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【B2B】ブランディング活動を企業はどう評価すべきか

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ブランディング活動の重要性は絶えず高まり続けています。しかし、ブランディング活動における正しい理解が企業でなされているかは常に疑い続ける必要があるとも感じでいます。

バイロン・シャープ著の「ブランディングの科学」では、市場シェアの獲得が結果的にブランドを醸成するのであって、ブランドに対するロイヤリティは市場シェア獲得の結果であるとデータをもとに示した事実もあるため、ブランディング活動そのものに対する投資が必要なのかどうかも含めて議論の余地はまだまだ残っている領域であることも事実です。

そんなブランディング活動ですが、「売り上げが伸びていないじゃないか」という経営からの意見が上がってくる(きてしまう)ことも実際あると考えています。このnoteは”ブランディング活動=売上といった誤ったブランディング活動への理解によって引き起こされる摩擦”というテーマで、正しいブランディング活動への理解を進めるための”自戒”も込めてブランディング活動が売り上げと直結で考えられてしまう理由と正しい解釈についてnoteを書こうと思います。

想起集合と入手可能性

消費者(ユーザー)の購買行動の重要なKWDとして、Evoked Setがあります。Evoked Setは、消費者が何か欲しいと考えた際に、想起される集合体のことです。基本的に購買に関わる重要な変数として”確率で想起集合に自社サービスや商品が入ることができるか”が非常にブランドのパフォーマンスを左右します。

また、あるサービスや商品を想起したタイミングで、それを入手できる可能性が高いかどうか(商品が顧客に届く位置に存在しているかどうか)もまた、重要な変数となります。

消費者(もしくはユーザー)に想起される状態に記憶構造を変えることが、ブランディング活動では重要であることは、上記の話から分かります。

この2つのうち、想起集合に自社商品(もしくはサービス)が入る状態にすることがブランディング活動の理解を一歩進める点であると私は考えています。

それでは、ブランディング活動はどのようなバリューチェーンを繋いで売り上げに影響を与えるのでしょうか。

上記を理解するためにはバリューチェーンに関する理解を深める必要があります。

ブランドバリューチェーン(brand value chain)

ブランディング活動には大きく分けて4つのバリューチェーンが存在します。brand value chain を正しく理解することで、ブランディング活動がどのような順序で影響を与えていくかを知ることができます。

brand value chain:Marketing Management引用


marketing program investment

ブランディング活動はマーケティングプログラムへの投資を起点に始まります。種類はプロダクトへの投資や従業員への投資などさまざまあります。

これらのマーケティングプログラムへの投資は次のバリューチェーンである”顧客の記憶構造や考え方(customer mind set)”に影響を与えます。

ブランディング活動は一朝一夕ではできないため、企業がおこなうマーケティングプログラムに触れる前の顧客の記憶構造や考え方をリサーチした後、マーケティングプログラムに触れたことで顧客側でどのような記憶構造の変化や考え方の変化が起きたのかを計測する必要があります。

このMarketing Program Investment の説明からもわかるように、マーケティングプログラムへの投資は”顧客の記憶構造や考え方”に影響を与えるのであって、”決して売り上げに直結するものではない”ということです。

上記を進めるにあたっての重要なポイントは3つ挙げられます。

①消費者とのコミュニケーション方法
②通信に使用するチャネル
③オンライン・オフラインを問わない従業員とマーケット(ターゲット)とのマーケティングコミュニケーション方法

マーケティングコミュニケーションに関しては、Marketing Managementでは下記のように語られています。

1. Establish need for category
Establishing a product or service category as necessary to remove a perceived discrepancy between a current motivational state and a desired motivational state. A new-to-the-world product such as electric cars will always begin with
the communication objective of establishing category need.

2. Build brand awareness
Fostering the customer's ability to recognize or recall the brand
within the category,in sufficient detail to make a purchase. Recognition is easier to achieve than recall. Brand recall is important outside the store;brand recognition is important inside the store. Brand awareness provides a foundation for brand equity.

3. Build brand attitude
Helping consumers evaluate the brand's perceived ability to meet
a currently relevant need. Relevant brand needs may be negatively oriented (problem removal,problem avoidance,incomplete satisfaction,or normal depletion)or positively oriented (sensory gratification,intellectual stimulation,or social approval).Household cleaning products often use problem solution;food products,on the other hand,often use
sensory-oriented ads emphasizing appetite appeal.

4. Influence brand purchase intention
Moving consumers to decide to purchase the brand or take purchase-related action. Promotional offers like coupons or two-for-one deals encourage consumers to make a mental commitment to buy. But many consumers do not have an expressed category need and may not be in the market when exposed to an ad, so they are unlikely to form buy intensions.

Marketing Management:Philip Kotler

マーケティングコミュニケーションは大きく分けて4段階の目的が存在します。1つ目はどのカテゴリーのどの商品なのかについて、現在の顧客側の認識と望ましい認識の差異を無くすことです。2つ目が、上記が満たされている状態でブランドへの認識を確立することです。3つ目は顧客がブランドへの評価を肯定的に進めることができる状態を確立すること、そして最後にブランドの購入意向に影響を与えます。

このように、マーケティングコミュニケーションは顧客側での購入意思を醸成するために必要不可欠で影響力の大きな部分でもあるため、正確に理解しておくべき内容であると考えます。

また、Marketing Program Investment における乗数として下記の3点が存在しています。

①Clarity(明快であること)
マーケティングコミュニケーションにおいてのメッセージやコミュニケーション方法を、顧客に合わせて調整し、送り手側が受け取ってほしい状態で受け手にどう届けるかを考えることです。

コミュニケーションの観点で考えると、顧客は顧客が所属している社会や顧客が普段得ている情報というcontext(文脈)から情報を解釈するため、伝えたい情報がそのまま顧客に届かない状態は良く起こります。

マーケターは顧客を取り巻く環境をできるだけ正確に理解したうえで、コミュニケーション方法やメッセージを考える必要があるということです。

②Relevance(関連性があること)
2つ目は関連性になります。ターゲットに関連したマーケティングプログラムでなければ、ターゲットは記憶構造や考え方を変化することはありません。そのため、顧客のライフスタイルや仕事、課題や悩みを詳細に把握し、それと商品(もしくはサービス)がどのように関連性を持っているかを適切に伝えられる状態を作る必要があります。

③Distinctiveness(特徴的であること)
3つ目は特徴的であることです。顧客のwantsを同様に形作っている競合との差別点、且つそれを顧客が認識している状態を作らなければ、顧客側で商品(もしくはサービス)の強みを理解することはありません。そのため、自社が提供することが可能で、他社が模倣困難で、且つそれを顧客が求めている差別点をコミュニケーションによって顧客に認識してもらうことが重要となります。

④Consistency(一貫性であること)
4つ目は一貫性があることです。ブランディング活動において一貫性を持ったマーケティングコミュニケーションを構築することは非常に重要です。チャネルに関わらず、顧客に一貫性をもってコミュニケーションをとることで、顧客側でブランドに対する記憶構造や考え方の変化が起きます。

これら、Marketing Program Investment によって、顧客の記憶構造に変化が生じます。

ブランディング活動やマーケティングへの投資が売上に直結して考えられてしまう大きな理由として、「マーケティングプログラムへの投資はあくまでも顧客の記憶構造を変えるものである」という観点が抜け落ちた状態で、ブランドやマーケットのパフォーマンスに直接紐づいていることが挙げられます。

上記の理解がなされない状態でマーケティングへ投資を行うことで、本来、顧客の記憶構造の変化量を追うべき施策への投資も、売上数字でコミュニケーションを取らざるを得なくなり、結果として、認識に乖離が生まれます。

ある商品カテゴリーに属しているという認知率を変えたいのであれば、コミュニケーションや目標とする数値はターゲットに対する自社サービスのカテゴリー認知率になりますし、自社サービスそのものの認知率を変えたいのであれば、ターゲットにおける自社サービス名称の認知率になります。

customer mind set

次にBrand value chain の2つ目であるcustomer mind set です。上記のマーケティングプログラムへの投資は、結果的に顧客の記憶構造や考え方に良くも悪くも影響を与えます。

顧客の記憶構造や考え方を整理するフレームとしてよく使用されるのはブランドエクイティピラミッドです。

ブランドエクイティピラミッド

時折、誤った使用方法で上記フレームを使用しているケースを見かけますが、上記、ブランドエクイティピラミッドは”顧客の考え方や記憶構造を評価するためのフレーム”になるため、企業側がこうなってほしいという情報を入れるためのフレームではありません。

顧客の考え方は意識・連想・態度・愛着・活動で構成されており、この構成要素はボトムアップ式にアプローチされていきます。

①Awareness(意識・認知)
認知度の構成要素はブランドの”深さ・幅・使用法”で構成されます。深さと幅はブランドに対する想起であり、使用法は商品(もしくはサービス)がどのように使用されるものなのかです。

②Associations(連想)
associationはブランドに対する外部との紐づきです。あるブランドのアイコンや名称から連想されるキーワードやロゴのことです。ブランドに対するassociationはブランディング活動において非常に重要な要素だと私は考えています。適切な形でブランドが連想されるように、顧客にブランドを識別させる必要があります。

③Attitudes(態度)
ブランドに対する顧客の態度は、製品の品質やパフォーマンスです。顧客がよりよい態度でブランドと向き合ってくれるように、提供者は常にサービスをレビューし続けて品質やパフォーマンスを改善し続ける必要があります。

④Attachment(愛着)
顧客側でロイヤリティが醸成されるように顧客の満足度に影響を与えることで、顧客はブランドに愛着を感じるように変化します。

⑤Activity(活動)
ブランドに対してロイヤリティを抱いているユーザーはブランドに関してshareをおこない、特定のブランドに対しての情報収集を積極的にするようになります。

顧客側での記憶構造や考え方の変化が、企業側が設計したマーケティングコミュニケーションによって適切に変化しているかを計測可能にするためには、マーケティングプログラムへの投資以前の顧客の記憶構造や考え方をリサーチしておく必要があることも重要なポイントになると考えています。

また、customer mind set における乗数として下記の3点が存在しています。

①Competitive reactions(競争に対する反応)
自社で進めているマーケティングプログラムに対して同じマーケットに存在している競合他社の反応はマーケティングプログラムのパフォーマンスに影響を与えます。

②Channel support(チャネルサポート)
顧客が存在しているチャネルに対してすべてのチャネルに投資できる状態は理想ですが、自社のみでそれを実現することは困難な場合もあります。そのような際は、マーケティングパートナーや代理店など、複数のvalue delivery network を用いて顧客への接触を最大化することができます。

③Customer size and profile(顧客の規模)
顧客の規模などに応じてマーケティングプログラムへの投資は変わるので、自社が相対しているターゲットを明確にすることで投資を増やすことができます。

brand performance

続いてBrand value chain の3つ目であるBrand performance です。

顧客の記憶構造が変化して、購買に対する行動が起き、商品(もしくはサービス)の売り上げや市場でのポジションが変化したとき、それはブランドに対して顧客が前向きに考えている状態を指します。

①price premium(価格のプレミア)
顧客がブランドに対して前向きに考えている場合、それは価格にブランドの価値を付与できる状態になります。

②price elasticities(価格弾力性)
また、上記に加えて、値段の上昇に対しても顧客の購買行動に影響を与えない状態を指します。商品やサービスによりますが、本来は価格の上昇は需要の低下に繋がるため、ブランドに対するエクイティがなければ上記が叶うことはないと考えています。

③market share
顧客側でブランドに対してロイヤリティが醸成されている場合、顧客の総数は想定されるターゲットよりも大きなものになります。

④expansion success
マーケティングプログラムへの投資が成功することで、マーケティングプログラムへの増資や新たな収益源を獲得できる可能性が高まります。

⑤cost structure
マーケティングプログラムへの投資が成功することで、マーケティングプログラムにかかる投資のコストが削減されていきます。

⑥profitability
ブランドに対してロイヤリティが醸成されていれば、企業の収益性が増します。

また、ブランドのパフォーマンスに関する乗数は下記の4つが挙げられます。(詳細は省略)
・Market dynamics
・Growth potential
・Risk profile
・Brand contribution

share holder value

最後に株主への影響をもって、brand value chain の一連の流れとなります。

ブランディング活動の計測と管理

このように、ブランディング活動にはバリューチェーンが存在し、適切なマーケティングプログラムやマーケティングコミュニケーションによって顧客の記憶構造を変化させることが、ブランディング活動で計測すべき要素になってきます。

企業全体でCMやキャンペーンを始めとするブランディング活動を進めるにあたって、上記の一連の流れを関係者全員が理解しておく、またはマーケティング担当として正確に出資者に伝えることが、ブランディング活動への議論を正しい道筋にとどめるうえで重要になります。

マーケティングプログラムへの投資は正しいmind setの醸成によってのみブランドのパフォーマンスに好影響を及ぼすことを理解したうえで、マーケティングコミュニケーションを設計していかなければならないと考えています。

マーケティングプログラムへの投資に対する目標は売上だけではなく、認知率や特定のカテゴリーにおける想起率、特定の色やキーワード・ロゴと接触した際に顧客側で自社商品(もしくはサービス)が想起されているかなど、基本的に顧客の記憶構造の変数をもって計測するべきではないでしょうか。

まとめ

①マーケティングプログラムへの投資は売上に直結するものではなく、顧客の記憶構造の変化をもたらす
②適切なマーケティングコミュニケーションとマーケティングプログラムによって適切な記憶構造の醸成がされることで、結果的にブランドの売上に繋がる
③マーケターはマーケターだけでなく企業に対して適切な目標とバリューチェーンを伝え、認識を合わせたうえでマーケティングプログラムへの投資を進める必要がある

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マーケティング部で働いています。