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村上春樹_約束された場所で

何が正しくて、何が悪いのか。何が真実で、どこまでが嘘なのか。
そんなことがしっかりと説明できる世界なんてないんだ。

ある意味では全てが正しくて、ある意味では全くもって間違っている。
何を信じるのか、その違いだけなんだと思い知らされた。

村上春樹の小説が素晴らしいのは、文才があるだけではなく、世の中をどう捉え、それをどう書きあらわすかにどこまでも誠実だからなのだと思う。

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小説家としての経験から、計数化できるファクトというものがほんとうに正確なものなのかという疑念は、僕の中に根深くあります。

たとえば寂しい人気のない夜道で棒を持った変な男とすれ違うとします。実際には162センチくらいの痩せた貧相な男で、持っている棒もすりこぎくらいのものだったとします。それがファクトです。

でもすれ違った時の実感からすると。相手は180センチくらいの大男に見えたんじゃないかと僕は思うんです。手に持っていたのも金属バットみたいに見えたかもしれない。だから心臓がどきどきする。

それでどっちが真実かというと、あとのほうなんじゃないかと思うんです。本当は両方の真実を並列しなくちゃならないんでしょうが、どちらかひとつしか取れないとなったら、僕はあくまでも断りつきですが、ファクトよりは事実を取りたいですね。

世界というのはそれぞれの目に映ったもののことではないかと。そういうものをたくさん集めて、総合していくことによって見えてくる事実もあるのではないかと。


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