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始まりの日について② -子どもの血球貪食症候群-

前回(始まりの日について① -子どもの血球貪食症候群-)は、次女が鼻血を出し、風呂場の呼出ボタンが最も正しいであろう使い方をされた話。その続き。


当日:18時40分ごろ

さて、次女の鼻血である。
 
そう、子どもの鼻血である。さして珍しいことでもない。つい1週間ほど前にも、次女は鼻血を出している。

だが、そのときの鼻血とは明らかに異なる点が2つ。 

出血量が多い

大出血とまではいかないが、まあまあの流血である。ポタポタ落ちるのではなく、鼻炎のときの鼻水のようにたらりと流れている。 

止まらない

なによりの問題が、圧迫してもまったく止まる気配がない。ものの1分程度でティッシュ1枚がほぼ真っ赤になり、すぐ下にもう1枚を用意しながら入れ替えないと、床に血が垂れてしまうぐらいの量が、ずっと流れている。

119番は良し悪しだと学んでいる

加えて、体温も一気に38度後半まで上昇。
次女の鼻を交互に押さえながら、これはどうしたことかと夫婦で話し合う。

 実は119番については、あまり良い印象を持っていない。正確には、119番で救急車を呼んだ後の救急医療の受け入れシステムに、である。

というのも1年前、義父が軽い脳梗塞を訴えて119番に電話したとき。救急車はすぐに到着し、そこから受け入れ先の病院を探していただいたのだが、義父が高熱だったこともあり、どこもコロナ禍対応で受け入れ不可。
 
結局2時間ほど経って、ようやく車で1時間弱かかる大学病院が「緊急性が高くない場合は入院させない」という条件付きで受け入れを許可してくれた。結局、精密検査の必要があり、そのまま入院となったのだが、「緊急性が高くない脳梗塞とは…?」「こんなにほったらかされて後遺症は大丈夫なのか?」などなど、なかなかな疑問が残った記憶がまだ鮮明だった。 

とにかく、どうやら高熱患者は受け入れを断られるらしい。

そして、救急車の装備で対処できないものだった場合、その1時間、2時間が次女の運命を決めてしまうのではないか。なにしろ今このときも、次女の体からは血液が失われつづけている。

当日:19時00分ごろ〜19時30分ごろ

とりあえず、まずは#7119に電話した。

普通の鼻血の対応をレクチャーされた。
 
いや、絶対それじゃない気がする。
 
断っておくが、#7119の対応してくださった方の質を疑っているわけではない。逆の立場になって考えれば分かる話で、#7119には全国から有象無象の問い合わせが日々やってくる。年齢も症状も担当科もバラバラな問い合わせに、受け答えする医師や看護師が状態を見もせずに当意即妙な返答などできるわけがない。
 
ましてや年末の忙しい夜の時間帯に、「子どもの鼻血が止まりません(としか言いようのない)」という内容の電話である。まあ、冷静に考えればその対応ぐらいがせいぜいだろう。 

状況を一気に打開してくれた電話対応

とはいえ、さすがにそれ以上に状況を分かりやすくする言葉を用意できる精神的余裕はない。
 
そこで、午前中に控えていた市の夜間・休日救急受付に連絡した。対応してくださったのは、当番だった市内の小児科医。
 
同様の説明に(鼻血が止まっていない時間が少し増えた)対し、その先生は少し考えたあと、

  • 話を聞いている限りでは、単純な鼻血ではなく何か大きな病気の可能性が考えられる

  • おそらく精密な検査が必要だが、ここ(夜間・休日受付の診療所)ではその設備はない

  • 症状としては救急車を呼んでもいいが、発熱症状があるのなら受け入れ病院探しに時間がかかるし、必ずしも適切に対処できる小児科病院に運ばれるとは限らない

  • もし自家用車を持っているのなら、30-40分ほどで行ける◯◯という小児科総合病院が24時間救急を受け入れているから、そこに直接行ってしまった方がいい。住所と電話番号は… 

という話を、テキパキと伝えてくださった。

「いや、すげえなこの人。この状況が見えているのか?」と思いながら、とにかく感謝してすぐに出る準備を始めた。

結局このとき案内してくださった病院に、次女は今もお世話になりつづけている。

やたらと冷静な次女

こうして妻が次女の鼻血を押さえ、私が電話をかけ準備をしている中で、当の次女本人はというと、取り乱すでもなくただ淡々となすがままになっていた。
 
単純におとなしくしていただけなのか、あまりの想定外の事態に本人も思考停止状態だったのか、はたまた本能的に「ここで興奮してはまずい。落ち着け」という指令が脳から発せられていたのか、血液が大きく損失したことで生命維持のための省エネモードに入ったのか。

なんにせよ大きな混乱もなく、長女も含めて車で病院に向かった。

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