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【恋愛小説】私のために綴る物語(51)

第九章 ブルートパーズの首輪(4)

 道哉からささやかれた晴久は、立ち上がると多香子の顔を見ていた。
「多香子、準備をするぞ」
「はい、わかりました」

 ついていくと奥の控室に、桜色の振り袖と薄い水色の帯が用意されていた。晴久は作務衣を着るようで、すでに着替え始めていた。多香子もチョーカーを外し、服から下着まですべて脱いだ。襦袢や代わりになるものはなく、そのまま振り袖を着ろと言うことなのかと思い、確認した。

「晴久さん、単はないんですか」
「そのまま素肌に着てくれ」
「わかりました」

 そう言って合わせをしっかり重ねて、帯をずらしながら胸元から腰骨まで巻けるだけ巻いてしっかり縛っていた。

「多香子、その着付けは何だ。もういい後ろを向け」

 多香子を後ろ向きにすると、合わせをくつろげさせ、大きく開かせた。帯をほどいて前で締めた。多香子の頬が赤らむのを見て、手を下の花びらに差し込んでいた。

「嫌、止めて。こんなところで」
「感じろ。感じて、僕だけを見ろ。ここには君と僕しかいない。いいな」

 あぁ、またこの熱に負けてしまう。そう思いながら頭を抱き寄せキスをした。晴久は抱き上げてステージに向かっていた。

 まず、床に座らせると足を縛っていた。一見するとその足に口付けをしそうな、その雰囲気に観客は息を呑んでいた。
 多香子は気品高い姫になっていた。その後腰骨の上と下をしっかり縛った。胸に行き乳房の上下を縛り上下を繋げ、手を後ろ手に縛り方を締めた。手を縛る時には苦しくないかしっかり確認していた。そうして正座をさせると、白い布で覆われた舞台と、桜色と赤い縄のグラディエーションと青い帯が差し色になって美しかった。

 酔いもあって、目をうるませて、晴久を見る多香子に見とれていた。メイクもあって、肌は一層白く、頬は薄く色づいていた。いつも武装しているかのような眉は存在しているだけのものだった。

 そんな多香子に触れて頬を撫でると、口づけをして、首筋から胸元へと舐めた。胸の谷間に顔を埋めて、胸の膨らみに手を当てて、尖っていた蕾を強くつまんだ。おもわず「うっ」と声を上げた多香子をにらんだ。そして腰の下の合わせから手を入れて、花芯に指をいれ、陰核をつまんでいた。
 次に割り竹を首に当て、顔を上げさせると、見つめ合った。多香子は覚悟を決めて、うなずいた。それが始まりの合図となった。

「誰が座っていいと言った。膝を立てろ」
 太ももから足の間、臍のあたりと割り竹でなで上げていくと、乳房の辺りを突いていた。胸の谷間でまた突くと体をのけぞらせた。
「これで感じるとはいやらしい身体だ。もっと感じさせてやろうか」
 思わず首を横に振ってしまった。
「それは嫌だということか。欲しいくせに嘘をつくな。こうしてやる」
 膝の裏を打ち据えていた。衝撃で、前に崩れ落ちた。すると縛られている手を引っ張られて、正座をさせられた。

 今度は尻から腰となで上げられた。そして尻と腰を打ち据えた。手を引っ張り肩甲骨のとこを差し込まれ、胸を晒す形にされた。胸は張りを強めて、蕾が圧迫されてそれだけで官能を呼び起こしていた。合わせから手を差し込まれると、もう身体は勝手に動き出していた。
 今度は肩から、背中、腰、尻と打ち据えられた。痛みとともに悦楽がもたらされ、体が震えていた。また顔を持ち上げられると、涙と汗でぐずぐずになっていたが、静かな表情でいることができた。頬が赤みを指して艶やかさを増していた。

 晴久は欲情している身体を感じていた。多香子の膝を立たせて、足の間に差し込んで、また膝裏を叩き、崩れ落ちるのを確認した。今度は腰を打ち据え、自分の熱が放たれたのを自覚した。気を失っている多香子を抱き上げて、裏へと戻っていった。

 そこで、観客の緊張も解けたようで、ため息が一斉に上がり、話し声が聞こえるようになっていた。

 自分の官能を呼び覚まされたM嬢達は感じたことを口にしていた。

 それを聞いた道哉は、満足そうに笑った。

 晴久は抱きしめたまま、多香子の意識が戻るのを待っていた。まずは縄を解いた。そして手ぬぐいを冷やし、額や首筋など、熱を持っていたところに当てて様子を見ていた。
 ううんと声がして、多香子が目を覚ますと、一層力を込めて抱きしめていた。
 そこに、道哉がアイスと冷たい飲み物を盛って様子を見に来た。

「これを多香子さんに」
「ありがとう。多香子どれがいい?」
「オレンジのシャーベット」
 多香子にシャーベット渡すと、道屋がおもむろに言った。
「俺は気がついたからな。輝晴は舞台で多香子さんにしっかり欲情して、達していた」
「だから何だ。彼女の様子を見て、欲情しない男なんていないだろう」
「それは同意しよう。みんな見とれていた。M嬢達なんて、ご主人さまにやってほしいとすごかったぞ。すぐに無理だって言ってやったけど」

 多香子は言い合っている二人を見て笑い転げていた。
 しかし、晴久の次の言葉に固まっていた。

「僕は多香子を自分だけのものにするんだ。他の誰にも」
「多香子さん、こいつを抱いてくれませんか。こんなところで悪いけど。誰も近づかせませんから。ステージで本当は、貴女を抱きたかったのを、我慢した。貴女はこいつのものだとハッキリさせてやって。ではこれで」

 道哉は控室を出て行って、二人きりになった。

「晴久は私をそこまで」
「いつも言ってるけど」
「あなたが怖い。その支配をしようとするところ」
「落ちれば何も考えなくて良くなる」
「私は誰のものでもないはず。首輪で絞められるのなんて考えたくもない」
「多香子、僕が嫌いになったのか」
「ごめんなさい」

 着替えの置いてある方に行こうとすると、腕を掴まれた。引き戻されないようにすると、合わせから手が入ってきた。

「君の身体に聞いてみたいな。こうされると我慢出来ないはずだ」
「止めて。本当に嫌いになる。あなたの腕の中で、いつも別の男を考えているって、気がついていた?」
「君は本当にずるいんだね」
「晴久のその自信って、虚勢かもって思うようになった。優しく包んでくれる人が強いはず。きっと」
「それって」
「もう終わりにしたい。自由になりたい。誰にも縛られたくない」

 呆然としていた晴久の脇を抜けて、着替えると、荷物を持ってフロアに戻った。不意に現れた多香子を見て、驚いていた道哉にとりあえずの金額を渡すと、店の外に出ていた。人通りに合わせて歩いてみようと思った。思うままに歩いて、タクシーを拾って帰ろう。

 もう誰かの女になるものか。史之からも自由になりたいと、全てが嫌になっていた。

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