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"真"の多職種連携こそがイノベーションを引き起こす鍵

新型コロナウイルスの影響で、経済活動が停滞し、職を失う方々もいらっしゃる中、おかげさまで、例年以上に忙しい毎日を過ごさせていただき、クライアント、関係機関の皆様には感謝申し上げるばかりです。

今年度の東京都福祉サービス第三者評価も本格化し、連日、訪問調査や利用者調査(聞き取り調査)で施設・事業所に訪問しております。
訪問すると手洗い、うがい、検温、手指消毒が徹底され、施設内に持ち込まない対策が講じられています。
家族の面会もZoomを用いたウェブ面会や窓越し面会となり、不自由さが続いています。
厚労省から緩和していく方向で通知が出されましたが、インフルエンザが流行る季節になって来たため、感染症が落ち着く頃まで、ウェブ面会を継続するところも少なくないのではないでしょうか。

多職種連携 機能しています?

先日、訪問した施設では、多職種連携が機能していないことが課題になっている、という声が職員から多数あがっていました。
皆さんの施設・事業所では、介護職や看護職、機能訓練指導員(PT、OT、柔道整復師など)、管理栄養士、生活相談員、ケアマネジャーなどの多職種が連携して利用者のケアや支援に、日々、臨んでいらっしゃると思います。
しかしながら、皆さんの職場では多職種連携が機能して、業務を遂行できているでしょうか?

医療や福祉現場ではいわゆる"チームケア"として、多職種が連携してケアにあたることが当たり前のように言われていますが、実際のところ機能しているのでしょうか?
いろいろ話を聞くと、個人的な印象ですが、多職種連携はかなり二極化しているように感じます。

福祉現場では、人数的に大半を占める介護職員 VS 少数の看護職・機能訓練・管理栄養士といった構造になりがちですが、「(介護職からみて)他職種は自分たちの意見をわかってくれない」的な声がよくあがります。
逆説的にいえば、なぜ介護職員の意見を他職種がわかってくれないのでしょうか?
それは介護職に原因があるのでしょうか、それとも他職種に原因があるのでしょうか?

どちらが良い、悪いではなく、互いの専門性や考え方をすり合わせ、どこかで折り合いをつけなければ、"真"の意味で多職種連携が機能することはないでしょう。

価値観を認め合うことがスタートライン

多職種連携を民間企業に置き換えれば、営業する人(営業部)、新商品や新規事業を企画する人(企画部)、魅力を発信するために広報する人(広報部)、経理・事務をする人(経理部、総務)、人材採用・育成する人(人事部)といったように、それぞれの組織の中の部署ごとの役割や機能によって業務内容や責任の範囲、目標も変わってきます。
民間企業も意外に縦割りのセクショナリズムが強いため、営業部と経理部・総務部がバトルするといった部署間の利害関係が働くことがあるそうです。

福祉現場における多職種連携は、組織の中の役割や機能の違いといった側面もありますが、根本的に違うのは、同じ利用者に対するケアや支援に対して、"気になる視点が異なる"ということです。

"気になる視点が異なる"代表的な例え話として、「利用者が好物のお餅を食べたいと言っている。介護職員は食べさせても良い発言したところ、看護職は食べさせてはいけないと反論された」というのがあります。
なぜ介護職と看護職で解釈が異なるのでしょうか?
そこには介護職が大事にしている視点と、看護職が大事にしている視点が異なるからです。

上記の例え話で言えば、介護職はその人の生活を支えているわけで好物のお餅を食べられるようにいろいろな工夫をして、叶えてあげたいと考えている。
しかし、看護職は利用者の嚥下や咀嚼機能からお餅を食べさせることで喉に詰まらせてしまうかもしれないと考え、反対するかもしれません。
そこで介護職と看護職で意見が食い違い、「(介護職からみて)看護職はわかってくれない」「(看護職からみて)介護職はなぜそんな危険性の高いことを平気で提案するのだろう?」と不思議に思っているかもしれません。
互いに"気になる視点が異なる"ため、互いの専門性が衝突し、不調を引き起こす代表的な例え話といえます。

介護職を目指した方、看護職を目指した方、機能訓練指導員(PT、OT、柔道整復師など)を目指した方、管理栄養士を目指した方、それぞれに目指すきっかけや目的意思をお持ちだと思います。
だからこそ、その専門性に則った"気になる視点が異なる"ことは当たり前であり、"チームケア"はその"気になる視点が異なる"ことによる相乗効果(シナジー効果)を発揮するからこそ、1+1=2以上の成果を生み出すのです。
ある意味、皆が同じ視点で利用者のケアや支援を見立てているのであれば、重複する視点はある意味無駄であり、多職種連携による相乗効果(シナジー効果)が機能していないといえます。
特に福祉分野において、それぞれの"気になる視点が異なる"ことが利用者の生活や命を守ることに直接つながっています。
だからこそ、"気になる視点が異なる"ことを互いに認め合うことを重ねていくこと(目線合わせ)が非常に重要です。

「知の探索」までいかなくても、「知の深化」の一つの枝葉として、他職種の"気になる視点が異なる"ことを共有することは必要でしょう。

多様性(ダイバシティー)を認め合うきっかけづくりを

皆さんの職場では福祉観や価値観を共有する機会はあるでしょうか。
抽象的なことを共有することはなかなか難しいですが、LSP®︎では、LEGO®︎ブロックを用いて、多様性を可視化・言語化することができます。

例えば、赤と緑のブロックが1つずつあるとします。
あなたがイメージする「命」は、赤いブロックに近いですか、それとも緑のブロックに近いです?
「命」のイメージも人それぞれなので、血や肉のイメージが強い方は赤いブロックを選ぶかもしれません。
自然(植物)のイメージが強い方は緑のブロックを選ぶかもしれません。
同じ「命」のイメージも多様性があるのです。

福祉業界は専門性が高い人材の集合体です。
だからこそ、皆が赤いブロック、皆が緑のブロックを選ぶことはないでしょう("気になる視点が異なる"が故、選んだとしても理由は人それぞれです)。
その時、「なぜ赤いブロックを選ばないのか?」と問い詰めるのではなく、「赤いブロックを選んだ理由を教えてもらえませんか?」と質問することで、その多様性を認め合うきっかけになるでしょう。
批判し合うのではなく、分かり合いたいという姿勢を示し合うことが、多職種連携を組織的に機能させることにつながります。

多職種連携が機能している組織の特色として、看護職や機能訓練指導員(PT、OT、柔道整復師など)、管理栄養士が介護職の業務にも関わりながら、考え方に寄り添っている施設・事業所はうまく機能しているように感じます(看護職が食事介助を行っている、機能訓練指導員がラウンドし、介助方法のアドバイスをその都度行っているなど)。
職員の大多数を占める介護職を引き立てる脇役が看護職や機能訓練指導員(PT、OT、柔道整復師など)、管理栄養士という構図になっています。

そうではなく、"気になる視点が異なる"ことを認め合うことで生じる相乗効果(シナジー効果)から、1+1=2以上になる新たなイノベーションが生まれる可能性が高まります。
それは"気になる視点が異なる"からこそ、部分最適ではなく、全体最適で物事を捉えることができる組織となるからです。
多職種連携による多様性(ダイバシティー)を認め合う組織を作っていくことが、福祉業界においても、ますます重要度を増しています。
"真"の多職種連携によるイノベーションを引き起こしましょう!

管理人


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