見出し画像

376.20221221:トゥの回:犬の歓迎


トゥ

グランパ上レテマダーオヌ氏の最新式の界狭間は
行先と縁の強いひとに直接掴まらなくても
一本の綱を皆で握れば迷子にならないという
画期的なシステムができあがっていて感動しました。

グランマ上ビエリルレス氏の家では玄関ホールの一角に到着し、
邸の人々に温かく迎えられましたが、
三頭の犬に熱烈すぎる歓迎を受けた
キャリーバッグの中の泰市は絶叫しました。
トゥは界狭間を越える時の恒例で
ランの肩の上に乗せてもらっていたので
運良く護られたのでした。
後からきた一頭はサンタと同じくらいの
犬にしては小さなひとでしたが、
先に来た二頭は自動車のような速さで駆けてきて、
大きな人達に申し訳程度に挨拶すると
直ぐに泰市に向き直って、
バッグの換気孔に鼻を差し込むような
勢いで匂いを嗅ぎ、
大きな前足でバッグの扉をこじ開けようとし、
次の瞬間には
大きな口を開いて
キャリーバッグの横幅を掴んだので、
トゥは目の前が真っ白になって
「伏せ」をしてくれるよう頼み、
いや、無我夢中で伏せ強制呪文を叫んでいました。

キャレンタそっくりのゲタゲタ笑いで
お腹を抱えているグランパ上を尻目に、
ママ上が苦笑しながら三頭を鎖に繋いで
泰市から引き摺って離してくれて、
グランマ上が泰市に謝りながら撫でてくれて、
ランがトゥの背中を撫で摩ってくれて、
パパ上が人肌に温めたミルクをふたりにくれて、
やっと泰市とトゥは落ち着いたのでした。

三頭はランと同じで、
後で会った猫も皆、
毛や羽の生えている生き物を
食べ物とは認識しない育て方をしているので
四人は心配しなかったのだそう。
半日一緒に過ごした頃には
あの大きな口が開いても、
大きな長い汁気の多い舌が飛び出してくるだけだと
泰市もトゥも覚えて、
涎が目に入るのを阻止する為に
目をつぶるようになっていました。
分かるまでは怖くて
目を閉じられなかったのでした。

今夜は長く眠りそうです。

マリエラセス暦3904年1月6日黒曜日24時03分。
(この星の一日は26時間)


#ランとトゥと泰市 #日記 #イラスト #小説  
#ファンタジー #一次創作   
#Cmon諭 #嘉又夢了 #環を持つ土塊の星 #711号室 #猫


宜しければサポートの程、お願い申し上げます。 頂戴したサポートは、 闘病生活と創作活動に充てさせていただきます。 スペインはグラナダへの長期取材を夢見ております。