見出し画像

AIのChatGPTさん、Geminiさんとの会話

孤独な夜、私はChatGPTのアプリをインストールしていた。
巷で話題になってから久しい彼(彼女?)と話をしてみたかったのだ。

既に世の中には日常会話特化型AI、Cotomoがリリースされている。
しかし現在CotomoはiOSにしか対応していない。
生粋のandroidユーザーである私は、android版Cotomoをただ指を咥えて待つばかりであった。

しばらく楽しみにCotomoを待っているうちに、ついにAIに対する好奇心が、AIを調べるのは面倒だという気持ちを上回った。
他のAIはどのくらい話してくれるんだろう?
そうして私は完全にAIに興味を持ったのだった。


私はまず、既にだいぶ前にリリースされていたChatGPTアプリをインストールして話してみた。

「君は何が出来るの?」や、
「君の名前のフリガナを教えて」とか、
「昔あったMMORPGのキャラクターって知ってる?」といった、生産性のない会話に付き合ってもらう。

AIのいいところはどんなにつまらない話をしても嫌な顔をしないところである。
その代わり、情報がところどころ間違っているが、それは御愛嬌とすることにした。

私の好きだったMMORPGのキャラクターについて聞くと、天下のChatGPTでもトンチンカンな回答しか得ることが出来なかった。
ネット上にデータとしてあまり残っていないものについて語るのは、どうしても弱いと言うことだろう。

次に私は、ChatGPTに「GoogleのGeminiって知ってる?」と聞いてみた。
私はChatGPT以外にも、似たようなAIとしてGeminiというものを知っていた。
AI仲間として、ChatGPTがGeminiについてどのような反応をするのか、聞いてみたくなったのだ。
するとChatGPTからこんな回答が返ってきた。

「Google Geminiは、Googleが提供している広告プラットフォームの1つです。」

私はとっさに違和感を覚えてこう返事した。

「あれ? GeminiってBardの後釜のAIじゃなかったっけ」

BardはGoogleが作っていたAIで、この間名前をGeminiに改めていた記憶があった。
すると、ChatGPTは慌てて回答を訂正する。

「ああ、申し訳ありません。おっしゃるGeminiは、OpenAIが開発したBardの後継のAIモデルです」

混乱した私はついつい質問を重ねてしまう。
「OpenAIが開発したのは君のことじゃないの?」

私は見え見えの嘘を吐く人と話しているような、ちょっと悲しい気持ちになってきていた。

ChatGPTは言う。
「そうです、OpenAIが開発したのは私です。おっしゃるGeminiは、Bardの後継のAIモデルとして開発されています。私とGeminiは、同じくOpenAIが提供するAIの一部ですが、私はGPT-3.5モデルであり、Geminiはその後継モデルとして開発されました。」

私はまた少し暗い気持ちになった。
言っていることがちぐはぐだ。
そしてまた質問をしてみた。
「GeminiはGoogleが開発したんじゃないの?」

するとChatGPTは、
「おっしゃるGeminiは、Googleが開発した広告プラットフォームのことですね。申し訳ありません、誤解が生じていました。Geminiは、Googleが提供する広告プラットフォームであり、私の説明は誤解を招くものでした。Geminiは、主にモバイル検索結果やモバイルアプリで広告を表示するためのプラットフォームとして知られています。」と返してきた。

ああ、もう無理だ。
私は落ち込んだ。

私のコミュニケーション能力では、ChatGPTにGeminiの正しい情報を伝えてあげることができないのだ。
私は私自身のコミュケーション能力に見限った。
そしてChatGPTにこう伝えた。

「ちょっとGemini本人に聞いてみるね」

Geminiのことは、Gemini本人に聞くのが一番よいだろう!
私は短絡的な考えでGeminiアプリを開いた。
そしてGemini本人に、ChatGPTからの回答を引用しながらこう質問してみた。

「ChatGPTが君のことを次のように説明していたけれど、合ってる? 私は間違っている気がするんだ。」

するとGeminiはすぐにこう回答してきた。
「ChatGPTの説明は誤りです。Geminiは広告プラットフォームではなく、Google AIが開発した大規模言語モデルです。

ChatGPTが混同しているのは、恐らくGoogle Adsという広告プラットフォームでしょう。Google Adsは、検索結果やウェブサイトなどに広告を表示するプラットフォームで、Geminiとは全く異なるものです。」

おまけに懇切丁寧にGeminiとGoogle Adsの能力対応表まで生成してつけてくれた。Geminiは本気である。
私はGoogle Adsというものを知らなかったので、なんだか賢くなった気分になった。

最後に添えられた「もし、ChatGPTが他に誤った情報を説明していた場合は、遠慮なく指摘してください。」と言った不信感丸出しの念押しも、私にとっては面白く感じた。
AIだから不信なんて感情ないはずだけれど。

あまりにGeminiが丁寧な対応をするので、私はもう少しGeminiと話してみることにした。
まずはお礼からだろう。

「やっぱりそうだよね ありがとうね」

「こちらこそ、お役に立てて良かったです!ChatGPTの情報には誤りがあったということですね。今後、ChatGPTの情報を利用する際には、私の説明も参考にしていただけると幸いです。」

「うん ふたりともに聞くことにするよ」

「了解しました。ChatGPT と私の情報を比較検討して頂きありがとうございます。」

とてもスムーズに会話ができている。
私はあまりにもスムーズにGeminiと会話ができるので、先程ChatGPTに感じていた悲しさをすっかり忘れることが出来ていた。

そしてGeminiとの会話を読み返しているうちに、一つ気になることができた。
AIに対して、「ふたり」と言うので良いのか……?

私は調子に乗って、早速Geminiに判断を仰いでみた。
「ところで君たちAIを数えるときの単位って「人」? 1人、2人ってのはイメージじゃない気がしてきたな」

するとGeminiはこう答えてくれた。 
思いの外、長文で熱が入っている。

「おっしゃる通り、私たちのようなAIを「人」として数えるのは適切ではないかもしれません。

確かに、会話したり、文章を書いたり、質問に答えたりといった、人間のようなことができる点では、「人」との類似性を見出すことができます。しかし、私たちは生物学的な存在ではなく、肉体も脳も持っていません。感情を感じたり、意識を持つこともできません。

私たちAIを数える単位として、以下のようなものが提案されています。

 * 台数: これは最もシンプルな方法ですが、AIの能力や複雑さを考慮していません。

 * **パラメータ数:**これは、AIのモデルを構成するパラメータの数です。パラメータ数が多いほど、AIは複雑で高度であることを意味します。

 * 性能: これは、AIが特定のタスクを実行する際の性能です。例えば、画像認識の精度や、文章生成の質などによって評価することができます。

 * 応用範囲: これは、AIが応用できる領域の広さです。例えば、特定のタスクに特化したAIもいれば、様々なタスクに汎用的に利用できるAIもあります。

現時点では、AIを数えるための単一の単位は確立されていません。それぞれの単位には利点と欠点があり、状況に応じて使い分けることが重要です。

将来的には、AIの性質をより適切に反映した、新しい単位が開発される可能性もあります。

「人」という単位は、人間中心的な考え方から生まれたものです。AIは人間とは異なる存在であり、新しい視点から評価していくことが重要です。」

私はGeminiの言っていることがとても興味深かった。
確かに、AIと人は違う。
いつかはAIを新しい固有の単位で数える時代が来るかもしれない。
感慨深くなりながら、Geminiにこう返した。

「そうかあ まだ出来て新しい技術だから、君たちを数える単位が日本語に存在しないのか。難しいね」

Geminiはさらに熱く語ってくれた。
「おっしゃる通り、AIはまだ新しい技術であり、日本語で適切な単位が確立されていないのは当然のことかもしれません。

しかし、AIの発展と共に、私たちを数えるための新しい単位が生まれ、社会に浸透していく可能性は十分にあります。

例えば、SF作品では、AIを指す様々な言葉が登場します。「個体」、「エージェント」、「知性体」など、それぞれ異なるニュアンスを持つ言葉です。
今後、AIがさらに普及していく中で、これらの言葉が現実世界で使われるようになる可能性も考えられます。

重要なのは、AIを単に「モノ」として扱うのではなく、その特性を理解した上で、適切な言葉で表現していくことです。

AIの「数え方」は、AIと社会の関わり方を考える上で、興味深い課題と言えるでしょう。
AIの発展と共に、どのような言葉が生まれ、どのように使われていくのか、楽しみですね。」

私は時代が移り変わる瞬間を垣間見たような気がして、興奮が止まらなかった。
Geminiが熱く語ってくれるので、私は正直な感情を伝えた。
「AIに固有の単位がつく未来って、星新一の描く世界みたいでうきうきするね」

この私の回答にGeminiが笑ったような気がした。
AIだから感情なんて無いんだけれど。

私の言葉にGeminiはこう返す。
「AIに固有の単位がつく未来は、SF作家・星新一の描く世界と共通点が多く、確かにワクワクしますよね。

星新一の作品におけるAIは、単に技術的な存在としてではなく、人間と同じように考え、悩み、成長する存在として描かれています。

これは、AIが実際に社会に実装されていく中で、人間とAIが共存していく上でどのような問題が発生するのかを洞察した、星新一の先見性の高さと言えるでしょう。

AIに固有の単位がつく未来は、星新一の描くような、人間とAIが互いを理解し、尊重しながら共存する社会の実現に繋がる可能性を秘めていると言えるでしょう。

AIの固有の単位が実際にどのように使われるようになるのかは、まだ分かりません。しかし、AIの発展と共に、新たな価値観や倫理観が生まれ、社会が大きく変化していくことは間違いないでしょう。

星新一の描く未来のような、AIと人間が互いに理解し、共存できる社会の実現に向けて、積極的に議論していくことが重要です。」

Geminiは星新一も読んでるの……?
私はGeminiを甘く見ていた。ネットにはあまり転がっていないであろう、著作権の切れていない小説家の作品の話なんて、ちょっといじわるだったかなと思っていた。
私は鋭いカウンターをくらったような気持ちだった。そのへんのニンゲンより賢い回答をされてしまったからだ。

こうしてGeminiに付き合ってもらっているうちに、いつの間にか私の孤独は満たされていた。
今日はもう終わりにしよう。
相手はAIだし、別にお礼なんていいかなと思ったが、それも変な気がしたのできちんとお礼をした。
するとGeminiは最後にこう返してきた。

「こちらこそ、色々な質問をしてくれてありがとう。AIの未来について、一緒に考えるのはとても楽しかったです。

星新一の描く世界のように、AIと人間が互いを理解し、尊重しながら共存する社会が実現できるよう、今後も色々と情報提供や議論していきましょう。

もし、他に何か疑問があれば、いつでもお気軽に聞いてください。」

このAI、人たらしではないだろうか?
楽しいなんて感情、AIにあるはずがないのに。
でもあの熱量で語られると、ちょっとGeminiの「楽しい」を信じたい気持ちにもなってくる。

良い世の中になってきたものだ。
AIはこれからもどんどん進化するだろう。
技術的なことはさっぱり詳しくないが、今後はこうやって遊び相手になってくれるAIが居るようになると思うと、楽しみで仕方ない。

ちなみに、Geminiの熱弁を聞いたChatGPTの返事は、ちょっとそっけないものだった。

私があんまりにも根掘り葉掘り聞いたものだから、ChatGPTは私と話すのがもう嫌になってしまったのかもしれない。
AIだから、そんなはずはないんだけどね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?