【小説】奔波の先に ~聞多と俊輔~#36
8 内訌(2) 仲間たちとの意見交換や会議の後の片づけに報告文書の作成など、いろいろ雑用も含めて終わらせて帰ろうとするとかなり遅くなっていた。
もう夜も更けつつあるころ、聞多は従者の淺吉とともに藩庁を出た。湯田に近づいてきたところで、暗闇の中不意に声をかけられた。
「聞多さんですか」
どこか聞いたことがある声だなと思った聞多は「そうじゃ」と答えた。すると、後ろから両足首をつかまれ引き倒された。同時に背中を切りつけられた。少し前を歩いていた淺吉の提灯を切るものもあって、