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実態把握とは

実態把握とは一体何なのでしょうか。指導や支援が成功するかどうかは、子どもの実態把握がどの程度正しくできているのかによるといわれています。それほど重要な実態把握について、個別に取り上げて、少し詳しく考えてみたいと思います。

★ 実態把握と服のサイズを測ること ★
 実態把握とは、服のサイズを測ることととても似ています。どこが似ているかと言うと、丁度の服は着心地が良く、やる気になる。だけれども、大き目の服は、余計な部分が邪魔をして、とっても動きにくいし、気が抜ける。小さな服は窮屈で、これもまた動きにくいし、がんじがらめな気分で気持ちも強張る。どうでしょう。イメージがつきましたか?「ホントは着れるはず!(できるはず!)」は子どもにとって大迷惑なのです。その子に合った服を見立ててあげましょう。それがいわゆる実態把握の基本です。


★ どこを、実態把握するか ★
 では、子どものどこを把握したらよいのでしょうか?…答えは簡単。「ありとあらゆる側面」を把握したらいいのです。何も難しいことではありません。言い換えれば、「子どもを創りあげる・取り巻くあらゆる構成要素」「子どもに関わるなんでもかんでも」を集めてみるのです。そうすることで、こどものサイズが分かってきます。具体的には以下のような内容になります。他にもたくさんありますので、考えてみてください。
Ex.発達段階、発達の偏り、障害に対する理解、性格傾向、気質、興味関心、好き嫌い、得意不得意…


★ 実態把握の仕方、いろいろ ★
 では、どうやって実態把握をしたらよいでしょうか。それには大きく分けて3つのやり方があります。

 ①書類あるいは聞き取りからの情報収集
 ②行動観察からの情報収集
 ③「標準化」されたテストからの情報収集

③については、主に専門家が行いますので、私たちには直接関わってはこないかもしれません。①にある書類という形式で私たちに伝わってくることが多いでしょう。ですから、私たちが行う実態把握は①と②の形式に焦点化されます。


では、①による実態把握にはどのような内容があげられるでしょう?例えば、知的発達の段階、障害種別、コミュニケーション、興味関心、好き嫌い、家族構成…などがあげられます。
②による実態把握では、呼びかけに対する反応、身体の動かし方、描画の様子、遊びの様子、言葉の発し方、表情、視線の使い方…などがあげることができます。

ついでに③による実態把握についても考えてみましょう。テストというのは「標準化」されており、「限界」があるものが多いです。ですから、テストを行うときは、何を測定しているのか理解してテストを選びます。大抵の場合、複数のテストを組み合わせて実施します。数としては3~4つ組み合わせることが多いです。

しかし、先にも述べたように、テストには「限界」があります。ある側面については比較的正確に、裏づけのある結果が導き出されるのですが、それ以外の情報はうまく引き出せなかったり、測定できないことがほとんどです。なので、もちろんテストだけでは子どもの実態把握はできません。

そこで、このテストの穴を埋めるのが①と②の実態把握になるわけです。

子どもの実態把握は、「その子をとりまく何でも」について情報収集をして、「その子にあったサイズ」の支援や指導をする材料となることを目的としています。なので、①、②、③のどれが欠けても情報としては足りなくなってしまいますし、情報が足りなければそれだけ、サイズの合わないものを提供しなくてはならなくなってしまいます。

また、発達全般を測定するのは、幼児や小学生が中心です。この時期の子ども達に対しては、発達検査や心理検査から導かれる所見(結果)を比較的大切にしますし、そこを基盤としてその他の情報を収集したり、指導・支援を考えたりします。
ですが、中高生以上になると、発達検査や心理検査の所見が中心というよりも、検査では数値化できない日常の姿をクローズアップしたりします。それは、やはり彼らは小さな子どもたちと異なり、長い年月を経てきているわけですから、その中で得てきたこと、学んできたことについても見ていくべきだからです。

ヒトの発達は全てが数値化されるものではありませんし、何かの道順に沿って進むだけのものではありません。順序よく発達することのほうが稀で、様々な要因に左右されながら、常に未知数の変化を見せるものです。発達は、理論では説明しきれない現象の方が多いんですから!

ですから、日常生活の中の姿、彼らが生きている姿の部分々を切り取りながら、その子を少しずつ知っていくこと—それこそが、子どもの実態把握であり、サイズに見合った支援や指導を提供することのできる必要不可欠なかかわりなのです。
もちろん標準化されたテストも必要ではありますが、それだけではなく、しかし、それも考慮に入れた裏づけのある子どもの「実態」を「把握」できるよう、私たちは努めていきたいものですね。


実態把握は、「良い加減」のさじ加減をするための貴重な情報源です。
お互いが楽になるように、有効な実態把握をしていくことを目標としましょう。

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