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サブカル大蔵経361櫛野展正『アウトサイドで生きている』(タバブックス)

この本を読んで、私の生活で変化したことがあります。忍者ぶきみ丸のYouTubeのチャンネル登録したこと、野村さんの迷路二種をネットから買ったこと、櫛野さんの活動を追うようになったことです。最近は杉作J太郎さんを現代芸術家としてフューチャーし、コラボ。岡山と愛媛の合体。

櫛野さんの人間可能性発掘のポテンシャルは東野幸治さん的なものなのかな^_^登場人物たちもみなすごいですが、それを取材した櫛野さんのすごさがさらに際立つ。

本書は、写真も素晴らしいです。芸術家たちへの尊敬の念が伝わります。

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【西本喜美子】だってブログって見る側にとったら失敗作が面白いんですよ。上手に撮るよりもちょっと欠点のある写真の方が面白いじゃないですか。p.27

 西本さんの自撮りが先日北海道新聞で見開き広告で掲載されていました。この自虐撮りに通底する国際感覚が市街のお婆さんから生まれる可能性の不思議さ。いかに今まで常識やレッテルで可能性が潰されていたのかということも思いました。

【遠藤文裕】スクラップブックには関係ないことがくっつくのが面白いと言う遠藤さんの一貫した姿勢が見事に表現されている。「ビリギャルの2人が真面目に演技してるのを『燕子花図屏風』が台無しにしている。もちろんそんな事は自分しか知らないし、それが自分の中では滑稽なんですよね」と妄想が止まらない。p.34

 これこそ、コラージュの原点では。意味の解体が意味を生み出し、個人が溶けて本質が育まれた作品が現れる衝撃。コサキンラジオの投稿ハガキネタを彷彿させます。

【熊澤直子(忍者ぶきみ丸)】喜怒哀楽恐の五者の術。これが本当の忍術。/寄ってくるのはお巡りさんぐらいでね。「ぶきみ丸」はお巡りさんがつけたんですよ。「なんだ、あなたのその不気味な格好は!」って言われて、「忍者でござる」って答えたら、「忍者ぶきみ丸ね」って。劇団ひとりに似た感じのお巡りさんでしたけどね。まぁ「変な人がいる」と通報されただけでは逮捕できないでしょう。p.44.54

本書の中でも異質な存在。話し合うことが無理そうなのに、取材する櫛野さんが同じくらいすごい。ぶきみ丸のYouTube、ごくたまに見ています。たまに新作アップされていてびっくりします。

【八木志基】ところでなぜ骸骨の絵を描くようになったのだろうか。本人に聞くと「なんかかっこいいから」と言う答えが返ってきた。p.66

 全ての人がやめてしまったノートや教科書への落書きをやめないで進化した作品。やめなかった才能。圧巻。

【稲村米治】人間みんな顔が違うのと同じで、細長かったり丸かったりと同じ虫ってのは、なかなかいないんですよね。きれいな虫は首から上に使おうと思ってね。いろんな虫を刺しとけば、「これは何の虫」って見てもらえるでしょ。p.95

 材料への崇敬。世界ふしぎ発見!でヨーロッパの宮殿に稲村さんと同じ作品が取り上げられていた。

【辻修平】妹が頭おかしくなっちゃって、四年前位から誰ともしゃべらないんですよ。両親ともに高校時代に山岳部だったんで小さい頃から登山に連れてってくれてたんですが、子供たちを置いてスタスタ行っちゃうでしょ。それが妹にはショックだったみたいで。p.118

 昨年、竹の塚訪れた時行けば良かった…。作品と本人のギャップは一番ある方かな?ネットにも訪問記事が結構載っていました。作品だけでなく家ごと売るみたいな。

【爆弾さん】服はバックの代わりだね。昔から手ぶらが好きなんで財布とか金とかを腹に入れる事はあったんかなぁ。腹というか横だね。背中や腹が膨らむと目立つけど横は目立たないんで。単に手に持ってるより楽だし、今こうやって腹に詰め込んでりゃ盗られないからねと語る。p.130

 私も似た発想です。カバン持たず全てポケットです。清野とおる作品の実写版のようないでたちの爆弾さん。

【野村一雄】クラシック音楽に目覚めていろいろ聴き始めたんです。ところが中には寝ちゃう曲もあったんで、寝落ちを防ぐために迷路を書き始めたんです。p.170

 〈野村迷路〉を購入して、家族に見せると、なんとも言えないような声を出し、表情をしました。でも、私の母親、これを解こうとしたのは偉い。

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【武装ラブライバー】より特別な非日常ハレを求める集団心理がアキバで花開いたのが武装と言う独特のスタイルなのかもしれない。p.204

 現代の戦士としかいいようがない。

【大竹徹祐】そこで彼が見つけたのが、ガムの包み紙だった。父親がよくガムを噛んでいて、余った紙をもらっていたと言う。ガムの包み紙を裏返ししたときに、自分の世界を見つけたのだろう。p.211

 ガムの包み紙に表現をしていくという行為が非常に現代芸術の象徴のような気がしました。南方熊楠が天皇に進講した時標本をキャラメル箱に入れたのを持参したのと似ているのかも。

私たちは彼を思いやる必要などない。なぜならその思いやりは憲法違反だからだ。p.287

 アウトサイダーアートへの想い

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