾロアスター教からと同じように、ヒンドゥー教からも影響を受けており、p.85

 仏教の中に生きるゾロアスター教。異教との切磋琢磨。プロレス団体なら吸収と絶滅はよくある。しかし絶滅と見せかけて復活したりします。

〈無量寿経〉においても、阿弥陀仏の救済の前に五濁悪世が描かれているのである。p.112

アシヨカ王、カニシカ王、ゾロアスター教、ヨハネの黙示録、すべて浄土直前の地獄の存在が脈々とつながる。

アフラ・マズダーはなによりも光明の神であり、光輪(フワルナフ)の保有者である。p.117

 岩本裕説が甦る。呪いの発動。

インド仏教についてのみいえば、大乗仏教にあるゾロアスター教との多くの類似は、本来は同根であったインドとイランのアーリア文化に潜在的にあった共通要素が、西暦紀元前後の両文化の激しい交流を経て、後一世紀のインドにおいてめだって顕勢的になった、というのがおそらくもっとも妥当な見方であろう。p.121

 影響し合うのではなく、同根説。

わたくしは銀行預金について四つの性格をあげてきた。p.143

 預金と廻向!原書は新書だからか…。

【今枝由朗解説】仏教学者である梶山氏がゾロアスター教まで視野に入れているのは、氏が京都大学出身であることと大きく関係している。p.246

 フローレンツ、榊亮三郎、足利惇氏、伊藤義教の京大オリエント学ライン。〈東京学派〉との因縁。日本の龍脈。



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