徳川美術館と名古屋市博物館

企画展の感想です。

1)徳川美術館
「企画展 徳川文房博」※会期終了

キャッチが「世界に誇る文房具コレクション」です。尾張徳川家に伝わる文房具の展示でした。ちょっと記憶が薄れかけており、曖昧なところもありますがすみません……。
・そもそも「文房」とは貴人のプライベートルーム(部屋)を指すもので、その部屋で使われていた酒器を含む様々な雑貨を文房具と呼んだそうです。
・固形墨のコレクションが充実してました。墨ですよ墨。硯でするやつです。つまり消耗品です。消耗品なのにこまかーい絵が彫ってあったりします。こういうのをコレクションして仲間内で「すごいよねー見事だよねー」ってお互いに見せびらかしたりしていたそうですが、今のちょっとお高かったり面白かったりする文房具の扱いとあんまり変わらんなと思いました。もったいなくて使えない、ってやつ。日本人、昔から変わらん。
・その固形墨ですが油性だということを初めて知りました。「墨は布につくと落ちにくい」ってそういうこと?
・どうやって使うのこれ、というぶっとい筆もありました。どれくらいの太さかというとアルトリコーダーくらいありました。
・家光の長女千代姫の婚礼道具のひとつの文房具セットもありました。金などを贅沢に使いきらびやか〜です。もちろん「お姫様の婚礼道具なので! 豪華絢爛に!」というアレもあるでしょうが、万が一の際(離縁とか財政破綻とか……)の貯えの役目もあるのかな?と思いました。これは単なる想像です。

徳川美術館、NHK大河の影響で混雑しているのでは……と思っていましたが、平日の真昼間は今のところ通常通りの人出です。

2)名古屋市博物館
「企画展 戦前を生きる」〜3月5日(日)まで

収蔵品メインのこぢんまりした企画展です。太平洋戦争前から戦中の、主に市井の人が持っていらした品の展示です。

個人的に印象に残っているのが軍事郵便の展示です。パネルを要約すると、
「もともとは軍の機密が漏れるのを防ぐための制度だったが、次第に『士気が下がるような心情の告白』にまで不許可が及ぶようになった。お互いに書く内容を忖度し合い、本音や思いは行間から読み取らなければならなくなった」。想像できますね……。

絶筆のハガキにはびっしりとした字で(何せハガキ1枚に「最後に伝えたいこと」を全て書かなければいけない)、
「両親初め妹や子供等に何でも良いから買って暖かい物でも着せて下さい」
「両親にも宜敷頼む」
子供の教育のこと、近所の人たちへ、町役場や在郷軍人、友人へ……と「二度と会えない人たち」への宜敷(よろしく)というお願いが書き連ねてありました。

もうひとつ印象的だったのが慰問袋。
「戦地にある出征兵士などを慰め、その不便をなくし、士気を鼓舞するために、中に日用品などを入れて送った袋である。」wikiより
ふんわりとした知識で「家族や知人などの顔見知りに送るもの」だと思っていたのですが、どうもそれだけじゃなく、グループや個人が顔見知りでない兵士にも送っていたようです。慰問袋のお礼の手紙の展示もありました。

この慰問袋の展示を見て、ふと「日本人、被災地などにモノを送りがち問題の根幹はここにあるのでは」と思いました。なぜか「モノ」を送ろうとする。現代において「カネがあっても何一つモノが手に入らない」なんて場所はほぼないです。被災地や戦地にはカネを送りましょう。カネを送れば現地に到達できるNPOが必要物資を届けてくれます。

全体的に地味〜な展示ではありますが、もしかしたら(というかほぼ確実に)今が戦前になるかもしれないので、今とこれからのことを考えられる良い企画展だなと思いました。

ちなみに名古屋市博物館、大改修が始まります!!!
(ということを企画展に行く直前に初めて知りました)
2023年度から休館、2026年度に一部開館、2029年度に新館を含め全面開館だそうです。
「大改修後は、展示空間が拡張され、マンガやアニメ、映画などの現代的なジャンルも取り入れる「時事展示室(仮称)」が新設される予定だ。入場者の多くが利用していた市民ギャラリーは、新設の東館に入る。」だそうです(なぜ急ぐ? 「名古屋市博物館」の大改修 あわただしい計画に「抜本的な見直しを」の声も Yahoo!ニュース THE PAGEより)。記事では「改修費、高くね?」と疑問視されていますが、それはそれとして、リニューアル後の展示に超期待です。

しばらくは入館不可となりますので、今の名古屋市博物館を体感しておくといった意味でもぜひ足を運んでみてください。

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