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腹痛の原因がふたつみっつある

#タイトルが自由律俳句  

高校生の頃、通学のために毎日電車に乗っていた。田舎なので、電車をひとつ逃してしまうと、30分待たなければならなかった。駅で電車を待つという時間を、人生で一番過ごしていた時期だ。その際、腹痛が同行している場合がある。腹痛は私にピッタリと寄り添う。

私は困ってしまう。駅にはベンチがあったので座る。けれど、本当は横になりたい。横になると痛みが収まることを知っていたからだ。しかし、あの頃は特に、目立つのが嫌だった。あの時期特有の、平凡で過剰な自意識を持っていた。駅なんかで寝ていては、ホームレスだと思われるかもしれない。ベンチに腰を掛けたまま下を向き、なんとなく駅のホームの床がグレーであることを見ていた。

ただ幸運なことに、その頃の私は今ほど幸福を目指していなかった。視野が狭く頭も悪いので幸福が何だか知らない。だから、ホームの床のコンクリートの色がグレーであっても、『あぁ、なぜいつも私はこんなに苦しいのだろう』、なんて思わなかった。

いたた、いたた、電車まだかな。


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