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サブカル大蔵経29福本伸行協力、萩原天晴原作、上原求・新井和也漫画『一日外出録ハンチョウ』⑧(講談社)

待望ッ…!の8巻が出た『ハンチョウ』。今出ている漫画で、一番楽しい作品です。この漫画をどう語ろう。

私がこの漫画で一番好きなセリフは、

格安ビジネスホテル…!

というナレーションです。

男のリスタートとして、格安ビジネスホテルが最良の場所として選ばれることに作者への信頼が芽生えます。後は安心してゆだねるだけ…。ひとりで、足を伸ばし、気兼ねなく自由に過ごせる。それが最大の悦楽…。

 私が最初にこの作品で衝撃を受けたのが、地下から出てきて24時間しか許された時間はないのに、目覚めた後、半日ゆっくり寝るという選択を描いたことです。普通ならあれこれ手を出し足を向けるところ…。しかしあえて眠ることを選ぶ。そこに現代の、そしてなかなかできない本当の至福が描かれていると思いました。

「たった一日しかない時間をどう過ごす」という世紀末的な設定が現代的であり、縛られた男たちが開放された分ありったけの自由を命がけで満喫するためのその智恵は、当たり前に生きているが閉塞感を感じている現代人に、目の前にある存在をどう活かすかという問いになる。

 この作品はどんなに素晴らしくても、「カイジのスピンオフ」というサブのイメージがついて回りますが、福本作品は、アカギ自体、天のスピンオフですし、そこからワシズ、トネガワ、ナカネと言ったスピンオフが咲き乱れる。スピンオフの巣窟。スピンオフのための本編!そうしたくなるくらい本編の設定やキャラクターに魅力があるということなんだと思います。しかしよくぞ大槻を主人公に選んでくれました。英断です。稀代の悪役こそ、われわれを救う蜘蛛の糸…!

 仏教における阿弥陀仏という存在もスピンオフだと考えています。浄土教諸派では阿弥陀仏は絶対の存在ですが、以前京都の東寺の立体曼荼羅を見た時、円の中の諸仏のひとつに阿弥陀仏が配置されているのを見て、びっくりしました。そうか、阿弥陀仏も、もともと仏教の諸仏の中のひとつであり、そこからスピンオフした形が浄土教なんだと。だから、スピンオフというのは、可能性を持つサブキャラクターを解放・昇華させる愛情がこもっている、ゆえにおエネルギーがすごいのかと。。

8巻は、犬や東海道歩きなどプチイベントが発生。真骨頂は焼肉屋かな…?チームワークもさらに磨きがかかってきた。

 地元を自虐するようで、自慢し…他県を持ち上げるようで落とし…カードの切りどきを見計らい…、 マウントを取り合うという……

「オレ…初めてかもしんないっス…焼き肉屋来て…タンとかロース飛ばして…いきなりカルビ行ったの…!」


「人が肉に気を使い……気づくと人より肉が主役……満たせない……人が主!肉が従!」


ただ一人看板を読み上げるようになった石和


優勝…!王将大槻…!


地上の現代人よ、目覚めよ!

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