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ハマらぬ沼の畔から

駆け出しのライターとして出会ったメンバーたちが、毎回特定のテーマに沿って好きなように書いていく「日刊かきあつめ」です。

今回のテーマは「#ハマった沼を語らせて」です。

平日夜、新大久保の安い韓国料理屋でアラフィフの友人と飲んだ。友人は仕事を休んで推しの映画を観に行ってきたのだとか。聞くともう今回で3回目らしい。
彼女は、40を過ぎてから男性アイドルをおっかけ始めた。アイドルなんだろうけど、私にとっては、見たことも聞いたこともないグループだった。推しについてキャッキャと語ってくれたのだが、どうも頭に入らない。この類の人間は学生時代からジャニーズを追っかけていたり、サッカー部の先輩を追いかけていたり、明らかなミーハーちゃんなのかと勝手に思っていたが、普段彼女は硬派だ。10年来の友人だが、いつもどっしり構えていて何事も冷静に判断する理知的な人だ。独身だし特に浮いた話もほとんどなく冷めている感じ。勝手に親近感さえ覚えていたのだが、それが息子ほどの若者にお熱を上げている。これが沼る、てやつか。一体どういう気分なのだろう。
彼女の携帯には大きなゆるキャラっぽいキャラクターのへんてこなシールが貼られていた。服装も髪型もシンプル、ほぼノーメイクの彼女。身の回りの小物に何かを施すのは珍しい。気になって聞いてみると同じ推しのファンが趣味で描いているキャラクターなのだとそれはそれは生き生きと話してくれた。そのファンは、推しの似顔絵を描いてSNSにあげたりなどしており、ファンの中では有名人のようだ。
「このシールも欲しいのぉ」
ブックマークしている画面を見せてもらった。
のっぺりとした仕上がりのキャラクターは、推しがモデルなのだという。
今度はどこに貼るつもりなんだろう。全くわからない世界…
私は思ってる事が露骨に顔に出るタイプなのだが、私の戸惑いは全くお構いなし。
更年期でありながら、思春期の少女のようなキラキラとした高揚を私は一向にハマらぬ沼の畔からじっと眺めていた。

文:べみん
編集:アカ ヨシロウ


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