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サブカル大蔵経912スタニスワフ・レム著/沼野充義訳『ソラリス』(ハヤカワ文庫)

宮崎夏次系の帯イラストでジャケ買い。

買ったはいいけど、SFを前にすると、いつも呆然としてしまいます。

名前は何か聞いたことある『ソラリス』。

『バーナード嬢』にも出てたかな?

ようやく読みだすも、名前や状況がなかなか頭に入ってきません。共産圏の小説なので、政治的な読み方もできるとか。今読んでるカミュ『ペスト』もナチスを投影していると初めて知りました。

映像をあてはめると「遊星からの物体X」かなとか『度胸星』みたいなのかなとか。〈ギバリャン〉はポケモンに出てきそうだな、とか。

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単語の一つ一つが、鋭く短い猫の鳴き声のような音で区切られていた。p.11

 人間の言葉よりも、音に出会う。

そこに鉛筆で「人間」と書いてあるのが見えた。p.26

 部屋の入り口の貼り紙。旭山動物園か。

「いえ、全然そういうことではありません。ただ…その動きに何の意味もなかった、ということです」p.155

 意味のないことにたじろぐ人間。いかに意味に頼っていることか。だから、タモリや関根勤は意味のなさを楽しむ。

「ここで関係してくるのが、個性の問題であります。海には完全にこの概念が欠如しています」p.194

 海と親鸞聖人を思い浮かべました。

人はこんなふうに地球の考え方、人間の概念の環の中から抜け出せず、堂々巡りをするばかりだったのだ。p.229

 人間だから、人間の枠の中で日常を生きる。人間をやめると、仏陀になるのか、鬼になるのか、ニュータイプになるのか、ゾンビになるのか。そこで初めて見える風景があるのでしょうか。DIOの「人間をやめるぞー!」を想起しました。

でも、もう生きていないんでしょう?そんなことは、なんでもないさ。声で私だということがわかるだろう?p.247

 生死を超えた世界こそ成り立つ会話。

「いや、夢の操り人形ですよ。ても自分ではそのことがわかっていない」
「じゃあ、きみには自分が何者なのか、どうしてわかるんだね!」p.250

 周りを説明している自分は誰なのか。落語の「粗忽長屋」のオチのような。落語はSFに繋がるのかも。

次の夜、青い太陽が昇ってくるはずの時刻の一時間ほど前に、私たちはもう一つ別の現象を目撃することになった。p.342

 青い太陽。バカボンの黄色い太陽。

「人間というものは、見かけによらず、自分で目的を創り出したりはしないんだ。目的は、人間が生まれた時代によって押し付けられるものさ」p.374

 こう考えると、私の生きている時代をあらためて考えてみたくなりました。

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