見出し画像

うっかり差別を避ける初対面会話術

1.はじめに

私の住んでいるドイツは多様性社会だ。私自身、非ドイツ人、非ヨーロッパ人として差別的な扱うを受けることもあるし、自分の出身を忘れるくらい受け入れてもらえることも多い

そんな日常の中でもっといろんな人種の人々が心地よく一緒にいられるコミュニケーションの仕方はないかと考えることがある。

ドイツでもここ最近は差別に反対する声が上がったり、差別に関する本が多く出版され、企業に対する批判もツイッターで拡散されまくっている。今後、どの国もきっと異文化に対するセンシビリティーを研ぎ澄ませなければいけない社会になっていくだろう。そんなわけで、自分の経験とふと妄想したアイデアを組み合わせて、初対面のシーンに限りちょっとした提案をさせてもらいたい。

ちなみに、実はタイトルに使った「術」って言葉は好きではない。どんな問題もテクニックさえ習得すれば解決できるような錯覚を与えるから。テクニックはあくまでも助けの一つでしかない。大事なのは心の姿勢だ。それがないならテクニックだけ使っても効果はない。なので以下の提案は相手のことを理解したい、オープンでいたい、という心の姿勢がある場合に役立つものとして読んでいただけたらと思う。

2.お決まりのやりとり

ドイツに来て始めの7年ほど(現在11年目)、もう寝たままでも繰り返せるくらい紋切り型のスモールトークを繰り返してきた。

相手「どこから来たの?」
私「日本」
相手「いつ来たの?」
私「2010年」
相手「へーそれにしてはドイツ語上手いね」
私「ありがとう。」
相手「何で来たの?」
私「(ここで履歴書を丸暗記したようなお決まりの説明)」
相手「へー。ところで、日本ってさ、SUSHIやっぱり食べるの?
私「(出たー!もうSUSHIはいいよ!)うーん、まあね」

もちろんこれは初対面の会話という特殊なシチュエーションだ。それでも実際に500回位繰り返すと、さすがにウンザリしてくる(もちろん、私も自分で話を違う方向へ向けるなど試行錯誤したが、相手によっては結局SUSHIの話に戻ることも多かった)。

滞在歴が長くなるにつれ、もっと幅のある初対面の会話も数々経験した。そこで、私なりに自分とは異なる文化圏から来る人との初対面を活性化させるアイデアを考えた。

3.ありきたりを避ける異文化コミュニケーション 

■よく聞かれるだろうことは敢えて「一切」テーマにしない

上の例に書いたような質問を一切しないというシンプルな方法。でも知りたいじゃない?という場合でも質疑応答形式で聞き出す必要はないはず。会話が発展していけば自然に話の流れでわかる。その日に知りたいことが知れなかったとしたら、またその人と会う理由ができたと思うことにしよう。

■相手をカテゴリー入れしない変化球から始める

例えば「そのピアスめっちゃかわいい!どこで買ったの?!」など。これは人種も肌の色も関係ない(逆にあまりにも女性っぽすぎる会話だが)。相手をあまりジロジロ観察するのも失礼だが、持ち物とかで何かしら会話のきっかけになるものがあるはず。それを探してみよう。

この変化球での注意点は相手の外見(髪や肌の色、スタイル、目の色など)をテーマにしないこと。褒めるのもおススメしない

個人的な経験だが、アジア人はヨーロッパでは若く見られる為、新しい人と知り合うと私の年齢と見た目のギャップが必ず一度はテーマになった。周りは褒め言葉で言ってくれてれたのだが、私にとっては褒め言葉じゃなかった。というのも、ヨーロッパでは「若く見える」とか「歳相応に見えない」のは「成熟していない」という風にも捉えられ、必ずしもポジティブというわけではないからだ。このように相手が何を褒め言葉として取るかはまるで未知であるため要注意!

■どうしても変化球が見つからない場合の逃げ道

あれやこれやとタブーがあって、もう何を言ったらいいのかわからない!という場合は、ありきたり会話を始める前に一言だけ付け加えるのがオススメ。

「もう何万回も聞かれてウンザリだと思うけど…」

これを言うと相手はだいたいニヤリとする。この時回数を大げさにするとユーモアが出て良い。これは確実にアイスブレーカーになる。

もしくは自分の不安とかをそのまま正直に口にしてしまうのも効果大。

「私日本人に囲まれて育ってきたから慣れてなくて、失礼なこと言っちゃったらごめん!先に謝っておくわ。」

相手もこちらのバックグラウンドがわかって誤解したりせず済むので、まさにWin-Win。

4.おわりに

皆様は次の実験をご存じだろうか。


初対面の2人が4分間何も言わずに目と目と見つめ合うというもの。

実際にやってみるとわかるが、4分は恐ろしく長い。でも、圧巻される、言葉を介さない人間同士のつながりみたいなものに

この実験が示してくれるのは、私たち人間に宿っているただ単純に「一人の人間」として見てもらいたいという想いだ。見た目の印象や言葉というツールが時として人間同士の真のコミュニケーションを逆に妨げているのかもしれないと思わせるほどである。

今回はここまで。お付き合いくださりありがとうございます。皆様の次の出会いが素敵なものになりますように。

サポートをよろしくお願いします。頂戴したサポートは、より面白い記事が書けるように、皆様のお役に立てるようになるため、主に本の費用に当てさせていただきます。