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【観劇レビュー】Beautiful(11/07 e+貸切公演 キャロル役:平原綾香)

ひとりの女性の物語を、歌で紡ぐ。奇跡の様な作曲家デビュー、若すぎる結婚、そして子を儲け、苦難をいくつも乗り越えた彼女が大きな舞台に立ったのは29歳。これは実在する女性のお話だ。それをたった3時間で巡っていくのがこの作品。多少脚色はあるのかもしれないけど、これはもはやドキュメンタリーだ。

【あらすじ】
ニューヨークに住む16歳のキャロル・キング(水樹奈々/平原綾香)は、教師になるように勧める母親のジニー・クライン(剣 幸)を振り切って、名プロデューサーのドニー・カーシュナー(武田真治)に曲を売り込み、作曲家への一歩を踏み出す。やがて同じカレッジに通うジェリー・ゴフィン(伊礼彼方)と出会い、恋に落ちた二人はパートナーを組み、キャロルが作曲、ジェリーが作詞を担当するようになる。ほどなくしてキャロルは妊娠、結婚した二人は必死で仕事と子育てに奮闘する。同じ頃二人は、ドニーがプロデュースする新進作曲家と作詞家のコンビ、バリー・マン(中川晃教)とシンシア・ワイル(ソニン)と良き友人となり、互いにしのぎを削り、ヒットチャートの首位を争うようになる。数々のヒットを放ち、全てが順調に進んでいるかのように思われたが、そこには新たな困難が待ち受けていた――。

たった10年でここまで凝縮された人生を歩めるものだろうか、と考えてしまう。上記のリンク先に記載されているキャロル・キングご本人のhistoryがどう見ても凄絶。よくぞ旦那と破綻した時に潰れないでいてくれたものだ…と同じ女性として尊敬する。頑張りすぎやで、と言う気持ちもある。


さて、実際の舞台としては、キャロル・キング達またはシンシア・ワイル達が作った曲が所々で流れ、舞台作品でありながら度々コンサートタイムになると言う面白い演出だった。「あれ、この曲知ってる…?」って思ったらまさかの人が歌っていたり。て言うかこれもあなたの曲だったんですかー!?って言うのが何曲かあった。ひとつ新しく歴史を学びました…。

ラストシーンは一瞬自分(観客)の立ち位置がわからなくなる。まだ公演期間が始まったばかりなので詳細は控えさせて頂くが、噛み砕きまくって言うと、あの瞬間だけは「キャロル・キングが私達の目の前に現れた」と言う表現になるだろうか。没入体験系がお好きな方には心躍る演出だと思う。


この舞台作品は主演がWキャストだ。水樹奈々さんと平原綾香さんのお二人。二人とも圧倒的な美声の持ち主達であることはご存知の通りだろう。今回見たのは平原綾香さんがキャロル・キング役を演じられている回だった。

話し声が割とお可愛らしいのに、歌になった瞬間に「一体どこからそんな声が…」と言いたくなるくらいパワフルな美声。彼女(平原綾香)の歌声で語られる彼女(キャロル)の人生。ラストシーンで舞台上に現れた時は、「それまでの彼女の人生」を思って、そして「これから起こること」を考えて、歌が始まる前から涙が止まらなかった。そのくらい、世界に没頭させてくれる素晴らしい歌声だった。


ここで敢えて白状すると、本当は水樹奈々さんの回を観に行きたいな〜と思っていたのだが、日程が合わずやむなく…だった。しかし、私だって平原さんの歌声を知らないわけじゃない。彼女の歌う「Jupyter」は誰もが脳内再生できるんじゃないか?ってくらい有名だ。最初の歌が始まって数秒で「あっ、やっぱりこの人すごい…」と引き込まれ、次のシーンに移った時にはもう『演者が誰なのか』なんて『どうでも良いこと』になっていた。魅力ある演者は、演者が誰であるかではなく、役(キャラクター)として魅せてくれる。そして終わった時には、私にとってのキャロルは平原さんになっていたし、そして「観にきて良かった!」と心の底から思う程に感動していた。
平原さん、「やむなく」とかめちゃめちゃ失礼なことを言ってごめんなさい。心が躍る様な素敵な時間をありがとうございます。リピートするならもう一度貴方のキャロルが見たい。貴方のその歌声で、ラストシーンを歌ってほしい。そう願うほどに最高の時間でした。思わずTwitterフォローした。いつか平原さんのコンサートも行ってみたいですな…浴びるほど聴きたい歌声…。


私にとっては偶然に偶然が重なって観る事になったこの作品。私にはこんな波乱万丈な人生は送れないし、今までも送ってこなかった。キャロルの人生は到底真似できそうにはない人生だ。でも弱さも強さも兼ね備えて、芯は強くあり続けるのは真似できるかもしれない。「誰かの人生」じゃなくて「私の人生」を生きること。それは、私にも出来るかもしれない。いや、きっとそれしか出来ないだろう。

この先一生、華やかな出来事はないかもしれないけど、それでも、私の人生はこうだった、と胸を張れる様に生きていきたい。ミュージカルにはならなくても、人生と言う舞台の主役は、いつだって自分だもんね。

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