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【ドラマ 1122 いいふうふ】    を語りたい

幸せはいつも形を変えていく君への思いかわらなくても/瑞野明青

【1122 いいふうふ】とは

 AmazonのPrime Videoで配信中の【1122 いいふうふ】がすごく興味深いです。原作は渡辺ペコさんの【1122】(モーニングコミックス)全7巻です。ドラマも7話で、大体原作通りに進んでいきます。
 ドラマではセクシュアルな場面も多くありますが、インティマシーコーディネーターさんも参加されていて、丁寧に制作されている印象を持ちました。

 主人公の一子いちこ二也おとや美月みつき志朗しろうの二組の夫婦を軸にれいと言った人物が絡んで話が進められます。
 二也と美月は恋愛中、つまり不倫。しかし二也は妻の一子の公認です。二也が一子にセックスの誘いをかけた時、一子の拒絶がひどくて心が折れた時に出会った美月と恋に落ちてしまいます。そして一子と二也はセックスレスに。
 美月と志朗には子供がいますが、発育に問題があるところ専業主婦の美月がワンオペで育児に翻弄されています。志朗はエリートで仕事が忙しいのを言い訳に逃げているのでした。

 W不倫や妻公認不倫、一子の風俗利用、セックスレスといったキーワードが並べられ、選択をしていきます。夫婦のあり方、子どもの存在は、家族って何?と語り合いながら登場人物が考えていくのです。
 キャストも絶妙で、強くて脆さもある一子を高畑充希さん、優しいからこそクズな二也を岡田将生さん、弱いけどしたたかな美月を西野七瀬さん、強く見せかけて実は不安だらけな志朗を⾼良健吾さんがとても繊細に演じています。他にも一子の友人で不倫がバレた五代を成田凌さん、一子の女友達や一子と二也の家族も隙のないキャストで、原作のイメージをそのまま表現してくれています。女性用風俗店員の礼を演じる吉野北⼈さんのきらきら美青年ぶりも素敵です。
 もう優しさダダ漏れだから掴みどころもない二也を演じる岡田さんなんて、黙っちゃった時の不穏さはもう二也にしか見えませんでした。

私達はいい夫婦だと思う

 35歳子供がいない、夫二也とはセックスレスであることを除けば、気の合う友達夫婦。そんな自分たちを結構いい夫婦だと思うと一子は言えてしまうのです。でも二也の家庭外恋愛を、自分の拒否が原因だからと割り切ろうとしているところがあります。それが一子の性欲が凪いでいたときは良かったのかもしれません。一子が二也を求めてしまった時、好きな人がいるとはっきり拒絶されて、心の矛盾に追い詰められてしまうのかもしれません。
 二也の方も美月との不倫に恋をしていながら、一子の洗濯物にあったレーシーなブラジャーが気になり、一子の家庭外恋愛の公認の行使を考えてしまいます。そして、美月の事情が変わり別れる可能性に直面した時に、それを寂しいと思わない自分と直面します。

品行方正ではない歪んで矛盾した夫婦関係

 一子と二也は一子の風俗利用と、二也が美月と別れる時に受けた傷が元になったEDという問題も抱え込んでしまいます。一方の美月は妊娠が発覚し、父親は志朗だときっぱり告げたところから、再構築へ向かおうとします。この経緯で、志朗が真剣に家族のことを考えていること、不安がそれを邪魔したことを告げ、美月と変わっていくことを約束します。たぶん、矛盾と危うさを抱えた登場人物ばかりの中、一番真っ当に関わろうとしていたのは志朗じゃないのかなと思います。
 一子は風俗を利用して、確かに救われたのかもしれません。ただ、アンモラルなことだと、非難されるリスクも引き受けることになります。恋愛関係を選択できないため、割り切った関係を選んだのは悪いことなのでしょうか。多分二也は一子が若い男性と恋愛しても拒否しそうなのですが。
 実は一子に、ここも私は共感できてしまいました。一子はどこかで新しい関係を作ることを、面倒だという言葉で切り捨てているのかもしれません。

名前のない関係へ

 一子と二也は次に進むため、妊活をすることにしました。二人の足並みが揃わなくなった時、一子は選択をします。二也はその選択を尊重することにしました。

 一子と二也のお友達夫婦、価値観の似た二人の俺とお前の境目のない状態というのは、自分にも当てはまりとても刺さるものでした。大切でかけがえのない関係だからこそ、息が詰まる感じよくわかるんです。夫と妻しかない関係で逃げ場もないし。生活で頼っている分のどこか負い目もある感じも。
 もう一つ自分の母親と関係をうまく作れていないところも、一子を見ていて辛いところでした。私の場合は特に選択をしなくてはいけないこともなく、流れるまま夫と妻で生きています。それはふたりとも、他に誰かと関係を作ることもできない似た者同士だったからかもしれません。

 一子は母親の死とも向き合い、最後の決断をします。
それは新しい自分たちらしい関係を二也と作ることになります。
家族にもいろいろな形があるし、自分たちに心地よい関係を作ることができれば一番ステキなことだと思うのです。一子と二也の自分に気持ちの良い生活をおくっているのが一番共感できました。それはどこかで、自分の選択できなかった生活でもあり、羨ましくなっていました。

クチナシの花束

 最終的には一子との関係を諦めない二也のしぶとさが印象的でした。一子になじられたとはいえ、ニッコリと白いシャクナゲを出していた頃と変わらないものに見えました。
 このドラマでは、二也の生け花にちなんでいろいろな花言葉がでてきました。最後のクチナシの花束はすごい反則でしょう。私ももちろん調べました。


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