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吉祥寺三丁目の夕日 4.「ナナメ」の遊び方をニューヨークに学ぶ

ナナメの街 吉祥寺

吉祥寺を歩いていて、何か変だと思いませんか。やたらナナメの交差点や三角の角地が多いのです。上の写真、真ん中手前の焼鳥屋さん。おいしいのでよく行くのですが、手前側がやたら狭い。そう、道路に挟まれて建物が三角形になっているので、手前側の席に座ると、目の前の道を、人や車が通ります(上の写真で、左側の道が吉祥寺駅に通じる商店街、右側が井の頭通りです)。

次の写真は、吉祥寺駅をやや東に行き、五日市街道JR中央線が交わる地点です。

中央奥のコンビニも三角地帯にある

吉祥寺に、このような三角地帯が多いのは、武蔵野市を通る主な道路(五日市街道、井の頭通り等)がJR中央線と斜めに交差しているからです。こうした道路と、線路や、線路に平行な道の交差点は、どうしても三角地帯になってしまいます。改めて、地図をご覧ください。

意外!どっちがナナメか

吉祥寺周辺地図(手を加えてあります)

 これを見るとナナメなのは、吉祥寺駅周辺を通っている井の頭通りや五日市街道だけではない事がわかります。五日市街道の北、西荻窪駅周辺を斜めに走っているのは、武蔵野市と杉並区、練馬区との境界を担う神明通り。地図の下の方にある三鷹の連雀通り等、歴史ある道路は、皆、ナナメに走っています。
 それと何と言っても、吉祥寺駅南にある井の頭恩賜公園から流れ出る神田川も、井の頭線に沿ってナナメに下っていますし、地図の一番北にある善福寺公園から流れ出る善福寺川も、同様にナナメに杉並方面に下って行きます。
 こうなると、真っすぐだと思っていた中央線が、実はナナメなのだと思いませんか?そうです。江戸時代からの動線で見ると、東西に走るJR中央線が「まっすぐ」なのではなく、水の流れに沿っている街道が「まっすぐ」だったのです!しかし今や、JR中央線に沿って走る道路や商店街が増えたので、こうした新しい道と、昔からある街道とが、ナナメに交差するのです(井の頭通り自体は、それほど古くありませんが)。

まっすぐな話

一つだけ「まっすぐ」な話を。次の写真は、五日市街道から直角に走る横道です。

五日市街道から直角に、まっすぐ延びる横道

昔、この地域では、五日市街道に沿って一定の幅で土地が割り当てられたため、人々は街道から直角方向に自分の土地を耕して行きました。ですから五日市街道と交わる横道の多くは、五日市街道と直角方向に、細く「まっすぐ」伸びています。(方角から言えば、ナナメですが。当時、JR中央線が走っていたら、混乱したでしょうね)

世界的な「ナナメ」 ニューヨーク・ブロードウェイ

では、ナナメは混乱をもたらす悪者なのでしょうか?いや、私は、これが街を面白くするスパイスだと思っています。話はいきなり飛びますが、ニューヨークのブロードウェイって、ご存じですよね(あのミュージカルで有名な)。ニューヨークは、基本的に縦横の道が整然と並んでいて歩きやすいのですが、このブロードウェイという道だけは、マンハッタンを思い切りナナメに突っ切っています。そのブロードウェイが、まっすぐ南北に走る7番街と交差してできた三角地帯が、観光客が集まる、あのタイムズ・スクエアであり、その一帯にできた劇場街の事を、単に「ブロードウェイ」と呼んでいます。

タイムズ・スクエア(ニューヨーク)

この写真の正面のビル(電光パネル)が、いわゆる吉祥寺の「焼鳥屋さん状態」で、ここに広告を掲げるのが、世界企業のステータスとなっています。左側のナナメに進むブロードウェイと、右側の北にまっすぐ進む7番街に、はさまれています。その手前の三角地帯の広場がタイムズ・スクエアで、24時間、世界からの観光客で賑わっています。

ニューヨークのスゴイ三角形

フラット・アイアン・ビル(ニューヨーク)

さらに面白いのが、フラット・アイアン・ビル(平らなアイロン型のビル)。このビルは、有名な5番街をまっすぐ南下し、ナナメに走るブロードウェイと交差した角に建てられています。このビル、何故この形状となったかは、もう、おわかりでしょう。しかもこれは1902年にできた22階建てのビルで、ニューヨークの名物ビルとなっています。ニューヨークの人達って、100年以上前から、こんな事をやって、ナナメを楽しんでいるんですね。ちなみに映画にもよく出て来る歴史ある庶民のデパート、メーシーズの前の三角広場は、6番街とブロードウェイの角です。

「まっすぐ」でも遊ぶニューヨーカー

今度は、ニューヨークの「まっすぐ」をご紹介しましょう。
先ほど申しましたように、マンハッタンの道路は、基本的に碁盤の目になっています。この、まっすぐな道に高層ビルが立ち並ぶマンハッタンでは、年に1回(厳密に言うと2回)、夏至の前後に、東西の道路と、太陽の沈む方角が完全に一致すると、夕日が両側のビルの間にまっすぐ輝きながら沈む光景が見られます。ニューヨーカーは、これを「マンハッタン・ヘンジ」と呼び、毎年、楽しみにしています。この時間帯は、その瞬間の写真を撮ろうとする人たちのために、警察が主要な道路まで封鎖して、みんなで楽しんでいます。おそらく古代のストーン・ヘンジをモジって誰かが呼び始めたのでしょう。それにしても道路一つ、夕日一つで、こんなに盛り上がってしまうニューヨーカーは、お祭りの天才だと思います。

「マンハッタン・ヘンジ」に集まるニューヨーカー

吉祥寺に来て、道がナナメのために、彼(彼女)が、方向感覚がわからなくなったら、こんな話でもして、盛り上がってみて下さい。これから吉祥寺でも、ナナメを遊ぶ場所や、吉祥寺ヘンジみたいな現象を発見して、もっと楽しみたいものですね。


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