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[理系による「アート」考察] 自由過ぎる天才絵師、俵屋宗達

俵屋宗達と言えば"風神雷神図屛風"が有名ですが、かなり謎多き絵師のようです。かつ、下記の動画でもありますが、かなり自由な画風で、それまでの絵のルールというものを全く無視するかのように作品を描いています。

自身が"風神雷神図屛風"を始めてみたのは学生のころで、良い意味であまりに言語化できない絵だったため、あっけにとられ長時間見とれてしまい、それ以来俵屋宗達の追っかけになるのですが、この前、東京国立博物館をふらっと訪れたときに2つも同時に展示してあるのを見つけ("伝"俵屋宗達ですが)、あまりの自由っぷりに驚愕してしまったので、どのように自由なのかを記載しますね。

1点目が"桜山吹図屏風"です。

桜山吹図屏風

まず、構図として、横の線としての丘、と、縦の線としての木、がほぼ垂直に交わっており、さらにそのリズムがなんとも自由で、こんな風景画見たことない…

次に、ディテールが大胆というか雑というか…
具体的に、桜の部分を拡大してみると、なんか仕上げが雑なんですよね…(はがれているからかもしれませんが)

桜山吹図屏風の桜部分をクローズアップしてみる

下の2枚は奥村政信の"浮繪三夕三幅對"の花の部分を拡大したものですが、日本人だったら普通はこのように精密に仕上げると思います。

浮繪三夕三幅對の花部分のクローズアップ1
浮繪三夕三幅對の花部分のクローズアップ2

が、俵屋宗達は"精密に仕上げる"ではなく"ダイナミックに仕上げる"方に注力しているように見えるのです。具体的に、下を見てもらうと"個別のパターンを綺麗に繰り返す"のではなく、"花そのものの造形的な面白さをそのまま描く"な意識で描かれたように思えます。

桜山吹図屏風の花部分のクローズアップしてみる

よって、俵屋宗達は日本人特有の"精密に仕上げる"を無視しているようにしか思えず、"風神雷神図屛風"もよくよく見ると雑に描かれているのですが、それでも絵としてのダイナミックさは尾形光琳や酒井抱一より上、というなんとも不思議な絵師なのです。

次の作品は"扇面散図屏風"です。

扇面散図屏風

まず、構図として、扇の配置のリズムがなんとも自由で、かつ閉じた扇も描くことで全体的なバランス感もうまいこと取っており、まるで複数の扇が雪のように降ってきているみたいで、こんな絵見たことない…

次に、ディテールが大胆というか雑というか…
実際、扇に描かれている絵を見てみると、絵のかきっぷりが雑なんですよね…

扇面散図屏風の右上部分をクローズアップ

波はこんな形にならないよ…、とか、富士山の右側は何か描いた?、とか、アサガオは花以外のところももうちょっと丁寧に…、とか日本人っぽい美的感覚(職人的美的感覚)から言わせるとNGなのですが、そんなこと全然気にせず自分が好きなように書いてる感があふれ出ており、あなたは本当に日本人ですか?、と聞きたくなるようなセンスの持ち主であることが分かります。

と、それまでの伝統・習慣に囚われない所謂"天才"は数百年に一度現れるのですが、その一人である"俵屋宗達"の紹介でした~。


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