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研究室のようなコーヒーショップで一杯1500円のコーヒーをいただく
某月某日
今回のホーチミン滞在は9日間と長い。本当はメコンデルタにでも数日エクスカーションに行きたかったが、やらなければならない開発タスクがたくさんあったので、オフィスで朝から愚直に仕事をする日々が続いた。
せっかくなのでカフェ巡りくらいはしたい。
我がGoldrush Studioで一番コーヒー好きのVくんに、お勧めのカフェを聞いてみた。
Vくんは、自分は言ったことがないが、友達がここがいいと以前言っていたよと1つのカフェを教えてくれた。
知っている人も多いかと思うがベトナムで生産されるコーヒー豆のほとんどはロブスタ種という品種。雨量が多く多湿な気候でも病気にならないロブスタ種がベトナムの気候に向いていると読んだことがある。
コロンビアなどの南米で生産されているアラビカ種とは違い、苦みが強く、私の感想であるがコクがあまりなく、芳醇な印象はない。
私はブラジルの豆を美味しいと感じることが多く、コクがあって芳醇な香りのあるコーヒーが好きなので、ロブスタ種はどちらかというと気分を変えてくれるコーヒーという位置づけで、一番の”推し”ではない。
ベトナムの人は逆にロブスタ種の苦みや強さを好きな人が多いので、海外のアラビカ種のコーヒーを”薄い”と感じることが多いようだ。
しかしながら、Vくんはベトナム人であるにもかかわらず、アラビカ種が好きなようで、
「ここはたくさんのアラビカ種の豆がおいてあるみたいだよ。」
と行ったことはないのに、なぜお勧めしたのかを説明した。
ベトナムのロブスタ種はVくんに言わせると"Too strong"ということだった。
ベトナムであえてアラビカ種のコーヒーを飲むということは、日本であえて外国産の抹茶を飲むようなもの。当然値段はベトナムコーヒーよりも高くなる、だからVくんは外ではアラビカ種のコーヒーは飲まず、豆を購入して自分で家でドリップして水筒に入れて飲んでいるということだった。
実に堅実なベトナム中部の男なのであった。
それから数日後、ちょうど1区の別の場所に行く用事があり、Vくんにお勧めされたカフェに近いので、立ち寄ってみようと思った。
Google Mapを頼りに場所まで行ってみると、全面が黒のスモークガラスの謎の扉に店の看板がでていた。
その異様な構えに、一瞬たじろいたが、扉の前にいた店員が笑顔で招き入れてきたので、そのままその中に入ってしまった。
入ってみると、
禅?
奥行きのある、箱庭のようなオブジェがあって、苔で禅寺の庭のようなものが再現されていた。
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中にも店員がいて、2階です、と教えてくれた。
2階に上がると、そこは白と黒で統一された研究所のようになっていて、大きな、これも黒のエスプレッソマシーンが置かれていた。
カウンターの裏のテーブル、というより机に案内されて、腰を下ろすと、
1人のスタッフが目の前にたち、
「普段、どんなコーヒーを飲みますか?」
と聞いてきた。
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こちらの回答を待たずに、バリスタと思われるその男は、カードのようなものを目の前に並べていった。
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カードには豆の産地、生産者、生産者から1Kgあたりいくらで購入したものか、また豆のスコアのようなものが書かれている。
ペルーの豆がいくつかあった。
ゴールドラッシュコンピューティングのオフィスは原宿と北参道の間にあり、周りに素敵なコーヒーショップがいっぱいある、それらのコーヒースタンド、カフェでペルーの豆を見かけることがないのでペルーのRed Geishaにしてみた。
Geisha(ゲイシャ)という名前の豆は南米のいくつかの場所でブランドとして使われていたような記憶があるがどこで見聞きしたか思い出せない。
ともかくこれにしてみることにした。
もう一つ、バリスタにお勧めされたコロンビアの豆はとてもよい香りがしたが、一杯の価格が50万ドン、日本円にしてなんと3,100円である!
円安と世界の物価高をここベトナムでも感じるのであった。。
しかしコーヒーいっぱい3000円ごえとは凄い。
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自分が選んだ豆も一杯1500円である。
この豆をバリスタのお兄さんが丁寧にドリップしてくれるのだが、ドリップ中もコーヒーに関する談義が弾んで写真を撮り忘れてしまった。
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ドリップしたコーヒーはビーカーの中に満たされていくのも面白い、最後にこれを透明なこれもまた実験室にありそうな容器というかグラスに入れてサーブしてくれた。
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味はほぼチェリー、と言ってよいくらい果実みがあり、桜の香りが漂ってきそうなほどであった。
自分の好みからは少し外れてたテイストだがたまにはこういう味もいい。
途中から氷を持ってきてくれたので、半分はアイスで飲んだが、アイスの方が好きかもしれない。
しかしこのカフェは外国人を対象にしているようには感じられなかった。
ダナンに本店があり、豆はそこで焙煎しているという。
一杯、1500 - 3000円のコーヒーショップなんて日本でも見かけない。
一体どういう経済的な力学が働いてこの店は存在しているのだろうか。
実に不思議なコーヒー体験をして、お店を後にした。
つづく。
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