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こんな編集者はイヤだ!

最初に書いたのはこちら。前文を読んでもらうと、僕のプロフィールが、おぼろげながらわかります。

 一生付き合いたい編集者。できるライターさんは、「これ」を見つけるのが上手だ。それができるのが、長く仕事ができるライターの必須条件でもあり、実際そうやって、一生この仕事を続けていける人も多い。前回も書いたけど、「嫌いだけど仕事をくれる人」と「いつか仕事をくれそうな、人間的に好きな人」と、どっちを取るかと考えたときに、後者を取るほうが長い付き合いになって、結局、いつか仕事もちゃんとするようになる、と僕は思っているし、そういう事例を数多く見てきた。それ本当か? と思うライターさんは、前者と仕事をすればいいと思うよ。

 今回は、「嫌いな編集者」について書いてみることにした。ここからはあくまで僕の個人的な感想としておきます。その説明の前に、編集者の仕事が変わってきていることについて、まずは述べておきたい。

表か裏か!? 編集者は裏方が美徳とされてきた

 ほんの20年位前は、いや10年前までも一部そうだったけど、編集者は裏方が美徳とされてきた。小説家、漫画家、書籍を書く評論家、写真集を出すカメラマン、タレントやお笑い芸人だって本を書くときは作家だし、活字や漫画だけでなく、写真やイラストなどといった、何かを表現する人をクリエイターとすれば、そこに寄り添って、いい作品を仕上げるのが編集者の仕事だった。つまり、いい作品を作れば売れた時代だったのだ。ところが1996年をピークに本が売れなくなった(とネットに分析が出ていた)。正確に言うと、有名な人はそれなりに今でも売れるのだが、有名でない人《新人のデビュー作や、その世界でしか知名度がないクリエイターが自分のフィールドを超えて考えた面白い企画のもの》では売れなくなったのだ。

 困った。みんな困った。編集者的に言うと、せっかくみつけた面白いものが売れないと、そのクリエイターさんをがっかりさせるし、何より自分の編集者としての能力に自信が持てなくなる。どうしよう? 頑張ってPRするしかない、でも旧来のPR方法じゃ読者の目に届かない。そういえば最近、SNSというものがあるらしい。そこでバズればPRになって売れるよね(当時はバズるという言葉はなかったかもしれない)。じゃあ、頑張ってPRしましょうとなるわけだ。そういえば当時は「SNSでバズって売る方法を教えます」みたいなコンサルの人がいたなあ。で、PR記事を出すのは朝の通勤時間がいいとか聞かされたなあ。

なんだか偉い職業になってしまった

 ここで言っておくと、僕はそこには興味を持たないタイプだった。もちろんPRはやるべきだと思うし、売れれば当然うれしいのだが、一番いやだったのはあくまでクリエイターが主であるべきなのに、いつのまにか編集者が前面に立っていたこと。僕はそれにあんまり興味が無い。そのころから編集者が、なんだか偉い職業になった気がする。30年前、いや20年前くらいまではもっと日陰の存在だったはずなのだが、いまは堂々と表にたってPRするのが当然であり、その巧拙が編集者の能力として評価されるようになってきたのだ。まあ、時代の流れだし、PRがうまくいって本や雑誌が売れればそれに越したことはないのだけれど。 

 で、本題である。ライターとしていろんな編集者に企画を売り込みに行ったことがあるのだが、そのときに「ああ、この人とは仕事したくないなあ」と思うことがあった。ある程度、売り込みに慣れてくると、紹介してもらう前にその人の人間性を探ったりしたので、基本、馬が合いそうな人しか営業はしなかった。それでも予想に反したり、飛び込みに近い状態で企画を持ち込んだりしたこともあった。そうすると、以下のような編集者に出会ってしまうのである。

1、自分が担当して売れたものをアピールする人

もちろんアピールの仕方が大事だ。この本はこれくらい売れたんですよ、という話をするときに、いかにも自分が売ったというニュアンスが感じられると、もうその人の性格が透けてきてしまう。逆に著者(クリエイター)の能力や仕事ぶりをほめる人もいた。その説明や著者に対する分析の仕方によって、僕の反応も変わってくる。「上手な編集者」は紹介者(僕の知人)に売れたことをほめさせて(しかもさりげなく)、その著者の仕事ぶりを披露しながらなぜ売れたかを説明してくれる。そうやって売れる秘訣みたいなものを研究しているのも頼りがいがある。そういう編集者はけっして自分が頑張ったからSNSでバスりましたとは言わない。言ったとしてもさりげないのだ。嫌味に聞こえなければ、それも今の時代はOKなのかもしれないが。

2、まったく面白がってくれない人

それは肝心の企画が悪いんだろ? と言われればそれまでだが、優秀な編集者は、面白いと思うところと改良したほうがいいと思うところを、その場で説明したりする。当たっているかどうかは別にして、その説明に説得力を感じたら、その通りに企画を変えてみようかなと思ったりする。さらに言えば、最初から面白くないとだけ言っちゃうと、次に別の企画を持ってきてくれないのだから、どこか面白い所を探してもでも言うのが、ヒットを飛ばす編集者だと思う。だって企画がたくさん集まったほうがヒット率は高くなるでしょ!?

3、とにかく連絡をくれない人

これが一番厄介だ。打ち合わせして、その企画いいですねとなり、会議にかけますとなって、その後、連絡が来なくなる。ボツになったらボツになった理由を言ってほしい。そうしないと次の企画が出せない。それより厄介なのは、いいですねえその企画、また連絡します、となり、そこから連絡が来ない人。面白いと思わなかったのだろうなと推測するが、できれば会っているときに言ってほしかった。

 書き始めるといろいろと思い出していまう。ただ、やはりもう古い話なのかもしれないと思った。なぜなら昨年の営業ではライターの世界もかなり様変わりしていたからだ。

文字数でギャラが決まるWEBの世界

 昨年はWEB媒体で仕事することがあった。僕は事前に必ずギャラの話を聞くことにしてる。WEBは安いのは皆さんご存じの通り。ただギャラの決め方として、文字数で決めると聞いたときは驚いた。しかも文字単価が1円以下もあるんだって? 次回は、そんなWEB媒体の仕事の話をしてみようと思う。

雑誌業界で25年近く仕事してきました。書籍も10冊近く作りましたが、次の目標に向かって、幅広いネタを書きためています。面白いと思ったらスキをお願いします。