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『一縷の光』


人のために怒れる人間。

こういった人種は決して多いとは言えない。

実際に、私の今までの人生の中で

人のために怒られた人間に

出会ったことがあっただろうか。

記憶の限りでは、そういった人間の姿を

私は実際に見たことがなかった。

しかし、ここ最近

人のために怒れる人間を知った。

言うまでも無く、

ここで出す話題なのだかや

それは彼女である。

心のある人間であると

勿論、知ってはいたが

私のために、怒りを振る姿を見たときは

正直なところ内心驚いた。

そして同時にとても嬉しく、

暖かさを感じた。

日が経っていくうちに、

彼女が抱く私への想いが

最初の頃から思い返してみると

大きくなっている事は

私自身認めざるを得ない。

(自惚れるなよと、私に言ってやりたい)

(しかしとても嬉しく思う)


あの夏に、私が窓越しに彼女を見つけ

一目惚れたあの日から

私の願いは一つ、

彼女の近くにいたい。

近くにいれる今、思うのは

与えられるものは

全て与えたいということ。

物質的なものでも

形がないものでも

それがたとえ命でも、たとえ魂でも。

どこまでも、求めてくれたらいいのにと。

私は思った。


そしてある日、空を見上げると

川辺に敷き詰められた

石のような形をした雲があった。

近くには、

綱渡りでもしたくなるような電線が立っていた。

もし仮に、その電線で綱渡りをして

下に落ちてしまったとしても

下が雲のように柔らかければ

優しく支えて、受け止めてくれそうだね。

その写真と共に、彼女にそう伝えた。

返事はこうだ。

『どうか、わたしをうけとめて

         かぎりない、やさしさで』

稚拙な表現をするならば

その時の私には、電撃が走った。

彼女はおそらく、この返答に

深い意味を持たせたわけでは無かっただろう。

しかし、私はとても嬉しか思った。

もしあなたが、どこかへ落ちていくとして

その先が、

例えば雲の上でも

暗闇の底だとしても

先回りにして必ず受け止める。

彼女の望みどおり、限りないやさしさで。

求めてくれるならば、必ず応えよう。



追記

彼女は、風だ。

では私は何か

風に揺らさせる木にでもなろうか。

ゆらゆらとゆれる木の

優しさ、温かさ

それが優しく、温かくいられるのは

そのように感じるのは

他でもない

風が優しく、温かく

木に干渉するからだ。


優しく、温かくいるために

私はここに、根を張ろうと思う。

ここに来たくなったら

いつでも立ち寄るといい。

ずっとここにいてくれたら

私は何よりも嬉しい。

しかし、あなたは風だ

どこに行こうと自由なんだ。

その中で、私を選んでくれるなら

あなたがまた、ここに寄ってくれる事を

何百年でもここで待つことだってできる。


















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