民間経験者が考える、地方公務員のイメージと現実とのギャップ3選
インターネットやSNSを見ると、公務員を辞めた立場からの発信が目につく。そして、その発信の内容は決まってネガティブな部類の方。
noteにおいても例外ではない。
前職で某民間大企業に勤務していた私から言わせてもらえば、民間でも理不尽なことは山のようにあった。敢えてこの場を借りて「公務員」という特定の職業を貶めるつもりはないし、その行為自体にも私は違和感を感じてしまう。
ただその一方で、公務員から一般的に連想されるイメージと現実の間には、結構なギャップがあるということもまた事実だ。
元民間企業の営業畑
親族に公務員なし
転職するまで公務員の友人もなし
将来の夢が公務員だったことは一度もなし
公務員試験予備校に通ったこともなし
そんな立場から転職した私が、地方公務員のイメージと現実について考えてみたら、少々意外な結論に着地したのでこのまま進めることにする。
なお、あくまで専門職種ではない、一般事務職の立場からの意見であることを冒頭に断っておきたい。
①やりたい仕事が明確にありすぎる→逆に苦しい
何で?と思われるかもしれない。
「入社後にやりたい仕事は何ですか?」就活の面接におけるよくある質問の王道だからこそ、余計に。
就活用に答えを用意しておくことは一向に構わないのだ。しかしそれが地方公務員の場合、やりたい仕事にあまりこだわりすぎない方が良い。なぜか。
地方公務員の世界には定期的な人事異動がつきもの。例え皆が羨む「花形部署」に配属されたとして、ずっとその部署に居られる保証はどこにもないからだ。せいぜい3〜4年程度といったところだろうか。
自分のやりたい仕事が明確にある人ほど、配属先(異動先)と自分の理想との激しい落差に苦しんでしまう。
行き着く先は最悪の場合、休職か退職か…ということにもなりかねない(実際、複数そのような事例を見聞きしてきた)。
ところで、公務員における花形部署とは何なのだろう。財政か、広報か、人事か。あるいは産業や観光などのイベント系の部署だろうか。
だとしたら、私はそのような部署に居たことはただの一度もない。
私が新採の立場で配置されたのは生活保護課だった。希望部署ではないし、全庁的に見れば不人気部署の代表かもしれない。今時の若者なら「配属ガチャに外れた」「左遷部署」と嘆きそうだ。
けれども、振り返れば決して大変なだけではない数年間だった。何より、一緒に働く同僚や先輩に恵まれた。そしてこのことは次の章にも関連する。
②事務=黙々と自席で仕事、ではない
地方公務員になって驚いたことの一つに、コミュニケーションで成り立つ仕事が予想以上に多いことが挙げられる。
それは対市民だけを想定している訳ではない。係内の同僚や上司、関係所管、市議会議員などなど、内部の人間とのコミュニケーションが非常に重要になる。
職種上の区分が事務ということもあり、公務員は黙々とデスクワークしている印象があった。
(詳しい仕事内容は割愛するが)確かに私の現在の部署の仕事はほぼデスクワークだ。しかしそれでも毎日のように担当所管には電話しているし、職場の内外でヒアリングする機会も多い。何より、係内の職員の連携が非常に大事だ。
新採でケースワーカーとして働いていた生活保護課では、日々のコミュニケーションそのものが仕事というような状況だった。
窓口でコミュニケーション
電話口でもコミュニケーション
家庭訪問先でもコミュニケーション(年数回の生活保護受給者の自宅訪問は担当ケースワーカーの欠かせない仕事の一つだ)
ケースカンファレンスに出席してコミュニケーション(担当ケースワーカーとしての意見を求められる場面も多々ある)
同じ係の上司先輩、同期とのコミュニケーション(自らの精神衛生を保つためにはこれが最も大事かもしれない)
民間企業では考えにくいことかもしれないが、みっちり研修を受ける間もなく即現場に放り込まれ、仕事のノウハウはほぼOJT頼み。これが公務員の現実だ。私も例外ではない。
おまけに生活保護という分野は他法他施策の原則ゆえ、医療介護年金、不動産や保険などの資産活用、就労や子ども関連の支援までとにかくカバーする範囲が広い。
私はこれまで社会福祉の勉強をまるでしておらず、配属当初は毎日のように知識不足を突きつけられた。生活保護手帳や運用事例集(いずれもケースワーカー必携のバイブルだ)を前に、うんうんと唸る日々が続いた。はっきり言って、まるで使い物にならなかった。
そんな場面で何より大事なのは職場内でのコミュニケーション。振り返ればこれにより乗り切れた場面は数多く、私は本当に人に恵まれた(二回目)。
ということで、人と話さずに黙々と仕事したい、人とのコミュニケーションが無理、という方をたまに見かけるが、そういう人にとっては恐らくこの職業は苦痛でしかないと思う。
③ワークライフバランスのとれた生活→部署による
安定した身分、福利厚生の手厚さ、ワークライフバランス。こういったことを期待して公務員を目指す人が少なからずいることは承知している。
定時で帰れる。有給休暇が自由に取れる。公務員に対してそのような印象を持つ人は未だにいるらしい。
しかしながら、それらの希望が叶うかどうかは配属部署次第なところが非常に大きい。
更に言うと、公務員の数は減っているが、市民ニーズの多様化や複雑化により、業務は増える一方だ。
その一端はかつて記事にした通りだ。
私は幼児を育てる身だが、繁忙期は休日に出勤しないと業務が終わらないこともザラで、先月の残業時間も30時間ほど(これでも部署内ではかなり少ない方だ)。
少数部署ということもあるが、私をマミートラックに乗せられるだけの余力は職場にはなく、また他律的業務(下記引用参照)の比重が多いこともあり、正直なところなかなか楽にはならないというのが本音だ。
1年で時短勤務を解除してフルタイムにした大きな理由は、時短の身分ではどれだけ昼休憩返上で働いてもシンプルに仕事が終わらなかったからだ。
部署が違えば今でも私は時短勤務を続けていたかもしれないが、こればかりは分からない。
そんな訳で、ワークライフバランス実現のため「だけ」に公務員の仕事を選ぶことはあまりおすすめできない。
【個人の意見】最初から公務員「だけ」を目指さなくても良いのでは
この業界には、公務員になることだけを考え、そのための勉強だけをして、学校を卒業してすぐ公務員になったような、公務員以外の選択肢がまるで眼中になかったタイプの人達が一定数いる。
そのような人達と話すと、時に危うさを感じることがある。そしてそういう人ほどイメージと現実とのギャップの大きさに、就職してから「こんなはずじゃなかった」などということになりかねない。そうなってはお互いにとって不幸になるだけだ。
夢のない言い方に聞こえるかも知れないが、イメージと現実のギャップを知って落ち込むくらいなら、最初からあまり多くを期待しすぎない方が良いのかもしれない。
なお、公務員としての勤続年数が前職の在籍年数を上回った私の実感としては、そこまで公務員の仕事は悪くない。
恐らく、性に合っているのだと思う。
もし私からのアドバイスがあるとするなら、初めから絶対に絶対に公務員!と決めつけなくても良いんじゃないか、ということだ。
私がそうだったように、今は社会人採用枠など、中途で公務員になれる道が確実に広がっている。なろうと思えば、そして相応の対策をすれば、途中からでも転職は十分に可能だと思う。
最後にちょっとした余談を。
ここまで書いて思い出したのだが、以前ストレングスファインダーという自己分析ツールで自分の上位資質5つを診断した結果がこちらだ。
ストレングスファインダーを受けたのはごく最近のことだが、つくづく自分の前職=営業に向いていないことが再確認できた。
そんな訳で、隣の芝生が一時的に青く見えることがあっても、しばらくは今の仕事で微力を尽くしたいと思う。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?