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わらび餅は確かに"たぷたぷ"だった今日のはなし。

今日も、じめっとした梅雨空だ。まだ6月とは言え、20分歩けば汗をかく。

「おはよーございまーす」と、なけなしのやる気を奮い立たせ、むりやりトーンを上げて挨拶。朝の挨拶は元気よく。せめて。スタッフ用冷蔵庫の前にいる先輩と目が合った。

「わらび餅入れてあるから、食べてね」

まだ覚醒しきらず、半開きだった目が大きくなったのが自分でもわかった。

全力でお礼を言いながら、金曜日のことを思い出していた。

週の終わり、終業前の数分、気力・体力ともに限界が近づき、楽しい話でもしていなければ、今にも寝てしまいそうだ。

最近の楽しみをバディの先輩と言い合うことで、なんとか意識を保っていた。

「私はね、土曜日にわらび餅食べるんだ」

先輩は最近お気に入りの和菓子屋がある。そこのわらび餅を先輩は、"たぷたぷ"と表現する。甘いもの大好きな私は、話上手な先輩の、美味しいお菓子のはなしを聞いているのが好きだった。

「いいですね〜最高ですね〜」とかなんとか。相槌を打ちながら先輩のお菓子講話を聞いているうちに時間になった。

そんな先週の金曜日。

わらび餅をモチベーションに今日の業務を終えた。冷蔵庫に納めてあったわらび餅のパックを両手でそっと持って、帰り支度。にやにやしていた自覚がある。

「わらび餅を食べるのを楽しみに、今日1日頑張れました。」私がそう言うと、『そんなに喜んでもらえると嬉しいよ。』と先輩が少し照れくさそうに言った。

傾けないように慎重に持って帰った。

たっぷりのきな粉に覆い尽くされたわらび餅。先輩が表現したとおり、”たぷたぷ"だった。私史上、1番美味しいわらび餅であったことは言うまでもない。

明日、先輩に伝えよう。最高の"たぷたぷ"に出会えて私は幸せでした、と。

人を幸せにする力は、歳をとっても変わらない

出典は忘れてしまったが、好きな言葉として胸に刻んでいる。

私は自分のことばっかり考えていないだろうか。オトナと呼ばれる年齢になって数年。先輩みたいに、さも当然のように、近くにいる人を幸せにできる。そんなすてきな大人になりたい。


お付き合いくださったあなた。

ありがとうございました。


春瀬 蒼

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