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サブカル大蔵経498香山哲『ベルリンうわの空』(イーストプレス)

昔、ベルリンを訪れた時、退廃と可能性を感じました。

少し残る〈壁〉と、キッチュなSONYビルの対比。過去と未来。

パリやローマよりも、東京に近いような、東京とヨーロッパの合わさった感じ。

破壊されて、定まってないからこそ、途方もない可能性があるのではないかと。

昨年は、『聖なるズー』を読んで、ベルリンの可能性を感じました。

そのベルリンが漫画で描かれる。

素晴らしい作家に恵まれたと思いました。

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車いす、ベビーカー、犬、自転車もかなり乗りやすいと思う。p.20

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 初めてドイツで鉄道に乗った時、衝撃を受けたことです。車両という公共の場に、犬、自転車、車椅子の方、イスラムの方、みんな一緒の運命共同体です。

あ、無職?募金返そうか?p.44

カフェ店内で、常連同士が店のトイレの修理費を箱で募金するというやり方。あらゆるところで集めることもすごいし、募金を返そうとするところもすごい。

つまづき石、ベルリンに約8千個ある。犠牲者を一つに束ねて巨大なモニュメントや場所に記録するんじゃなくて、ひとりひとり生活の場に分散してるのがすごく特徴的ですね。p.71

ナチスドイツの時代に、強制収容所に無理やり連れて行かれた人が住んでいた建物跡の記録を道路にプレートを埋め込む方法。メガの箱物よりも、その感性がすごい。ケルンの芸術家が始めたとのことです。

体験したその場所で、貼り紙で言うこともできる。「6月2日ここで下校中の子がアジア人に突進してきました」p.110

 表現による抵抗。公共の発想が違う。

同じ8でも、4+4だったり、1+5+2とか、15-7があるように。p.141

 ドイツに住む中で育まれる発想なのか。

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