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【児童文学を振り返る】くまのプーさん/Winnie the Pooh

「くまのプーさん」(1926年)
アラン・アレクサンダー・ミルン著

Winnie the Pooh / Alan Alenxander Milne

あらすじ

森に住む、ぬいぐるみのくまのプーが、仲間の動物たちと、持ち主であるクリストファー・ロビンと、さまざまな事件を起こしながら、楽しく過ごす物語。

著者について

イギリス・ロンドン生まれの作家、劇作家、詩人。元々推理小説や戯曲を中心に活動していたが、息子クリストファー・ロビン・ミルンが生まれた後、児童文学に携わる。「くまのプーさん」は幼い息子とお気に入りのぬいぐるみたちをモデルに描いた作品となった。

考察

物語の語り手は作中のクリストファー・ロビンのお父さん。「くまのプーさん」という作品は、少し距離を置いて、父親が息子に物語を話しているのを眺める、ということになる。

しかし、この構図は次第に違和感を生むことになるー実在のクリストファーは大人になっていくのに、物語の中のクリストファーは子どものまま

ミルンはこの違和感を覚えてか、プーの物語を強引に終わらせることになる。続編の「プー横丁にたった家」(1928年)に次の一文があるー

「クリストファー・ロビンは、行ってしまうのです。なぜ行ってしまうのか、それを、知っているものはありません。」

本作最終章では、クリストファー・ロビンが大きくなって学校へ通うようになり、プーたちの世界から離れてゆくことが暗示されている。

時を経て1961年、ウォルト・ディズニー・カンパニーが本作の映像化権、商標使用権などの権利を獲得した。プーさんに関連する一連のアニメーション映画の制作がはじまり、現在の赤いシャツを着たハチミツ好きのキャラクターのイメージが定着した。

更に、2018年には実写長編映画となる「プーと大人になった僕」が公開された。映画のあらすじは、大人になったクリストファー・ロビンが仕事に追われ、家族と過ごす時間をも犠牲にし、思い悩んでいたところ、プーと再会し、人生で大切なものを取り戻す物語と、一見そのように写る。

映画はクリストファー・ロビンが寄宿学校への入学が決まり、100エーカーの森の仲間とお別れ会をするシーンから始まる。これは、原作の幕が下ろされた背景とも重なる。

加えて、映画の原題は「Christopher Robin」と、まさにクリストファー・ロビンを等身大に表した作品とも言える。よって、本作は、1928年を最後に発表された原作から90年越しとなる続編であり、ようやく、大人になれたクリストファー・ロビンを描いた完結編とも捉えられるのかもしれない。

原題 ”Christopher Robin"

参考文献:
ひこ・田中『大人のための児童文学講座』徳間書店, 2005年
定末正編『イギリスアメリカ児童文学ガイド』荒地出版社, 2003年

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