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どうしてリスカをしてはいけないの?自傷行為を続けるリスク・やめさせる方法も

「自分を傷つけちゃダメでしょ」「大事な体なんだから」「せっかく五体満足で生まれてきたんだから」としたり顔で説教してくる大人が、すごく嫌いでした。

私が自傷を始めたきっかけ

私の家には、帰ってきた途端に怒鳴る父親と情緒不安定な母親がいました。

小学校くらいまでは「家庭とは普通こういうもの」と思っていましたが、中学校に進学してしばらくすると「他の家はLINEで母親に迎えを頼めるのか。病気でもないのに」「他の家は食事の時に普通に会話をするのか」「泣いた時に『うるさい』と叩かれないのか」など、自分の家がどうやら周りの家と違うことが分かってきてしまいました。

親への不信感と自分の身の置き場の無さ、思春期という微妙な時期が重なってストレスが溜まり爆発寸前でしたが「親にストレスをぶつける」という文化がなかったし、小さい頃から「自分が悪い・自分が我慢すれば良い」という考えが染みついていたので、ごく自然な流れで自傷行為でストレス発散をするようになりました。

自分の手の甲や首に爪を立ててひっかいたり、首を締めたり、カッターを当てて血が出たりすると、十何年分のストレスが一気に軽くなりました。血と一緒に自分の嫌な感情が出て行く感じがして。

血のりやひっかき傷の付いた手を見て母親が泣きながら治療してくれましたが「悪いなぁ」とも「もうやめよう」とも思いませんでした。まぁ、母親が原因の一端でもありましたしね。

ストレス発散方法はみんな違う

よく「カラオケでストレス発散しよう!」とか「楽しいことで嫌なこと忘れようよ!」という人がいるんですが、ストレスの発散方法って人それぞれだと思うんですよね。

私はカラオケに行くと「誰がどの曲を歌うのか」「私が歌ってる間みんな暇じゃないか」「人が歌ってる時何をしてればいいのかな」などめちゃめちゃ考えて気疲れするし、そうやって遊んで帰ったあと「今日あんなこと言わなきゃ良かったな」なんて一人反省会が始まるので、むしろすごくストレスが溜まります。

「楽しいことで嫌なことを忘れる」って良いことだと思うんですけど、ストレスへの向き合い方も一人一人違いますよね。楽しいことで上書きできる人もいるけど、とことん落ち込んでからゆっくり浮上してくる人もいます。

「カラオケ行こ」「やけ食いしよ」と同じように、私の中でのストレス対処の最適解が「体切ろ」でした。親や同級生にどう思われようが、爆発しそうなストレスの中で、せっかく手に入れたストレス解消方法を手放そうとは思えませんでした。

自傷の目的は? 注目してもらうため?

リスカやアムカ(腕を切ること)している人を見て「あんなの自己主張だ・アピールだ」「精神の弱さだ」と切り捨てる人が多くいます。

自傷をしない人にとっては自傷する人の心理は理解しがたいでしょうし、漫画やアニメで偏った知識を得て、自傷行為についてそういう偏見を持つことしかできないのは、まぁ分かります。そういう人が悪いとは思いません。自傷をしたことがなかったら、私もそう思っていたかもしれません。

今まで自傷をする意味を聞かれても「血がでるとすっきりするから…?」としか答えられなかったのですが、最近読んだ本に「自殺は死ぬために行われる。自傷は生きるために行われる」という言葉があって「まさにそれだ!」と思いました。

私の場合もそうですが、ストレス解消のためにやっているので、別に「人に見せよう」とか「死のう」とか考えているわけではないんですよね。

「自殺は死ぬために行われる。自傷は生きるために行われる」という言葉を見て当時の自分のことを思い出していたら、自分が自傷行為をしていた理由を明確に言葉にすることができてきたので下にまとめていきます。

自分の心を体に戻す

私は物心付いた時から何かと怒鳴られていました。怒鳴られたことにパニックになったり叩かれたことに驚いたりして泣き声が大きくなると更に怒鳴られる毎日で、いつの間にか「怒鳴られる」と思った瞬間に「怒鳴られている自分」を切り離すようになっていました。…うーん、分かりにくいですかね。

体はしっかり泣いたり喚いたりしてるんですが、心ここにあらずで「また怒鳴られてて可哀そうだなぁ」と他人事のように感じるんです。イメージ的には、幽体離脱が一番近いと思います。

中学に上がる頃には怒鳴られることが減ったのですが、ストレスを感じると心と体を切り離してしまう癖がついていたので、ずっと意識が定まらないし、気持ち悪くて。

思い返すと自傷をした時いつも「戻ってきた」と思っていたのは、心が一回離れてしまっていたからなんだなぁ、と思います。

私の場合は「戻す」ことが目的でしたが、逆に、自分の心と体を乖離させるために自傷行為を行う人もいるようです。

心の痛みを体の痛みで忘れる

ストレスを感じると、体中気持ち悪くて喉から胃までがモヤモヤします。吐き気が止まらないし、疲労もすごいし。人の話が頭に入って来ないし、自分がどこを歩いているのかも分からなくなるし……。

そんな状態では、普通に生活できません。自傷をすればそういうどうしようもないストレスが、体の痛みで上書きされて、無くなります。

実際は根本的な解決ができていないし、紛らわしているだけなんですが、体の痛みがストレスを持って行ってくれているみたいで気持ちがすっきりして、すごく爽快でした。

気持ちが疲れているのに体に傷がついていないとすごく違和感があったので、傷を付けて血を出すことでバランスをとっていた、という面もあると思います。

血を見ると安心する

「体を切ると血が出る」という当たり前のことに安心感を覚えて、自傷をやめられなくなった……という一面もあります。

立っているのが精一杯の時って、生きているのか・いまどこにいて何をしているのかが全然分かんなくなっちゃうんですよね。血を見ることで「まだ生きている」「まだ血が赤いから大丈夫」と安心して学校に通うことができていました。

「まだ血が赤いから大丈夫」って、意味が分からない人も多いですよね(笑)

よく漫画で精神病になった人が自分の体から虫が湧き出てくる幻覚を見たりするじゃないですか。そんな感じです。ストレスで自分の血が黒くなったり虫が混ざったりしないか、すごく心配でした。

人に見てもらうためにリスカする人もいるけど……

人に見せるために自傷をしている人も中にはいると思います。でもその場合、自傷までしないと見てもらえない、伝えたいことを伝えられないと感じさせる環境がマズいのではないでしょうか。

親や教師、周りの大人が普通に話を聞いてくれる普通の環境だったら、自分の体を切ろうとは思いません。自分の体を自分で切るのって、すごく痛いんですよ。

「クラスの流行」の場合は自傷行為を無視しても良い?
学生だとリストカットやアームカットをしている同級生を見て、自傷行為が伝染し、競うように自傷する現象が起きる場合もあるそうです。教師や周りの大人が「そういう流行でしょ」「思春期ならではのやつね。すぐやめるでしょ」とたかをくくりがちですね。

確かに思春期の子供の流行かもしれませんが、自傷行為は学生の中でも元々精神的苦痛を感じている生徒に伝染しやすいと言われています。リストカットなどの自傷行為を行っている学生がいたら「流行でしょ」など楽観視せず、話し合いの場を持つことが重要です。

自傷するのは自由。でも、できればやめた方が良い

人によって、ストレスの発散方法は違いますよね。あなたに一番ピッタリな方法が自傷行為なら、やれば良いと思うし、周りに止める権利はないと思います。「心が弱いから自傷なんかするんだ」という人もいますけど、生きるために行う自傷行為は、むしろ強さだと思います。

ただ自傷は、やればやるほど体と心の感覚が鈍くなってエスカレートして行く傾向があります。私も、浅い傷では我慢できなくなって、最終的に腕を1~2㎝くらい切りつけたり、眩暈で倒れそうになるまで瀉血したりしていました。

エスカレートするのは、傷の深さだけではありません。リスカでは我慢できなくなって薬をたくさん飲んだり、瀉血をしたり、知らない人とめちゃめちゃなセックスをしたりと、自傷の種類を変えたり増やしたりすることもあります。

自傷行為は、元々は「生きるため」にすることが多いんですが、そうやってエスカレートすると、一周回って自傷行為で自分を殺してしまう可能性もあるんですよね。

自分の体を傷つける行為は、どこかでやめないと、死んじゃうんです。だから、できるだけやめましょう。

リスカする人が身近にいたら、どう声をかければ良い?

とはいえ、自傷行為をしている当事者は必死で自分のストレスを逃しているわけだし「いつか死にますよ」と言われても「うるさい!こちとら今生きてるだけで必死じゃ!」という感じだと思います。

自傷行為ってすごく依存性が強くてやめたくてもやめられない人が多いので、身近な人の自傷行為を止めたいと思うのであれば、長くて優しいサポートが必要です。

少し声をかける程度では心を開いて話すことができません。中途半端なサポートや声かけをして放置されるくらいなら、最初から放置されていた方がぶり返しが来ないので楽です。

自傷行為に至るほどのストレスって簡単には綺麗に解消できないので、長い時間をかけて、しっかり話を聞いてあげることが重要だと思います。

また声のかけ方を間違えると、かえってストレスをかけたり追い込んで症状を悪化させたりする可能性もあるので、優しい声かけが必要です。

例えば「自傷行為に慣れてしまって、自殺してしまう人もいる。君のことが心配だから、何かあったら相談してほしい」とか。

「あなたのことが心配なの」「自傷行為なんて良くないから、何か不満があるなら話して」など感情論だけで話をしようとするとお互いに感情的になったり不信感・不快感をもたれたりする可能性があります。

「一般的に、自殺に繋がることが多い」という事実を伝え「君が相談してくれるまで待つ覚悟があるよ」という余裕を見せれば、少しはお互いに向き合える可能性が高まると思います。

少なくとも私は生きるために自傷行為をしていたので「そのままだと死ぬよ」と言われたら、自傷行為の頻度や深さを多少は加減したと思いますし、信頼できる大人がいれば相談くらいはできていたかもしれません。

自傷行為をしている人に言ってはいけない言葉

人によって嫌な言葉はもちろん違うと思いますが、ほぼ確実にかけない方が良い言葉がいくつかあります。

・自傷なんてやめなさい
・せっかく五体満足で産んでもらったんだから
・(自傷を繰り返してしまったことに対して)やっちゃダメって言ったでしょ!
・スルー
・みんなの真似をしてるだけでしょ

上3つは、自分の常識で他人を否定し、相手を上から攻撃する言葉です。リストカットやアームカットなどの自傷行為をしている側だって、自傷行為をしてはいけないことくらい知っています。

分かっていてもそれ以外に自分のストレスを逃がす方法がないからやってるんです。自傷行為には依存性もあるので「やめたい」と思っているのにやめられない可能性もあります。「やめたいのにやめられない」という場合、自傷行為をしている本人を追い詰め、症状を悪化させてしまう可能性もあります。

私も保険医の先生や友人に何度も「やめなよ」と言われましたが、やめられるものなら止めてるし、ただ「やめなさい」と言われても、自分の体くらい好きにさせてよ……とやるせない気持ちになって、ますます酷い傷を作った記憶があります。

特に「せっかく五体満足で産んでもらったんだから」に関しては、親子関係が原因で悩んでいる場合、火に油を注ぐことになります。

下の2つは、自暴自棄になってしまうので止めた方が良い声かけです。人に見せるために自傷しているのではない……とはいえ、家族や友人に完全にスルーされれば「自分のことなんて、みんなどうでも良いんだなぁ」と思ってしまいます。

「みんなの真似をしているだけでしょ」というのは、思春期の子供の精神力を削ぐ言葉です。ただでさえ自分のオリジナリティを追及し始める年齢なのに、自分が必死にストレスを解消しようとしたり自傷でSOSのサインを出したりしていることを「真似」の一言で片づけられたら、やけくそになってしまう可能性もあるでしょう。

酷い時は病院に

パニックを起こしてしまって普通に生活ができない・話せる相手がいない・ストレスで眠れない など、どうしても自分でストレスに対処できない時は、メンタルクリニックや精神病院に行くことをおすすめします。ゆっくり休みましょう。

メンタルクリニックの口コミなどを見ていると「先生と話すだけで楽になった」という人が多くいるので、まずは通院してみると良いかもしれません。もちろん「薬だけ処方してバイバイ」というお医者さんや「わざわざ自分の体を傷付ける人間の話なんか聞かん」というお医者さんもいるので、余計なことで自分の体や心を傷つけないよう、行く前に電話で確認してみるのもおすすめです。

もし話を聞くだけで良ければ、TwitterのDMでもツイキャスでも良いので私に声をかけてもらえればと思います。ツイキャスはほぼ毎日、20時前後にやっているので、気軽にコメントで声をかけてください。私が他の話をしていても、お構いなく、どうぞどうぞ。

自傷行為をしてしまう気持ちも、止めさせたい気持ちも、すごくよく分かります。当事者は自傷行為はなるべく止めるよう、周囲の人は無理に押さえつけたり余計なストレスを与えたりしないよう、お互いに丁度良い距離感で、お互いにとって一番良い解決策を見つけられると良いですね。



【参考文献】
松本 俊彦『自傷行為の理解と援助』
林 直樹『新版 よくわかる境界性パーソナリティ障害』


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