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やめてって言ってるのに

 3年ほど前に祖母と二人暮らしをしている。それまでは東京に住んでいたのだがまあ色々あったのだ。

 祖母と自分では60歳以上の年齢差がある。そんな二人が一緒に住んでいるのだから普段から口喧嘩が絶えない。こればかりは仕方がない。ジェネレーションギャップってやつだ。生活リズムも合わないし、音楽の趣味も食の趣味も全く合わない。牛肉の焼き加減もクーラーの温度も好みが全く合わない。

 それに加えて、祖母は世の中にとても疎い。嵐が分からないのは仕方がない。SMAPもま仕方がない。でも、シブがき隊が伝わらないのはどうなんだろう?おニャン子クラブも怪しいらしい。食にもあまり興味が無く、この間ジャガイモのアク抜きをしていたら驚かれた。下ごしらえ大事。

 色々と祖母への愚痴はあるが、今回は一つだけ。

 辞めてとお願いしていることを

 しないで欲しい、ということだ。

 ここ数年で気付いたことがある。やっといてと頼んだことがやってないよりも、やらないでと言ったことをやられる方が数倍腹がスタンディングするということだ。

 そんな俺が祖母にお願いしていることの一つが

『朝ごはんと昼ご飯を用意しない』

 これである。

 何故かというと好きなご飯を食べたいから。祖母は毎日晩ご飯を用意してくれる。本当にありがたい。ただ先程触れたように祖母はあまり色に興味がなく、出てくるメニューも焼き鮭、ハンバーグが週に2回づつ出てくる。唐揚げも週に1回出てくる。

 でも俺はチキン南蛮が好きだし、ビーフシチューとかカルパッショとかおおよそお年寄りが食べなそうなものが好きなのだ。カロリーは旨味成分。

 そういう物をお昼に食べに出かけることもあれば、自分で作ることもある。今日もマックを食べたくて行ってきた。チキンタツタ好き。そんな大好きなチキンタツタを部屋で食べてる時にドア越しに祖母から一言。

 「ご飯食べる?」  

  イラ。

 三年間ずっとずっと言っている。ご飯いらないと。好きなもの食べたいと。なのに未だに休みの日の度に聞かれるのがすっごいイライラする。最初の一年は我慢した。祖母の好意なのだからあまりキツく断るのは良くないと思ったからだ。でも2年目からは話が変わってくる。何度も何度も同じことを言うのは疲れる。

 何度も言わせないで、ご飯いらない。よく祖母に文句を言うようになった。その度に祖母から

 アンタのために作ってるのに何でそんなこと言われなきゃいけないの

 と怒られる。イライラがシューマッハ。

 祖母の好意の中には、自分がしてほしい事を他人にしてあげよう、と言う気持ちはあっても、他人のして欲しいことという気持ちは存在しないのである。

 唐揚げに添えてあるレモンを周りの確認を取らずに絞るタイプなのだ。

 トマトに塩をかけるのも、揚げ物にソースをかけるのも祖母の好意からなのだ。ただ俺は両方ともやめて欲しい。トマトの塩は嫌いだし、コロッケはソースをかけないで食べたい派なのだ。

 三年間言い続けてるが未だにやめてくれない。とりあえずお昼ご飯を用意するのはやめて欲しい。

 ご飯食べる?と聞かれたから俺はいつものようにいらないとさっきも答えた。するとドア越しに

 「ええ!?いらないのけ!!」  

 と驚いた祖母の声が聞こえてきた。三年間ずっとずっといらないと自分は言っているが、その成果がこれだ。多分あと3年言い続けてもやめてくれないんだろうなあと思う。悲しいことに。

 そういえばチキンタツタは明太チーズのやつ食べました。やっぱりカロリーは旨味成分。

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