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【まとめ】同一労働同一賃金のポイント

13日に出された大阪医科大学事件,東京メトロコーマス事件の前提知識として同じく労契法20条下のハマキョウレックス事件(最判平30.6.1民集72.2.88),長澤運輸事件(最判平30.6.1民集72.2.202)を引用しながら,労契法20条判例のポイントをまとめたい。







1ポイント

➀賃金名目毎の趣旨を踏まえて不合理性を判断している
②地位確認は認めず,不法行為による損害賠償を認めている
他にも「不合理と認められるものであってはならない」の解釈や「その他の事情」に何を含めるか,立証責任などの論点もあるが,ここでは上記2点に絞って解説する。

2旧労契法20条

第二十条  有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。







3ポイント➀判断の仕方

不合理性の判断の仕方についてハマキョウレックス事件は、

「皆勤手当は,上告人が運送業務を円滑に進めるには実際に出勤するトラック運転手を一定数確保する必要があることから,皆勤を奨励する趣旨で支給されるものであると解されるところ,上告人の乗務員については,契約社員と正社員の職務の内容は異ならないから,出勤する者を確保することの必要性については,職務の内容によって両者の間に差異が生ずるものではない。」


と賃金名目毎の趣旨を踏まえて不合理性を判断する姿勢を示し,
長澤運輸事件では更に

「有期契約労働者と無期契約労働者との個々の賃金項目に係る労働条件の相違が不合理と認められるものであるか否かを判断するに当たっては,両者の賃金の総額を比較することのみによるのではなく,当該賃金項目の趣旨を個別に考慮すべきものと解するのが相当である。」

と一般論としても賃金項目の趣旨を個別に考慮すべきことを示した。


4ポイント②地位確認

地位確認については

「労働契約法20条は,有期契約労働者について無期契約労働者との職務の内容等の違いに応じた均衡のとれた処遇を求める規定であり,文言上も,両者の労働条件の相違が同条に違反する場合に,当該有期契約労働者の労働条件が比較の対象である無期契約労働者の労働条件と同一のものとなる旨を定めていない。
 そうすると,有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違が同条に違反する場合であっても,同条の効力により当該有期契約労働者の労働条件が比較の対象である無期契約労働者の労働条件と同一のものとなるものではないと解するのが相当である」

として地位確認を否定し,不法行為による損害賠償構成によることを示した。
この部分は20条が強行法規であることから地位確認を認めるべきとの見解も根強い。


5現行法(パート・有期法)の紹介


 労契法20条は,昨今の働き方改革の一環で、短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律としてまとめられた。同法9条が均等を,8条が均衡を求めている。
 賃金名目毎の趣旨から判断するという上記判例を「基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて」(同法8条、9条)と明文化した点なども確認を要する。
 労契法20条下での判例が,パート・有期法においてどれほどの先例的価値を持つか議論はあるものの,同法が判例を明文化して立法された部分もあることからすると,大きな意味があると考えられる。

短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パート・有期法)
平成三十年七月六日公布(平成三十年法律第七十一号)
(不合理な待遇の禁止)
第八条 事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する通常の労働者の待遇との間において、当該短時間・有期雇用労働者及び通常の労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならない。
(通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者に対する差別的取扱いの禁止)
第九条 事業主は、職務の内容が通常の労働者と同一の短時間・有期雇用労働者(第十一条第一項において「職務内容同一短時間・有期雇用労働者」という。)であって、当該事業所における慣行その他の事情からみて、当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されることが見込まれるもの(次条及び同項において「通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者」という。)については、短時間・有期雇用労働者であることを理由として、基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、差別的取扱いをしてはならない。

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