見出し画像

【詩のようなもの6編】 変身は言葉から


【変身は言葉から】

言葉を変える
キャラクターになりきる
最初は炭酸のように鼻にくる
気づけばそれを好んでいる
私は私だと言うようになっている
人はそれに物語を見出している
そしてまた言葉を探し続けている

【ゴミ袋】

ゴミ袋の中身見てみると思う
いつもの自分が昔の自分になっていること
好きな食べ物 よく使う消耗品
趣味のものから未来で使うはずだったもの
微々たる変化ではあるけれど
よく見ると古典の本が増えていたり
会う人が変わっていたり
夏を迎えるのが何回目なのか
分からなくなっている自分が面白いと感じ
ゴミ袋を縛り朝のゴミ出しへ

【予熱】

下へ下へ 秘めた熱が予熱になる
隠しきれない情熱 僕もあなたも一緒
何処に向かうか 入れた手が合うかどうか
ただそれだけの話

明け透けと話すにはまだ時間が必要
上へ上へ 昇る煙が怖いだけ
一緒なら居心地良い空模様な筈

冷まし過ぎないように秘め続けよう
熱し過ぎないように保ち続けよう
バランス取りながら

【歌と羨み】

「歌は世につれ世は歌につれ」
今自分が歌いたい歌は何だっけ?
慌てて焦って思い出してみるけど
好きなのはやっぱりあの頃の歌ばかり
開き直ってそれでいいやと思いながら
新しい歌を歌う子供たちが羨ましかったりする
彼らが追いつかない位置にいながら
僕らが追いつけない位置にいながら
羨み続けている

【間がな隙がな】

“魚の目に水見えず”
生じた誤解と誤解の狭間を揺れ游ぐ

“徒花に実は生えない”
先例のない荒野と路傍の区間で悩み抜く

“好いた事はせぬが損”
過去の自分と未来の自分の間隙を縫う

“世間知らずの高枕”
情けない今の自分に寄せては返す
“人間一生四万日”

耳が痛い現実が刺さりながら
馴染み深い慣用句に浸る今日

【定規と刀】

刀のように携帯する見えない定規

とはいえ万物の尺度を図れる人は少なく
見かけによらぬ人が咫尺の間になるから
誤魔化しが効く術を互いに掛けながら
欠けた部分を補い合う世界の始まり

持っていた刀が少しずつ短くなっている
見えない定規が少しずつ伸びている

無知の知を気付く咫尺万里

この記事が参加している募集