『魔女と金魚』のはなし。|はじまり
それらを真のものにするには、まことの心と、まことの祈り 心して願いその力をまっすぐに信じること (魔女と金魚 p.11)
何から話せばいいかな。
■本との関係
子供の頃ファーブル昆虫記を読み込んだ母と、トイレにまで小説を持ち込む活字中毒の父。そんな両親に育てられたから、本はいつもそばにあった。
ドキドキしながら貸出カードに名前を書いてもらっていた小学校の図書室。友達と恋バナする時間を惜しみつつ1人抜け出した、いつもどこかひんやりとしていた中学校の図書室。地元の公民館の小さな図書スペースも、私の本棚のひとつだった。
田んぼの間から伸びる国道から1時間、スクールバスに揺られ街の高校に通うようになって。入学して時間が経っても名前がわからない人だらけの廊下に、先輩のスカートの短さに、180cm以上あるガタイのいい男子に、カルチャーショックを受けて。心がしぼんでいたときに出会ったんじゃないかな。
■海の街の本屋にて
毎週末、山を一つ越えた隣街まで母の運転する軽自動車で買い出しに行っていた。山を下ると気温が上がる、海があってどこか南国の雰囲気が漂う隣街。スーパーと同じ敷地内には大手の本屋が併設している。母がスーパーをぐるぐるする間、私は本屋をぐるぐるしていた。
題名に惹かれて手に取って、表紙を見て買うことを決めた。金魚鉢の中から遠くを見上げる女の子と、その周りを自由に泳ぐ金魚たち。素敵な絵と、帯には大きくこう書かれていた。
自分を持て余しながら不器用に生きている、すべての女子へ。
その時はよくわからなかったけれど。
今振り返ると、そうだったんだと思う。だから惹かれた。
私は10代のその時、自分を持て余しながら不器用に生きていた。ううん、今もそうなんじゃないかな。
あぁ、自分は自分を持て余しているんだと、自分は不器用なんだと。そう自分に言い聞かせると、今のこの状況をなんだか少し許してもらえる気がする。誰にかな。自分にかな。
とにかく私は『魔女と金魚』に出会えた。海の街の本屋にて。
【つづく‼︎☞】
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『魔女と金魚』の世界にもう一度連れて行ってくれた、あなたに贈ります。
春瀬 蒼
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