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#過去

腐った酒の色。1

腐った酒の色。1

京都置屋生まれの26歳元バンドマンとわたしは
学部の友人に呼び出された飲み屋で出会った。

彼は 花屋と 商社と飲食店を 掛け持ちしながら
カフェの開業資金を貯めていた。

その飲食店で 同じ学部のわたしの友人と知り合い
今夜の運びとなったのだ。

初対面のその日、彼はわたしをこっぴどく馬鹿にした。その清々しいまでの こきおとされ方は衝撃だった。

あの時もう わたしは彼を好きになったのだと思

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腐った酒の色。2

腐った酒の色。2

いちのつづき

彼とわたしは、3つ目の季節を超えられなかった。

彼と1つ目の季節を超えるころ
部屋で夕食を取っていると
彼女と別れた、と聞かされた。

彼女いたの、と驚くよりもまず
そりゃそうだろうとおもった。

その一言にそんなに影響力はなかった。
わたしは変わらず まっすぐに幼い。

ただ、そんな不安定など どうでもよくなるほど
彼は最初の時よりも 強く たしかに
わたしを苛めるよう

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書く賭け

書く賭け

わたしの21才は、酒粕が大量に溶けた
どぶろくのような恋を通らなくてはならなかった。

あのどぶろくは 今なお 心の檻の隅にあって、
たまに蓋に手を伸ばしては、いやまだ、と
開けられずにいるのを、もう10年は繰り返した。
でももうそろそろ開けたい。目についてウザい。

そんな風に、せまい 恋の話を書きたくなったのが
1週間くらい前のこと。

あのせまい恋を思い出すと、
世界をそうとしか見れなか

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