自立とは何かを考えさせられる本【サクッとわかるビジネス教養地政学】本紹介.1
この記事で紹介する本
タイトル:サクッとわかるビジネス教養地政学
初版発行:2020年6月25日(内容に2022年のウクライナ戦争に触れた箇所があり版を重ね加筆されている)
著者(監修者):奥山真司
発行所:新星出版社
【サクッとわかるビジネス教養地政学】の概略
以上のように地理的条件という一点から客観的に世界情勢を眺め、
各国の活動の本質を紐解こうというのが地政学という学問。
最初に地政学の基本的な概念をざっと解説した後に、
実際の各国の動きを歴史や現代の実情を元に、
わかりやすく図解で解説されています。
世界情勢に興味がある人はもちろんのこと、
日常のニュースからより多くの情報を得たい、
なるべく先入観のない客観的な情報がほしい。
そういう場合は情報に対する解像度が上がりより多くのものを読み取れる、
真偽を見極めるための基礎力を身につけられると思います。
【サクッとわかるビジネス教養地政学】から学んだこと
お話したようにこの本は世界情勢を客観的に把握するのに役立つ、
ですがその一方で締めとして以下のような言葉があるように、
日本人的な感覚からすると受け入れがたいものの見方であるように思う。
しかし、後にこのように続きます。
個人的に世界情勢について興味があろうがなかろうが、
この言葉から誰もが学ぶべきことがあると思う。
現実と理想は違うことに自覚的になるということです。
日本はとかく現実的な視点というものが欠けているように思う、
とにかく理想論、べき論で物事を考える傾向が特に権力者に多い。
例えば一番わかりやすいのが日本国憲法9条理論。
一切の武力に頼らずあらゆることに調和する姿勢を見せ手を差し伸べれば、
相手もまたその心意気を汲み取って同じように手を差し伸べてくれる。
平和が実現するという理論ですが2022年勃発のロシア-ウクライナ戦争、
ロシアが自国の利益を守るために自国を正当化する主張を掲げ、
ウクライナに攻め入ったという事実から地政学などわからずとも。
こちらが手を差し伸べたからといって相手がそれを取るとは限らない、
自国の利益のために他国の利益を時に武力で侵害する国家が存在する。
ロシアにどれだけ正当性や言い分があったとしても、
その事実だけは誰にも否定できない客観的なものとして、
世界中に知れ渡ってしまいもはやそれ以前には戻れなくなった。
そして、この動きを受けて世界各国は軒並みグローバリズム、
世界全体を1つの市場と見立てて取引を自由化するという、
安定して平和である時のみ成立する考え方を捨てた。
アメリカが顕著ですが外に広げていた生産力を自国に戻し始め、
輸入などにも制限をかけまず自国で自国の足元を固める、
いわゆるナショナリズムに基づいた方向性に舵を切った。
他の国も大なり小なりそういう方向性に傾いてるように思う、
そんな中で今だに無条件の調和論、グローバリズム的価値観、
理想に基づいた価値観に偏っている人が大半なのが日本です。
政治家や世界を市場に見立てて利益を得ていた大企業上層部は特に顕著で、
全体的にお上に従順な国民性によってそれを受け入れてしまう。
現代はネットの発達で得ようと思えば真偽のほどは見極める必要があれど、
誰であれ安価で容易に情報を得ることが容易な時代。
にも関わらずなぜ日本は価値観が理想に傾いたままなのか?
端的に言えば運が良かったからだと思っています。
ビジネス教養地政学の中でもお話されてますが日本は世界最古の国、
2700年もの間、島国という地理的条件によって外圧が少ない状態で、
独自の歴史を紡ぐことが可能であった。
これもまた書かれていますが日本が江戸時代前より、
他国との戦争状態に突入した回数は残っている記録等から、
わずか3回しかなかったのです。
それが覆ったのが江戸時代以降、技術等の進歩により海が攻略され、
否応なく世界情勢に組み込まれるようになってから。
そして、最終的には第二次世界大戦において日本は敗北する、
敗戦国となり戦勝国によって歴史上起こってきたように、
完全に蹂躙されてもおかしくない状況に陥った。
だけどそうはならなかった。
その状況に抗おうと多くの日本人が心身を砕いてくれたのはもちろん、
戦勝国側の2大国、アメリカと旧ソ連の冷戦勃発によって、
日本を完全に無力化し統治することに労力を割く場合。
逆に日本を取り込んで共同してソ連との冷戦に臨むことを天秤にかけ、
後者を選んだアメリカの庇護により日本は再び世界情勢に煩わされず、
思想の断絶はあれど比較的のびのびと経済成長することが可能だった。
ようは、日本は日本という存在として日本という国の現実の中で、
現実を守るという意識なくその長い歴史を刻み続けてきたのです。
そのため日本には現実的な争いというものがなかった、
正確に言えば遠い昔にはあったのでしょうが、
直近で言えばほとんどないに等しかった。
日本という現実は1つの確固たる軸としてすでに定まっていて、
それを脅かす外圧は長きにわたり存在しなかったのです。
故に、近年の日本国内における争いとは現実を勝ち取る争いではなく、
より良い現実へと飛躍するための理想を追求するものだった。
そう捉えられると思います。
逆に、日本以外の国はその歴史の大半が他国との争い、
つまりは現実同士の争いの連続だった。
敗けて取り込まれればそれまでの現実は全て崩れ去り、
新たな現実の中で生きることを余儀なくされる状況の中、
まず必要だったのは現実を確固としたものにするための努力。
外圧に屈しない強固な現実を生み出すための思想であり、
その1つがつまりは地政学という学問でもある。
地理的に自国と他国の相対的なパワーバランスを見た時、
自国を守るうえでどのように考えるべきかということであり、
そこに理想論が挟まる余地はないのですね。
そうなれば良いではなくそうなければならないという必要性を満たすため、
どこまでも現実的に必要な物事を追求しなければならなかった。
それを殺伐とした冷たい考え方だと日本人が思えるのは、
日本という国が地政学的にとにかく恵まれていて、
かつ時世、運にも恵まれ現実を脅かされる状況が少なかったからです。
しかし、先にお話したように技術等の発展によって、
日本も世界情勢の中に組み込まれることを余儀なくされた。
他の国と同じようにまず現実を強固にする努力を要するようになった、
ですがこれまでに積み重ねられた確固とした現実の元に、
理想を追求する思想傾向がそれを邪魔しているところがある。
現実を掴み取る努力せず理想だけを声高に叫び追い求め続ける、
だけどそれは言うなれば子供と同じなんですよ。
地理的条件やアメリカの庇護の元で現実を見ることなく、
理想だけを定め追求する日本という国の有様は、
世界の国家から見ればまさしく子供でしかない。
国際関係アナリストとして活動されている北野幸伯さんという方が、
日本はまず国家として自立する必要がありそのために、
国民1人1人が自立する必要があるという考え方を提唱されてる。
自立とは何かと考えた時それは親など誰かの庇護のもとから離れて、
自らで現実を掴み取りそしてより良い理想を追い求める生き方だと思う。
そう定義するなら日本という国は今だに理想の中にあり現実を見ず、
その風土に強く影響される日本人も世界から見れば、
全体的には子供と同じようにしか見えないのかもしれません。
しかし、もはや日本は子供ではいられない。
地理的性質はもはや日本を守ってくれることはない、
アメリカは中国等の台頭や国内状況の混乱により、
相対的に世界におけるパワーを失いはじめている。
そういう世界の現実の中で日本という現実を守ることができるのか、
それとも理想を見たまま、子供のまま抜け出すことができないのか。
それについては色々な意見がある。
良い方向に進んでいるとポジティブな考えを持つ人もいれば、
絶望的な状況だとネガティブな意見を持つ人もいるでしょう。
それはそれで構わないと思いますが1つだけ言えるのは、
そういう現実を見たうえでその現実を守るために、
必要なことを考えそれを実践するという意識を持つこと。
これは世界情勢とか抜きに個人がより良い人生を歩む上でも、
必要となる考え方だなと思う。
サクッとわかるビジネス教養地政学からはそういう理想と現実、
そのバランスをどう取るかに役立つことを学ばせてもらいました。
では、今回はここまでです。
ありがとうございました。
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