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土曜の夜、酒蔵コンサートに酔いしれる。

ボイスレコーダーのデータを整理していたら、1年ほど前に取材したある音源を見つけた。

北九州市にある「旧岩田酒店」は大正時代に建てられた個人住宅。市の有形文化財に指定されている。ここの家主でもあるテノール歌手・岩田もといさんを取材させていただいた。土曜の夜だけ、この場所でひっそりと行われている酒蔵コンサートを聞いてみたくて。

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季節は冬。会場は昔酒蔵として使われていた場所で、趣のある雰囲気を醸し出していた。とても静かで、聞こえるのは、ちりちりというストーブの音だけ。演奏用のピアノと、そこから2メートルも満たない距離に、観客用のパイプ椅子とひざ掛けが置かれていた。

コンサートが始まる1時間前、「喉を慣らさないといけないから」と岩田さんはピアノの椅子に座り、おもむろに演奏をはじめる。普段の声からは想像もつかないほど、腹の底から伸びやかな声が響きわたる。

本番では、彼はシューベルトの曲にのせて歌うことが多かった。なるほど、彼は取材で「シューベルトは偉大」だと、熱く熱く語っていたからね。

コンサートを終え、わたしはその余韻に浸りつつ、焼き鳥屋でお酒を1杯呑んで家路を急いだ。

今夜はボイスレコーダーを通して、彼の歌声に聴き惚れる。

何度思い返しても、最高にいい夜だった。

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