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友達のはなし。|今日は大切な日。

何回も見てきたくせに。「字が綺麗だね。」って、褒めてくれた。「この日の為に習字習っといてよかったわ。」そう言って2人で笑った今日を、私は忘れない。

雨がばしゃばしゃ降っている。土砂降りの土曜日は私にとっての鬼門だった。それが今日、彼女によって、変わった気がする。

彼女は明日、結婚する。

彼女のこと

初めましての日は定かでない。保育園に入る前、地元の公民館で開催されていた親子教室。畳の部屋で一緒に遊んでいたはずだ。写真はあるが記憶はない。

小さな田舎で、保育園から中学生まで一緒に過ごせば、その当時は確実に親よりも長く一緒にいたことになる。

厳密に言えば小学校は別々だったが、1年生から習字、英語の塾に一緒に通い、塾が始まるまでの間は彼女の家で遊んでいたのだから、週に1回は必ず会えた。

中学ではバレー部で一緒だった。彼女は中学時代、2回も学校から救急車で運ばれた。どちらも怪我が原因だったけど、2回目の時は、彼女が死んでしまうのではないかと家に帰って泣いたのを覚えている。今の彼女はすこぶる健康。

どうしたって繋がらない縁はあるけれど、繋ごうと思えばどれだけ時間が空いても繋がる縁はあると思う。

別々の高校に進んだ。3年間1度も連絡を取らなかった。喧嘩したわけではない。

大学生になり、彼女の進学先は県外だと母親情報網で知る。連絡をくれたのは彼女だった。それから今に至るまで、たくさん飲んで、たくさん旅行に行って。

彼女が繋げようとしてくれた縁は、今もこうして繋がれたままでいる。

今日のこと

昨日の夜、久しぶりに彼女からLINEが来た。「婚姻届の証人になってくれない?」入籍する予定は聞いていたから、それ関係かとは思ったけど。嬉しくてうれしくて、自分で引くくらい嬉しくて、気づいたら泣いていた。

今日、朝起きたら天気予報通り、土砂降りだった。土砂降りの土曜日は気分が重い。じいちゃんが空に旅立った日を思い出すから。

重たい気持ちをぶら下げたまま、部屋の片付けを始めた。

10:30 彼女がうちに到着した。最近お気に入りの桜の葉が入っている緑茶を入れた。ほんのり桜餅の香り。

花粉症の話とか、仕事の話とか最近の話を一通りして、婚姻届を書いた。ウェディングドレスの女の子の絵をプレゼントすると、「おばあちゃんになっても飾っとく」って言ってくれた。彼女からは1ヶ月遅れの誕生日プレゼントを貰った。

おわりに

マイペースで女の子らしくて、ゆったりしてて。私とは正反対。好きなタイプも全く違うけれど。

彼といる彼女は、いつも以上に穏やかな空気を纏っていて、こっちが恥ずかしくなるくらい幸せそうだ。

2年前、彼氏と別れたと泣きながら電話してきて、1週間うちに泊めた。同じソファーの前で、あの日は泣いていた彼女が、心の底から嬉しそうに笑う姿が見られて、私は今とても幸せな気分だ。

昨日は1週間の仕事を終えて、家まであと数100メートルのところで、消えてしまいたいと思った。きっと疲れ果てて、お腹も空いていたからだ。

バースデープレゼントに添えられた彼女からの手紙には、

来年のお誕生日もお祝いさせてください♡

と書いてある。

消えなくてよかった。

私の気持ちは天気みたいにころころ変わる。雨の日も晴れの日も噛み締めて、彼女と同じ時間をまた生きていきたいと思う。

今日は大切な日。

***

長いのに、最後まで読んでくれたあなた。

ありがとうございました。

春瀬 蒼

最後まで読んでくれたあなた。 ありがとうございました。またいつか🍄