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規制権限の不行使(2) 判断構造-水俣病関西訴訟判決を素材として-

 前記事では、規制権限の不行使の判断基準を概観した。歴史的にみると規制権限の不行使が問題となったのは、公害訴訟がその走りであった。そこで本稿では、水俣病関西訴訟判決を素材として、違法性判断の構造を検討したい。 1.水俣病関西訴訟判決の概要水俣病関西訴訟判決(最判平16.10.15民集58.7.1802頁)は、 と、権限の不行使が国家賠償法上の違法を構成する場合の一般論、定式を示した後、著しく妥当性を欠くかという判断の認定で以下の通り判示した。 と、①行使すべきであったこ

    • 国賠訴訟における規制権限の不行使(1)

      1.はじめに  先日、福島原発事故で被害を受けた住民が国を訴えた裁判の最高裁判決(判決文は左リンク参照)があり、一般ニュース等でも大きく取り扱われ、注目も集めた。 原発事故、国の責任否定 最高裁「対策命じても防げず」: 日本経済新聞 福島第一原発事故で国の責任認めず 最高裁判決をどう見る?:NHK この判例について言及する前段階として、そもそも国賠訴訟における規制権限の不行使を問う国家賠償訴訟はどのような基準で判断されるのか。概観したい。 本件で国に対し損害賠償を求める

      • 医療機関や医師に法律上求められる医療水準とは

        1.はじめに 医療水準論とは平たく言うと、医療機関と言っても大学病院や総合病院、町医者や診療所など規模や医療機器、医療資源も大きく異なる中で、それぞれの医療機関や医師に対して法律上(主に民事上)どのような治療技術水準が求められるかを示すものである。 2.損害賠償の法律構成 まず患者が医療機関や医師に損害賠償を求める場合、法的構成としては、【民法709条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。】という

        • 【読書録】大島眞一『Q&A医療訴訟』(判例タイムズ社・2015)

           この本で特に気になった部分を好き勝手に検討したい。そもそもこの本は、入院中、父(普通の会社員)に「暇やから本棚にある本なんでもいいから持ってきて」と頼んだら、何を思ったかこの医療訴訟の本を持ってくるという事件?があったので表紙を隠しつつ読んでいた。(しかしリハビリとか看護師さんと喋ってたらそんな読み進めず笑)退院してから、医療について感度の高いうちに最後まで読み切った。  そもそもこの本を買ったのは、大学院でとった医事法の講義レポートで、この本の基になった論文 (大島眞一「

        規制権限の不行使(2) 判断構造-水俣病関西訴訟判決を素材として-

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          【判例覚書】東京メトロコマース事件の覚書-退職金-

          13日に出た東京メトロコーマス事件の覚書。前記事と同じく引用、言及は一部に留める。  東京メトロコーマス事件は、宇賀反対意見もあるので最高裁判例の引用を中心にみていきたい。本判例も大阪医科大学事件と同じく高裁と最高裁で結論を異にした。 本件退職金の性質  本件退職金の性質について最高裁は、  「退職する正社員に対し,一時金として退職金を支給する制度を設けており,退職金規程により,その支給対象者の範囲や支給基準,方法等を定めていたものである。そして,上記退職金は,本給に勤

          【判例覚書】東京メトロコマース事件の覚書-退職金-

          【判例覚書】大阪医科大学事件の覚書-アルバイトの賞与-

           13日に最高裁で判決がでた大阪医科大学事件の判決文を引用しながら自分なりの整理を試みた。  引用や言及は、注目点であったアルバイト職員に対する賞与について興味を持った点に留まるので詳細は上記URL最高裁判例集で全文を参照されたい。 賞与に関する一般論  前提として大阪医科大学事件、東京メトロコーマス事件共に労働契約法20条適用下での判決である。同じく20条下での判例である長澤運輸事件、ハマキョウレックス事件は賃金名目毎の趣旨を踏まえて不合理性を判断することを示し、本件でも

          【判例覚書】大阪医科大学事件の覚書-アルバイトの賞与-

          【まとめ】同一労働同一賃金のポイント

          13日に出された大阪医科大学事件,東京メトロコーマス事件の前提知識として同じく労契法20条下のハマキョウレックス事件(最判平30.6.1民集72.2.88),長澤運輸事件(最判平30.6.1民集72.2.202)を引用しながら,労契法20条判例のポイントをまとめたい。 1ポイント➀賃金名目毎の趣旨を踏まえて不合理性を判断している ②地位確認は認めず,不法行為による損害賠償を認めている 他にも「不合理と認められるものであってはならない」の解釈や「その他の事情」に何を含めるか,

          【まとめ】同一労働同一賃金のポイント