王、一頭・一機

揺れながら進むロボの背中で微睡んでいると、警告もなしに振り落された。

俺はニシゴリラのソロモン、銀毛を背負っても腑抜けちゃいない。猫のように回転して四肢で着地し、暴徒の襲撃かと辺りを見回す。アスファルトの割れた十字路。四つ角の廃墟は死角だが動体の気配はない。

俺は毛深い拳でロボの硬い体を小突いた。物言わぬ相棒、万能荷物運びにして最良の寝床、四足歩行機械のロボ。首から先のない馬に似た輪郭と、曲がりくねった大きな字で「LOBO」と記された背中、それと赤十字のペイントだけが彼の自己紹介だった。人語向きの発声器官を持たないこと、それでも意志があることはゴリラも同じだ。

『本気か?』

俺はロボの全周カメラに手話を送った。ロボは飛行機のバンクのように体を揺らした。俺たちのほとんど同じ高さの視線は、道の先に寝転がる生物を捉えていた。

『OK、お前の趣味を尊重しよう』

それはかすかに息のある人間だった。 【続く】

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