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サブカル大蔵経447伊坂幸太郎『仙台ぐらし』(集英社文庫)

地元の出版社荒蝦夷の「仙台学」に連載されていた本書は時系列的にすすみ、後半部分から2011年以降になります。

帯にもあえて記していないのですが、真摯に、震災について綴られています。

北海道の札幌、九州の福岡、東北の仙台。それとなんとなく比べながら読みました。

アジアを向く福岡、北海道の独立国札幌。仙台はどう歩んでいくのでしょうか。

東京や福岡や札幌よりも、仙台や新潟の方が大事な場所になってくるような気がしました。

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床屋さんで髪を切ってもらっていると、地震のことききました?と言われた。明日宮城県沖地震が来るらしいですよ。とお兄さんが言うので心底驚いた。明日地震が来ることよりも、そのことが既に分かっていることにだ。ここ数日お客さんはみんな言ってるんですよ、インターネットの情報なんですかね。明日だ来週だと、要するに来週いっぱい中に、ってことみたいですよ。結論から言えば地震は来なかった。p.92

 2008年の文章です。

が、宮城県沖地震がいずれ来ること間違いない。この200年で6回、平均すると37年周期、前回の大地震が1978年、2015年あたりに起きる可能性が高いのだろうか?一番間隔が長かったときで、42年間だったらしく、2020年までにはかなりの確率で地震が来る。p.92

 宮城の人はみなこういったことを意識して暮らしていたのでしょうか?伊坂さんの雰囲気、〈荒蝦夷〉という存在、あらためて仙台という街の不思議な感覚に興味が湧いてきました。もう一人思い浮かぶのは、杜王町、荒木飛呂彦さんでしょうか。

Yahoo! JAPANを見ればニュースの見出しは八つ並んでいる。僕はせいぜい仕事の合間にそれを眺め、その八つの中に不安な情報が載っているの発見し、怖い怖いとおびえているに過ぎない。裏を返せばその八つに不安な見出しがなければ、僕は意外に安心して生活が送れるのかもしれない。なんと単純なことか。p.111

 私も毎朝、同じこと思ってました。

峩々温泉の六代目。学校の後で社会経験を積んでいるうちにわかったんですけど、家業と言うのは、嫌々やるのが前提なんですよと言った。僕はやっぱり吹き出してしまったが、同時に感心した。好きで始めた仕事は嫌いになった途端に終わるけれど、嫌々がベースにあるのだからこれはなかなか終わらない。p.150

 寺を継ぐことも、それくらいでいいのかも、と思いました。

ブルーハーツの歌詞に倣うわけではないけれど、この地震でへこたれるために、今まで生きてきたわけでは無いのだと自分自身に言い聞かせている。p.156

 すべての人に届いて欲しい言葉

電気復旧の新潟のナンバープレートの車。夜、出てきてくれたんだね。感動と言うべきなのか、感謝と言うべきなのか。p.170

 もう来年で10年になるんですね。

娯楽とは不安な生活の中では全く意味をなさないのだとつくづくわかった。p.179

 自問自答され、絞り出される言葉。

「簡単には移動なんてできねーよ。ほらシールと同じだ」「シールと?」「別の場所に貼り直せと言われてもそう簡単にははがせるもんじゃない。よっぽど丁寧に離さないとボロボロになるじゃないか」p.202

 ふるさと。

映画監督が街を歩いていた際にマンションを眺めて、この辺は大した被害はなかったんだねと言った。それでまず渡辺さんは腹を立てた。p.209

 被災地を訪れる人とそこに住む人

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