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サブカル大蔵経844赤坂真理『愛と暴力の戦後とその後』(講談社現代新書)

圧倒的な『東京プリズン』を新書で解く。

今回も思った。どうして今まで誰もこのことを説かなかったのだろうか、と。男性論客達にはなぜできなかったのだろうかと。

現代の卑弥呼か、ジャンヌダルクか。

【追記】

本書刊行後も、天皇と私たちの千年物語の問題を、私たちに提起し続けてくれています。


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習ったことより原典を信じることにした。p.3

 『東京プリズン』でもそうでしたが、言葉を唯一の手がかりとしていく主人公は、破天荒のようで、実は非常にオーソドックスな学術的な姿勢だと思いました。周りが感情的に見えてしまう。

わたしの国には、何か隠されたことがある。p.4

 王様の耳はロバの耳と告げた。

天皇こそは日本人が最も感情的になる主題。/なぜ?なぜってそうなのよ。真珠湾は悪い、天皇制は守るべき。p.28.36

 なぜか日本人を代表する状況に陥ると、天皇を護ることになってしまう。

なんとか男になろうとした明治国家の焦りと昭和二十年の敗戦。/私たちは鬼畜に優しくされて、愛してしまった。洗脳のテクニック。p.58.273

 国の性。欧米戦勝国に犯された日本。

ジャイアンの残像。日常において、ジャイアンはやることがない。/居場所のなさをことのはじめから体験しているキャラクターとして、ジャイアンはいちばん興味深い。p.79.81

 本書のジャイアン考察は、著者の真骨頂だと感じました。空き地と子供部屋。

私にとって戦後史の異常に思うことのひとつに、学生運動のことがまるでわからないというのがあった。p.112

 私も同じ思いです。ここにカギがある気がしてなりません。

1980年は、日本社会のある局面が、最終的に松田優作を不要とした年/松田優作が懇ろに葬られた年、日本社会に「お笑い」は出てきた。p.163.169

 当たり前のよう日本を席巻した〈お笑い〉の出現は、何を意味するのか。松田優作の存在と相容れない何か。80年代に何があったのか。個人的にはそれまではゴツゴツぐちゃぐちゃしていて、80年代から薄っぺらくなったような。

努力すれば報われる世界。しかし、オウムを笑えるのだろうか?それは一般的な日本人が最も信じたかった神話なのだ。p.188

 あなたが望んだことを反映したオウムのシステム。ナチスと同じようなことかも。

peopleという概念。日本人が持ったことあるだろうか?p.235

 本書のキーワード、people。日本人から最も遠い概念。

物語は暴力性をはらんでいる。p.289

 おそらく、経典も聖書も。

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