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周囲の差別の壁を、少し崩せた時(国際感覚をもって、働くということ)

わたしの職場は9割が日本人である。
インバウンドの旅行会社なので、日々の業務も海外との関わりが多いし、世界一周経験者が多い、旅好きが揃った小さな会社である。
典型的な日本企業といった雰囲気はなく、
みんな仲が良く、割と国際感覚を持った人が多い会社だ。
そんな会社でさえ、わたしは外国人スタッフと日本人スタッフとの間に、壁のようなものを感じる時があった。

わたしのチームの同僚は、日本語を母語としないオランダ人で、日本語は初級レベルだ。
普段の会話やチームのミーティングなどは、
お互いがストレスなく共通で話せる英語で行なっている。

社内のコミュニケーションのために使っているチャットのグループの中に、全体共有のためのグループが2つある。
1つは英語、1つは日本語で、
日本語の方には、オランダ人の同僚は入っていなかった。

2つあるとはいえ、日本語のチャットでしか共有されていない情報が多く、英語のチャットは実際ほとんど機能していなかった。
日本語のグループは、日本語でチャットをするからと、わたしの同僚は入っていなかったのだが、主に情報共有だったり、時に楽しい雑談なんかが繰り広げられるのは、いつも日本語の方だった。
大事なことや、知っておいた方がいいようなことは、わたしが都度通訳して伝えていたのだが、彼女は日本語のチャットに入れないことで、他のチームの動きが他のスタッフと比べて見えづらく、少し距離を置かれている気がしているのではないかと、気がかりだった。
他のメンバーと比べて、同僚が得られる情報の差は、外国人だから、という理由からきているのではないか、とも。

「外国人だから」別に知らなくていい、
「外国人だから」特別という意識がどこかあるのではないかと思っていた。
「外国人だから」日本人と同じ仕事はできない、とでも言うように。

日本人がほとんどのこの会社で、
一年近くも一緒に頑張ってきて、
それでもなお、言語の壁があるせいで、
疎外感を感じさせているのではないかと、気がかりだった。
何度かそのことを上の人に話したこともあったけれど、結局何も変わらない状況が続いていた。

言語の壁があるだけで、
同じ会社の一員であるのに、
同じだけの時間働いているのに、
同じようには働けない。
そんな状況を変えたいと思っていた。

そして、やっと今日、その壁を崩せた。

チャットに、自動翻訳の機能をつけることができると知って、全体ミーティングで、これから翻訳機能をつけて、2つあったグループを1つにまとめて、同僚が得られる情報を平等にしたい、と提案した。
彼女もチームの一員だから、と。

すると、スタッフみんなこの自動翻訳の機能を楽しく使ってくれた上に、
「ありがとう」と感謝された。
無意識の「差別」に、気がつかせてくれてありがとう、と言うのだ。

みんな違和感も悪気も持っていなかったのだ。
ただ、気がついていなかっただけ。

あなたはわたしたちと違う、という意識や態度は、人を苦しめる。
学校で仲間外れにされるような感覚と一緒である。
日常を日本で過ごし、仕事をしていても、
「外国人」というだけで仲間はずれにされるのは、どんな思いか一度考えてほしい、と思う。
特別扱いが、必ずしも必要なわけではない。
分からないことがあれば、その度に手を差し伸べればいいし、言語の壁によって、サポートがさらに必要になるかもしれないが、
過剰な特別扱いは、余計にその人を傷つける。
「外国人」というだけで、話しかけられやすくなる。
「外国人」というだけで、じろじろ見られる。
「外国人」というだけで、
普段はタブーと言われていることさえ、気分が緩んでやってしまう。

無意識に、カテゴリーに入れてしまうことを終わりにしないと、いつまでたっても、「外国人」と日本人という仕分けがなくなることはない。気がつかない限り、本当の協働なんて、できないのだ。

国際感覚をもって働くということは、
カテゴライズをやめて、言語の壁を取り払って、すべての人に平等な環境を与えることだと思う。
今はAIのおかげで、自動翻訳ができてしまう。
それに翻訳の精度は、以前と比べてだいぶ高くなっている。
言語の壁を超えて、理解できる機会が増えたのだ。テクノロジーのおかげで、障害を取り払うことができるのだ。

あとは、自分の意識を、変えるだけなのではないだろうか。

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